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一人で闘わせない 〜パートナーが「がん」になった時、男性のあなたにできること〜

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元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんが乳がんを告白しました。
いまや日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡するといわれています。
がんの多くは高齢になるほど発症リスクが高まります。ただ、乳がん、子宮がんといった女性特有のがんは若年化が進んでおり、20代から徐々に増加しはじめ、40代後半から50代前半にピークを迎えるといわれています。北斗さんも48歳という若さでの罹患に驚く声もあがる一方、データで見ると決して早いというわけではなく、比較的若い世代で多くなっているがんなのです。

20代から4、50代に女性特有のがんの発症率が高いということは、働き盛り、子供達もまだ手がかかる、ローンなどの返済や教育費にもまだまだお金がかかる、そんな時期に重なります。つまり、突然の発症によって、一旦、キャリアや家庭内のことを含め、様々なことを見直す必要が出てくるということです。

もしあなたのパートナーががんになってしまったらー。
男性のあなたにできることはあるのでしょうか。
ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長で、がん患者と支える人たちのための相談支援センターであるmaggie's tokyo共同代表の秋山正子さんに伺いました。

1)相談先を見つける

これまで、多くの患者さんとその家族を見てきた秋山さん。その中で、自分の妻やパートナーががんになった時、励ます言葉さえ見つけられず、動揺とショックで黙り込み、そばでただ立ち尽くすだけの男性が少なくなかったといいます。しかし、それも当然のこと。家族は「第二の患者」といわれています。罹患した当人は勿論ですが、家族もまた、自分自身でその宣告を受け止めきれず、困惑し、悩みや苦痛を抱えてしまうのです。特に男性の場合、その思いを上手く外に出せずに苦しんでいるケースが多いようです。
「まずは相談先を見つけて下さい」、秋山さんはいいます。
勿論、家族や友人などを相談相手にするのもよいのですが、専門家に聞くことでストレスなく、しかも効率的にアドバイスを受けることができます。
例えば、近くの「がん相談支援センター」なら、病気に関する不安や悩みに応えてくれるだけでなく、家族への支援相談や心のケア、また、住まいの市区町村で行っている助成制度に関する情報など経済的なことに関しても、どなたでも無料で専門の相談員に質問できます。

2)経済基盤を確保する

また、秋山さんがパートナーである男性にアドバイスするのは、早まってすぐに会社を辞めたりしないということです。
公的な助成や支援制度もあるとはいえ、治療や通院、療養には経済的な負担がかかってくるのも事実です。ですので、まずはお金の負担によって心配事を増やさないようにする。つまり、できるだけこれまで通りの生活を続けるようにと勧めています。
そして、それは患者本人にも同じことがいえます。
秋山さんによると、本人は仕事を続けながら治療したいと思っていても、体良く肩たたきされてしまうという相談も少なくないそうです。それは、病気に対する職場の理解が進んでいないがゆえ起きてしまうことである上に、本人も弱い立場としてつい相手の要求を飲んでしまう。だからこそ、消極的に離職を余儀なくされてしまう。
パートナーとして自身の経済的基盤を確保することも重要ですが、本人の希望や生きがい、やりがいのためにも、離職などの決断を急ぐことなく、じっくり考えてもいいのだと踏みとどまらせてあげることも大切です。

3)情報を共有し、共に闘う

秋山さんがパートナーにとって、大変大切なこととして挙げるひとつに「家族も患者と同じ情報量を持つ」ということがあります。
ただ、いまや雑誌や新聞などのメディアをはじめ、インターネットにはがんに関する情報が溢れかえってきます。そんな時は、共に闘うチームとして、情報を調べやすい立場にいるパートナーのあなたが率先して信頼できる情報に当たり、収集していく。それには、先に書いたような相談支援センターを使うのも手でしょう。「がん情報サービス」というサイトでは、がんに関するガイドも無料でダウンロードできます。そして、正確な情報を得たら、それをきちんと本人と共有していく。そういう作業を経て、チームとして理解を深めた上で医師や専門家に質問や相談をしたり、治療方針を決めたりしていくことが肝要です。

4)きちんと言葉に落としてコミュニケーションをとる

冒頭の北斗さんはブログの中で、
「家族の支えや優しさが、どれだけ癌患者の励ましになるか。
ただ近くに居てくれればいいんです。
不安で不安で怖くて眠れない時も、誰かがそばに居てくれるだけで、気持ちが救われます。」
と書いています。

確かに病気になり、不安に襲われ、心細くなった時には、誰かがそばにいてくれることが癒しとなり、多少なりとも気が休まったりするものです。
「ただ、そばにいてくれればいいー」。
大変美しい言葉ですが、事実はそう簡単ではありません。
実際に、がんになった女性たちからは、パートナーの反応がない、何を考えているかわからない、気持ちをわかってくれようとしないなどの悩みの声もよく聞かれるそうです。元々、「あうんの呼吸」で互いを察しあうという日本独特のコミュニケーションがありますが、普段とは違う状態である時こそ、正確に思いを表現していく、表現してもらうことを心がけていかないと絶対に伝わりません。
「普段から他愛ない話ができる関係かどうかが重要」と秋山さんはいいます。いつもお子さんのお母さんとしてしか接していない、何も言わなくても理解してくれているだろうと思い込んでいると、いざという時、うまく声や心をかけてあげられないことが多いそうです。
また、「語る」ということは、自身の中で事実を消化していくための重要な作業にもつながるといいます。
だから、丁寧に思いを言葉にしていく。
二人だけで話すのが難しいならば、第三者を入れてみてもいいかもしれません。

5)心を寄り添わせる

不安を感じているパートナーにどう寄り添えばいいのか。
声をかけたくても何とかけていいのかわからない。外回りのことはできるけれど、本人の身の回りのことは遠慮してしまう。
言葉に落としていく作業も必要であるけれど、心を寄り添わせることはもっと重要です。
先の北斗さんが「近くに居てくれればいいんです」とおっしゃっているのも、そこには心の交流というベースがあるからこそだと思うのです。
心を寄り添わせていることをきちんと体現する。
その体現方法として、「ハグをしたり、手を握ったりすることは大変有効」だと秋山さんも指摘しています。勿論、日本にはなかなかそういったスキンシップの慣習がないですし、気恥ずかしさもあるでしょう。しかし、「手当て」という言葉があるように、ただ体に触れてあげること、体をさすってあげることだけで、痛みさえも緩和させることもあるのだそうです。また、何よりスキンシップは、一人ぽっちで闘っている本人の不安な気持ちを和らげ、精神的な安定をもたらすことにもつながるといいます。

パートナーががんを宣告されるー。
いまや決して他人事ではないこの事実にどう向き合うのか。それは、普段からどう相手と向き合っているかに等しいのです。だからこそ、常日頃から話し合える関係にしておく、感謝を表現できるようにしておく、相手の気持ちに心を通わせることができるようにしておく。それでこそ、がんという問題も、生きている過程の一つの事象として共に乗り越えていくことができるのかもしれません。

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