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自民党・野田聖子議員に聞く特別養子縁組に取り組む理由と現状の日本

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児童虐待の問題が叫ばれる中、多くの子どもが親元で暮らすことができていない。一方、海外では里親や養子縁組が普及し、家庭での暮らしが一般的になっている。こうした現状に対し、どうすれば特別養子縁組を普及することができるのか、また現状の課題はどこにあるのか等、長年特別養子縁組に取り組まれてきた自民党・野田聖子議員に話を聞いた。(取材日ー3月23日)

日本の養子縁組の杜撰な現状


――特別養子縁組に取り組もうと思ったそもそものきっかけは何でしょうか。

野田聖子議員(以下、野田):

個人として苦い経験をしたので、約10年前に今の夫と出会って結婚を前提に付き合っていたのですが、私はもう50歳近くで、不妊治療をしても子どもができない体ということが分かっていました。

今の夫と結婚するにあたっては、「あなたの子どもは産めません。それでもいいんですか?」というところから始まって。ただ、夫からは子どもを育てて新しい家族を持ちたいという希望があったので、養子縁組を検討しました。

けれど、民間あっせん団体からことごとく断られてしまい。断られた理由は2つあります。

1つは私の年齢の問題。もう1つは私が働いているから。両方とも子どもにとってかわいそうだと、子どもの福祉に悪影響を及ぼすと言われて。共働きが多いこの時代に、すごく理不尽だなと思い、私自身何とも納得がいかなかったので、色々と当時の背景を調べたところ、養子縁組のあっせんについて法律がないということがわかりました。

そして判断も民間あっせん団体それぞれの基準に任されている。それはちょっとおかしいのではないかと勉強していく中で、読売新聞の高倉さんという現役の記者の方が書かれた、『赤ちゃんの値段』という本に出会ったんです。

ここでは日本の養子縁組の杜撰さや酷い現状が書かれていて、であればちゃんと法律屋として、養子縁組あっせんの法律をきちんと作って、子どもが二次災害に遭わないようにする。

実親に捨てられたり、虐待を受けたりした子どもが、養子縁組によって幸せになるはずなのに、そこが国が関与しないいい加減なシステムだと何が起こるかわからない。

想定されるのは、海外に送られた子どもの足跡を誰もつかめない。最悪のケース、臓器移植とか児童ポルノの生贄という可能性もあるかもしれない。誰もその子供たちの足跡を追えないというのは、先進国として無責任なのではないかと。

こどもの権利条約では家庭養護を進めていかなければなりません。棄児あるいは虐待を受けた子どもたちに、諸外国、特に先進国ではきちんと養子縁組あっせんがなされていて、温かい家庭で育っています。

例えばAppleのスティーブ・ジョブズも養子ですし、フランスや韓国でも、養子に迎えられた人が今大臣であったり(Platnews編集部注:韓国系フランス人ジャン=ヴァンサン・プラセ氏が国家改革長官)、サミットでご一緒する国々の中ではそういったことが当たり前のように行われている中、日本ではそのようなことがストップしている。

そのこともあり、きちんと国が責任を持って法律を作り、そういう子どもたちを二度と苦しませないような国にしなければならない。

もう少し突っ込んで言うと、日本は中絶数が大変多い。年間20万人~40万人の女性が何らかの理由で中絶しています。理由の大きなものでいえば、まずは生活苦から育てられないということ、もう一つは若く妊娠してしまって、世間体からみっともないということでおろしてしまう。

けれど、若い人たちが中絶をしなければならないのは、世間体もさることながら、産み育てられないという現状が大きいと思う。だから、温かい家庭に送り届けられる環境を作ってなるべく若い女性たちの中絶を減らしたいということなんです。

 

――現状、児童虐待を受ける子どもは0歳から1歳児が最も多くなっていますが、特別養子縁組はその改善にもつながるとお考えでしょうか。

野田:

そうですね。児童虐待は難しくて施設に引き取られても、特別養子縁組を組む際に、実親が嫌と言うと、残念ながら新しい親のところで子どもとして育てられないという面もあります。

これは少し別の問題ですが、大事なことは、それも含めた養子縁組あっせんということがこの国では公的なこととして行われてこなかったということ。それを新たに公的なこととして、日本中できちんとやりましょうということです。

厚労省が今国会で提出予定の児童福祉法改正の中では、今まで任意の業務だった斡旋を、児童相談所に義務として課す。だから全国の相談所に相談に行けば、「望まない妊娠をしたけれども中絶はしたくない」、「ちゃんと産みたいけれど、自分で育てられない」という若い人たちも含めて、必ずその人たちに対して斡旋業務をしてくれる、そういう国になります。

児童相談所はもとより、今までそれに取り組んでいた民間の斡旋団体も、良いところと悪いところと極端に差があるので、良いところをしっかり残して悪いところを淘汰させていく。そうやって健全な民間のあっせん団体を作って、できれば財政的にも支援ができるような法律を作っているところです。

 

――日本では親の保護を受けられない子どもの8割以上が児童養護施設に送られていますが、海外では大半が家庭で育てられています。どうして日本と海外でこんなに差があるんでしょうか。

野田:

やはり、血のつながっている者しか子どもじゃないという偏見が長く続いている。だから、少子化だって言われていても、日本の一般的な子どもというのは、「両親が普通に妊娠して産んだ子というのが子ども」という狭いイマジネーションの中でしか発想がないために、問題と向き合っていないと思っている。

そこで養子縁組の子どもというのは、全く血のつながらない子どもで、それは今で言うもらいっ子みたいな形で、世間の差別、偏見にさらされる。そういう状態がまだまだあるので、なかなか進まない。

 

――自民党は特に血縁重視や家族重視の考えが強いと思うんですが、党内の反応はどうでしょうか。

野田:

法案の内容を説明して回っていますが、児童の福祉に関する法律にずっと関わってきた関係議員は、概ねそういったことを理解してくれている。

一部の議員は、血筋とかにこだわるんでしょうけれども、やはり一般的な常識を持っている人たちは、当然日本が「中絶大国」と言われることは、良くないと思っている。それに、そういうセーフティーネットで救われる命があるというなら、その手段をとるのが最善だと理解してくれているんだと思います。

 

――養子縁組あっせん業者の許可制を推進されていますが、現状のあっせん事業のどこに問題があるのか教えてください。

野田:

これまで私が聞いてきた問題というのは、斡旋業務が十分にできない場合もあるので、例えば障害児のあっせんを日本ではほとんどやらない。それで障害児は海外へ斡旋してしまう。

現状はボランティアでやっている方が多いし、そのために手数が少ないので、例えば、九州の子どもを北海道まで斡旋するような力がないんです。そうすると、回りの人たちの力だけで進めるしかない、あるいは打診してダメであれば海外へ、という安直な斡旋の現状もある。

同様に、斡旋したけれども、その子どもが気づいたら発達障害だったから返すみたいな、養う親に対してトレーニングをきちんとしなかったから、子どもが二次被害を受けるという現状がある。

さっき申し上げた海外で何が起きているかわからないとか、人身売買のごとくお金を法外に取るというのが散見されますが、斡旋に関してきちんと法律化してハードルを上げ、きちんとした事業所を残して、子どもの安全を確保したいなと考えています。

「一億総活躍」では総花的になってしまう


――話の内容は少し変わりますが、安倍政権の「一億総活躍」に関してはどのようにお考えでしょうか。

野田:

私の自分の力量でいうと、私自身がリーダーシップをとるならば、あれもこれもできないし、一億総活躍っていうのは総花的になって、色んなことを全てやらなければならなくなってしまうので、なかなか厳しいものだと思う。

最初のアベノミクスでは、成長戦略の最重要な政策が女性政策だったので、これだけ一気呵成に取り組めば、相当日本の多様性を政策に織り込めるんだろうなと思ったのですが、第3次安倍政権での新しいアベノミクスでは、そこが薄まった感があって、やるとは言っていたけれども、それと同時にあれもこれもやらなければならないということで、女性だけに投資できるかというと、なかなか一億総活躍と言ってしまった以上厳しいのかなと。

男性が9割を占める弊害


――先日から話題を集めている待機児童問題に対する動きや、国会での野次に関して、どう思われていますか。

野田:

政治っていうのは9割男性ですから。

それもお二人(Platnews編集部)のような若い人はあまりいなくて、自民党の国会議員の平均年齢が60歳ですから、それで9割は男性ですから、推して知るべしで、そもそも前の世代も私の世代もそうですけれど、男性が出産に立ち会うということも無かったと思うし、保育園の送り迎えもしたことないだろうし、子育てを妻に100%任せた世代の人たちが今自民党は主流ですから、ああいった野次が出るっていうことは無知っていうことなんです。それに尽きる。

 

――公職選挙法の改正に関して国会議員を男女同数にするというのも掲げていますが、具体的にどういった法案をお考えなのでしょうか。

野田:

世界中で女性議員の比率が高いっていうところは、大なり小なりクオータ制度を導入されているところばかりなんです。日本よりも封建的だと言われている韓国が、ある日突然日本より女性議員の比率が増えたのは、クオータ制の導入しかなくて。

男性の理解が弱いといつまで経っても増えないので、外国に習うと、安倍総理が2030(Platnews編集部:2020年までに、指導的地位に立つ女性を30%にするということ)と言って、全ての分野で女性を3割、管理職を3割に増やすといったことを推進していますが、政治だけがすっぽり抜けていて、女性の政治家枠を3割にするためには、もう強行手段しかない。

しかしずっと研究してわかってきたことがあって、今の公職選挙法、今の選挙のあり方では数を劇的に増やせないということがわかりました。

 

――具体的に言うと?

野田:

要は一番増やしやすいのは比例名簿ですが、日本の衆参の比例を見ると、参議院の比例、ここが一番増やしやすいのだけれども、非拘束なんです。

つまり、強い順に選ばれていくという形で、ある意味民主的ですが、それをすると順位に縛りはかけられないから難しい。衆議院の方を見てみると、小選挙区も難しい。唯一残っているのが比例復活ですが、そのささやかな名簿ぐらいしかいじれなくて、そこで女性グループ、男性グループみたいな順位をつけることで、例えば女性が2人しか比例復活できなかったところが、3人になるとか。

だからマイナーチェンジなんですが、何もやらないよりかは良いかなと。まずははじめの一歩で、女性を少しずつ、じわじわ増やしていくことが重要だなと思っています。今、自民党で逢沢一郎議員(Platnews編集部:選挙制度調査会長)と、上川陽子議員(Platnews編集部:女性活躍推進本部本部長)が中心となって勉強会が開かれています。

 

――法案の提出はある程度目途が立っていますか。

野田:

茂木敏充選挙対策委員長にも反対はされなかったので党内手続きは必要ないと思う。私とすればクオータと呼べるような代物ではないけれど、ただそういう意識、女性を増やしていこうという意識につながるのかなと。

とりあえず、今の選挙で可能なクオータの導入はそこしかないのですが、それだけでも一部改正して、今国会で間に合わなくても、次の国会で間に合わせたいと思っています(Platnews編集部:2015年8月19日、衆院選比例代表で男女別のグループに分ける女性議員の選出増を狙った公職選挙法改正案をまとめた。)。

 

人口問題は長い時間をかけて取り組まなければいけない


――先ほどの「一億総活躍」にも関連してですが、少子高齢化が進んでいながら、2月発表された国勢調査で初めて人口が下がったというデータが出ましたが、十分な対策が行われていないと感じるのですが、現状の安倍政権への評価も含めて、どういった形で対策していくべきだとお考えですか。

野田:

人口減少というのは、経済政策みたいな簡単な話ではないんです。本当に長い期間をかけて直していかないといけない問題なので、今すぐにでも方針を決めなければならない。

私は10年ぐらい前から警鐘を鳴らしていますが、安倍総理になってようやく、「人口減少はすべての政策にネガティブだよね」というコンセンサスがとれた段階です。自民党の中では10年前だと「何言ってんのお前」みたいな世界だったんです。

安倍総理が得意としている安全保障にも人口減少がすごく大きく響きます。若い人がいなくなるということだから。そこがどうもかみ合っていない。

経済政策もそうです。これだけの負荷がかかっている日本において、ありきたりな経済政策をしてたのでは無理です。そこが「本当にそれぞれの責任者はわかってくれているのか」って不安です。

 

――この前フォーリン・アフェアーズに載っていた論文でも、「生産年齢人口の伸びが年2%を下回ると、その国で10年以上にわたって高度成長が起きる可能性は低くなる」と書かれていました。

野田:

そもそもこの国に経済成長っていうのはナンセンスな響きで、成長、成熟した国家で、何一つ不自由ないわけです。これからの成長戦略で残るところは健康長寿ぐらいしかないんです。今二人で「これがないと不便」っていうのはないでしょ?

 

――ほとんどないですね。

野田:

だから日本では経済がもう成熟しちゃっているんです。だから、経済成長ってこの国にはそぐわないんです。

むしろこの成熟の維持っていうのを考えなきゃいけないのに、私としては、現実と言ってるキャッチコピーのズレを感じてしまう。経済成長って開発途上国が抱えるテーマであって、日本には合っていないと思う。

2020年以降に暗黒時代が来る


――いま増税延期というのがムードとして高まっており、同時に財政出動を行うという声も聞こえていますが、増税をやめることで、社会保障費の財源が減ってしまうという懸念もあると思うんですけれども、そこら辺に関してどう思われていますか。

野田:

まだ五分五分なので、今の段階で私はまだコメントできませんが、シビアな数字から言えば、2020年まではどうとでもなるところがあるわけです。

オリパラ(オリンピック、パラリンピック)があるので、インフラも新国立競技場をはじめとして、相当整備が進むし、今も増えているところがあって。斜めに見ている人でもオリパラがあることで2020年まではどうにかなるかなと思っている。

問題はその後です。暗黒時代は。だから今はそこに照準を合わせてやらなきゃならない。

レーガノミクスだって成長戦略で12年かけている。日本も同じです。今から10年ぐらいかけて仕込まないと。だから、正直暗黒時代がもうあと5年ぐらいで来る。そして超暗黒が2025年、要は団塊世代の人たちが、後期高齢者になるっていう計算上です。

それで、今2016年で暗黒時代のピークまで10年を切ったわけで、今成長戦略を作っておかなくてはならないのに、それが見えてこない。そこに財政出動はありだと思います。仮に2025年に今と同じような社会保障を提供するならば、消費税は20%にしなくてはいけない。

ただ、その間に本当に女性活躍を見える化して、大卒の女性が大卒の男性並みに働けるとすると相当の国富が生まれて、最大でGDPの15%(70兆円超)と言われています。それで消費税1%2.5兆円と言われているので、女性活躍という成長戦略が動いてくれることで、何もしなければ20%まで上げなければならない消費税を、抑制できる可能性があるわけです。

 

――いま「安倍1強」と言われていると思うんですが、それによる弊害はどのように考えていますか。野党に対する国民の期待値が低い中で、自民党内で党派がきちんとできて、意見がある程度多様化していくのが重要かなと思っているんですけれども。

野田:

今、カギを握っているのは政策集団と言われる派閥です。1強と言われなくするためには、ポスト供給組織ではなくて、政策集団として派閥でしっかり発言してほしいと思っている。あとは幹事長ですよね。

 

――そうですね。増税のところとか、たぶん谷垣幹事長とか意見は違うと思うんですけれども。

野田:

1強と言われるけれども、私たちには安倍1強という意識はなくて、自民1強という意識。

私たちは野党経験を3年3か月してきましたから。その間は何も仕事ができなかったし、皆さんのような良識あるメディアと違って、既存のマスメディアに相当叩かれてきたから、二度と野党に戻りたくないという意識が強い。

ただ、安倍さんを担いでいるというよりも、自民党を守るために、みんなバラバラにならないようにしている。なぜかというと、麻生さんの政権が瓦解したのは、色んな政策的なところもあるかもしれないけれど、政局として身内が批判し始めたから。

そうなると、あっという間に国民の信頼を失うというのを嫌というほど経験しているので、安倍さんを批判しているのではなくて、政策批判をしているわけです。

 

野田聖子(のだ・せいこ)

1960年生まれ。上智大学卒。87年岐阜県議会議員選挙に自由民主党公認で立候補し、史上最年少で当選。93年第40回衆議院議員総選挙に岐阜一区から立候補し、初当選。以後8回当選。内閣では郵政大臣、内閣府特命担当大臣(科学技術政策・食品安全担当、消費者担当)を、自民党では国会対策副委員長、政調副会長、筆頭副幹事長、総務会長を歴任し、2016年1月衆議院災害対策特別委員長に就任。2005年自民党を離党し、06年に復党。少子化、男女共同参画、選択的夫婦別姓などに関する政策に造詣が深い。自身の不妊治療や子育ての経験もメディアで公表し、女性の働き方に対して問題提起を続ける。

 
(2016年4月27日「Platnews」より転載)