子どもの貧困による国益の損失~結婚・出産編~

国においては、出産や育児において心理的、社会的に不安を抱えた女性たちが求めている社会環境作りがおろそかになっていると考えざるをない。

2月19日。筆者は33歳となった。議員になったのが28歳であるので、市民・県民の有権者による選挙でのご判断により、有り難いことにこの仕事を5年間続けている。

当時から「結婚」や「出産」のことは数え切れないほど指摘されてきた。「早く結婚しなさい」、「子供を産まないと一人前ではない」、など駅や街頭活動、選挙活動の中で散々言われてきた。現在も独身であるが、この仕事を始めてから恋愛とは程遠い生活を送っており、市民の付託に応えるため、恩返しをするために、何よりも仕事を優先してきた。筆者はこれは議員として当たり前のことであると考える。

筆者は表面的には笑顔で対応したり、開き直って我孫子市議会の一般質問でも提言をしたりしているが、何を強調したいかと言えば、一人で生きていくという選択をする女性もいる一方で、男女とも社会的、身体的、精神的、経済的に様々な事情を抱えて「結婚や出産をしたくてもできない」層が現実に存在するということだ。

2014年の平均初婚年齢は男性は31.1歳、女性は29.4歳で、この20年で3歳上がった。さらには第一子を産む女性の平均年齢も30.6歳と約40年前から5歳上がった。この背景には女性の仕事などの社会的理由が存在する。

日本産婦人科学会によると妊娠・出産に最も適した年代は25~35歳前後とされているが、女性の社会進出が進んだことによって自分の適齢期の間に仕事と育児を両立できるかわからないという不安や仕事の復帰の際に心理的にも負荷がかかるのは言うまでもない。つまり、女性は仕事か育児を常に選ばなくてはならない人生設計を強いられてきたことが言える。

こういった状況で健康な独身女性が卵子を凍結(「卵活」や「卵貯金」などと言う)するなど、晩産化・晩婚化社会が加速することが懸念される。自然に誰もが産み、育てる社会を形成していくことが政治家の仕事であるにも関わらず、健康女性までもが科学的な手法を頼りにせざるを得ない現状を深刻に受け止め早急に環境整備に取り組むべきである。

先日、千葉県人権啓発事業補助金事業の第3回千葉県東葛地区人権サミットに出席した。人権問題の解決に向けて差別のない社会を目指す活動を精力的に行っているNPO法人人権ネットワークPEaCE21が主催し、母親が仕事が忙しく育児に時間がかけられないケースやひとり親の育児問題など、児童虐待という視点で千葉県松戸市長、柏市長、我孫子市長によるパネルディスカッションも行われた。

基礎自治体が独自の取り組みで母親や女性の育児・仕事をサポートしている一方で、国においては社会的背景から生まれる出産や育児において心理的、社会的に不安を抱えた女性たちが求めている社会環境作りがおろそかになっていると考えざるをない。筆者も全国の地方議員及び団体とともに活動している「里親制度」の支援などに取り組んでいるが、社会全体で過不足分をそれぞれが補ったり、手助けできる柔軟な仕組みを創り上げていくことが重要であると痛切に感じる。

この現状を直視し、女性の人生が結婚・出産か仕事か、という二者択一になってしまう蓋然性を多分に秘めているこの社会構造こそが児童虐待や子供の貧困につながっていることを認識し、女性の社会進出ばかりに目を向けるのではなく、その政策の前提にある最重要項目を見落としてきた社会の矛盾に気づき、生活保護以下の収入で暮らす子育て世帯が過去20年で倍増してしまったというこどもの貧困状態に対して国は率先して取り組んでいくべきである。

「女性が輝ける社会を目指す」という政府のスローガン以前に、安心して子供を産み・育てる社会が構築されなくては輝くどころではない。

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