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子どもの貧困による国益の損失~大学奨学金制度編~

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「子どもの相対的貧困率」は2012年には過去最悪の16.3%までのぼり、実に6人に1人の子どもが相対的貧困状態にある(厚生労働省)。過去最悪だったこの2012年を例にとると、貧困線は122万円であり、可処分所得がこの122万円に満たない世帯が相対的貧困世帯に該当する※。

こういった深刻な状況から、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当の増額や多子世帯の保育園や幼稚園の利用料負担が軽減されることになった。しかしまだまだ不十分である。政府の2016年度予算案では「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」として10億円が計上されるなど、地域によって対策が急務となっている。

これから様々な角度で子どもの貧困が日本経済・社会に与えうる影響を考察していく。今回は大学の奨学金制度についてだ。

全世帯の大学等進学率は73.3%であるが、児童養護施設の子どもの場合は22.6%にとどまっている。そもそも大学の奨学金制度というのは、大学や企業、地方自治体から一般的なローンより低い利子や無利子で教育費を借りられる制度である。募集対象の幅も広く、公的機関である日本学生支援機構が最も利用されており、2014年度では利用者は約140万人にも達した。

奨学金は将来返済する義務がある。通常は在学中に毎月、一定額を受け取る。在学中は返済する必要はなく、卒業した後7カ月目から月賦で返すのが原則であるが、就職難で就職が決まらないうちに返済義務が生じたりする場合は過酷な状況となる。社会人としてスタートする時点で数百万の奨学金という名の借金を背負っていること自体が、経済的にも心理的にも重荷となるのは言うまでもない。この一般的な奨学金制度が「貸与型」といわれる。

一方で私立大学では返済する必要がない「給付型」の奨学金が充実している。大学に入学してから後の成績等によって給付を判定する奨学金制度もある。ただし、給付型の奨学金が主流となっていないため、存在自体を知らない学生も少なくない。本来であれば、学ぶ意欲が高く、優秀な成績を修めたり、特筆した能力の持ち主であるような学生には優先的に給付型の奨学金が行き渡るような方法に転換していくべきではないか。

もちろん、学業に対する態度等、それに見合った実績を残しているかは考慮される必要はあるが、経済的格差が教育格差を生み出すとも考えられている現在では、やはり給付型奨学金制度を生徒や学生たちに告知し、普及させ、経済的格差縮小を通じて教育機会の格差縮小へ発展させていくことが重要であると考える。

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(筆者母校・津田塾大学卒業式)

教育水準は国力の根幹を表すバロメーターであり、経済状態によって進学率や就労環境の違いが残る状況を放置しておくことが国益の損失へ繋がっているという現実に対して具体的な政策を講じていく必要がある。

※子どもの貧困率とは:「貧困率」とは世帯収入から国民ひとりひとりの所得を試算し、真ん中の人の所得(中央値)の半分(貧困線と言う)を下回る人の割合であり、「子どもの貧困率」とは18歳未満で貧困線に届かない人の割合のこと。

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