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「2010年代」の学生運動家、香港へ(希望を求めて・ルポルタージュVol.1)

2014年10月05日 00時43分 JST | 更新 2014年12月04日 19時12分 JST

現代日本の学生運動は、穏健で、内向きであり続けた

「空気」と葛藤を続けていた日本の学生運動が今、香港と向き合おうとしている

 10月4日、慶應義塾大学の2年生、日本の学生運動家青木大和が予てから親しくしている乙武洋匡氏と共に香港へ渡った。香港で起きている歴史的なデモの現場を見に行くためである。新たな局面に入りながら未だに終息の見えない香港の運動だが、この小さなニュースは日本の、特に教育と政治を取り巻く環境を変える可能性もまた秘めている。

実は成熟しつつある「10年代」の学生運動

 そもそも「日本の学生運動家」といってピンとくる方は少ないだろう。確かに今の日本においてかつてのように大規模なデモを学生が行うことはないし、デモの現場における学生の参加者も少ない。だが、特に2010年代以降、高校生を中心とした学生運動は活発になりつつあり、そのあり方は確実に日本の社会を反映している。

 2010年代の日本の学生運動について取材した数少ない映画が映画集団Ours制作の映画、「希望を求めて File.1 「ぼくらの」世代の政治と学校」だ(参考 : http://ours2012.com/?p=360)。自分が監督を務めたこの作品では、「高校生100人×国会議員」といった企画を主催した『ぼくいち』という団体を追っている。 2012年、青木大和氏を主催者として始まった「高校生100人×国会議員」は、そのイベントの規模の大きさと独自性からボランティア活動をしていたり政治に興味を持っている高校生たちにとってのサミットの役割を持つようになり、そこから派生して様々な活動が生まれたり、人が流れるようになった。2014年現在、18歳選挙権の討論会『Act18』や復興支援に関する高校生サミット『東北高校生未来会議』といった政治活動が、与野党の政治家や官僚、大手メディアを巻き込みつつ高校生主催で多数行われ、ある種のムーブメントとなっているが、今の高校生の間にはこのような学生間を繋ぐ横のネットワークと、直接政治家や有識者へ訴えるためのプラットフォームが存在しているのだ。

「10年代活動家」の内向性

 だが彼らの感想を聞いてみると「学校で政治の話をすることは無いから楽しかった」、「自分と同じような立場の人に出会えてよかった」という感想がとても多い。実際、彼らの多くが自分の元々の所属集団である学校に、少なからず不満や居心地の悪さを感じている。

 その主たる理由はいわゆる「スクールカースト」と受験競争にある。『高校生100人×国会議員』以前に学生団体や、あるいは政治の話をしたい人達にとって彼らが集まる場というのは無かった。むしろ多くの学校に於いては部活でない=非公式であるという立場からあまり言い出せないという人が多いのが現状だ。また、過去の時代の学校とは違い、現在の学校では政治の話をするようなことはほとんどなく、特に受験に追われがちな進学校に於いて政治の話は「受験と関係が無い」と切り捨てられてしまう例もまた多い。

 それ故に日本の「高校生活動家」の、政治主張は比較的高校生の政治教育や地方自治、18歳選挙権と言った、自分の周囲の環境、つまり土地や学校への変化を求めるものが多い。勿論、彼らそれぞれがエネルギー問題や外交、防衛分野について意見を持っていることはあるが、それが実際の行動に反映されることは少ない。

「空気」と戦う学生達

 では日本の学生の戦っているものは狭く、小さいものなのかというとそんなことはない。日本の学生の葛藤するものは他でもない「空気」であるからだ。

 香港の学生達をテレビで見た大人が日本の学生に声をかける時、そのやり方は主に2つになるだろう。一つは「彼らは自由を奪おうとしている中国に対して抵抗している。なぜ日本の若者も日本の自由を奪う中国に対して立ち上がらないのか」というもの。もう一つは「彼らは自由を奪おうとしている政府に対して抵抗している。なぜ日本の若者も市民の自由を奪いつつある日本政府に対して立ち上がらないのか」というものだろう。双方の解釈の正否はともかく圧力に対しての抵抗という意味では日本の高校生達の活動も共通している。

 高校生達にとって「空気」は大きな問題である。勿論学校によって程度の差はあるが右左に関わらず政治の話をするということ、まして政治に参加するということができない「空気」が確実に日本の高校にはある。

 その「空気」は決して高校生の間だけのものではない。世間的な投票率の低さ、何より政治について話せない「空気」は大人社会でも強いだろう。村上龍の小説『希望の国のエクソダス』でも克明に描かれていた「空気」は政治に限らず、社会全体に悪影響を与えている。

日本の学生運動の代表、香港に

 そんな「空気」と戦う学生運動の代表ともいえる青木大和が香港に向かう。国内の「空気」と戦っていた「内向きな」運動を率いていた人物が香港という舞台で何を得るか、注目する価値は十分あるだろう。