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スペインで躍進する若者政党・ポデモスはなぜ幅広い支持を集めているのか?

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PODEMOS
Podemos party leader Pablo Iglesias, center, and other party leaders celebrate following the latest official election results in Madrid, Monday, Dec. 21, 2015. Podemos supporters gathered outside their party headquarters in Madrid cheering as general election results began to roll in confirming the newcomer on the political scene looked set to capture 68 seats and a chance of forming a coalition in parliament.(AP Photo/Daniel Ochoa de Olza) | ASSOCIATED PRESS
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昨年12月に行われたスペイン総選挙で躍進した政党・ポデモスが注目を集めている。

ポデモスは2014年1月にできたばかりの新しい政党で、同年5月の欧州議会選挙でスペイン第4の政党に、支持率は一時与党を抜いてトップに立ち、昨年末の総選挙では定数350議席のうち69議席を獲得し、第3党にまでなっている。

市民運動の流れで出てきたポデモス

では、なぜこの新政党が支持を集めているのだろうか。

まずリーマン・ショック後のスペインは、徐々に改善してはいるが、若者の失業率が約50%と危機的な状況で(全体では約25%)、2011年5月には「Occupy Wall Street」を模倣した大規模な抗議運動が起こり、緊縮政策や格差に対する不満をぶつけた。しかしデモだけでは選挙結果に影響を与えることはできず、与党は単独過半数に。

こうした中で、2014年1月に30人の知識人によってポデモスが結党された。ポデモスとは、スペイン語で「我々にはできる」という意味で、政策決定の段階から市民に参加してもらう従来の政治手法とは異なる形を実現しようとしている。メンバーも大半が30代で、若者政党という側面もある。

こうしてみると、一見日本の学生団体SEALDsと似ている印象を抱くが、実際は異なる。

「極左」から中道左派へ

ポデモスの党首パブロ・イグレシアス氏は、1978年生まれの37歳で、マドリード・コンプルテンセ大学の政治学教授、他の主要メンバーも大学教授や学者などで構成されている。残念ながらSEALDsをはじめとする日本の市民運動には「知性」を感じないが、ポデモスは「知性」を持ったメンバーが中心に存在する。

確かに結党当初こそ、グローバル化や市場主義を強く批判し、政策も自由貿易からの離脱、生活に最低限必要な資金提供(ベーシックインカム)、利益を出している企業が労働者を解雇するのを禁止、公的債務支払いに関する市民の監督権といった典型的な左派ポピュリストの政策が多かったが、徐々に現実的な路線に、中道左派寄りへと変化してきている。

最初の非現実的な政策案は、今から思えば戦略の一部であったように思える。つまり、現政権に最も不満を抱えている若者、低賃金層からの支持を集めるためである(スペイン国民の最大の関心事は失業、汚職、経済だ)。ポデモスは政治資金をクラウドファンディングで集め、誰もが参加できる集会を開き、そこで出た意見をマニフェスト(プログラム)に反映させている。そして結党後すぐに行われた2014年5月の欧州議会選挙ではスペイン第4の政党に選ばれた。

まずはマニフェストに一般市民からの意見を取り入れることで期待を集め、また国民が汚職に大きな関心があることから、イグレシアス氏は長髪、白いシャツにジーパンという古い政治家(と彼が批判する)とは一線を画した爽やかな印象をつくっている。学者らしい難しい表現や左翼らしい政治的専門用語を使ったりもしない。デイヴィッド・ハーヴェイやサルバドーレ・アジェンデなどマルクス主義思想家の影響を受けていると過去のインタビューの中で答えてはいるが、大衆に対しイデオロギー色を打ち出すことはない。

また、現実的に実施する上では財源の問題は出てくるが、新興勢力としては他党を批判しても注目を集めることはできず、「どういう変化をもたらすのか」を明確に打ち出すことが重要だ。ポデモスは「希望を胸に投票したのはいつでしたか?」という選挙スローガンを掲げている。

そして、以前と変わっていないものもあるが、今は下記のようなマニフェストを掲げている。

  • 貧困レベルにある家庭に対し600ユーロ(約7.6万円)を支給
  • 富裕層への増税
  • 再生エネルギーなどを使って低炭素社会の実現
  • 緊縮政策を止め、医療、教育への支出削減を止める
  • 定年退職年齢を(67歳から)65歳に戻す
  • 非正規雇用を減らし、最低賃金を保障。解雇に関する法律も変える
  • 公共投資を増やす
  • 男女平等の実現、幼稚園の無料化、週35時間労働
  • 一部銀行の国有化、金融規制
  • 抵当権の再設定

欧州議会選挙時に物議を醸した全家庭へのベーシックインカム、公的債務支払いに関する市民の監督権は撤回している。経験不足による実行力への不安から一時ほどの支持率はないが、それでも1980年代はじめ以降勢力を保ってきた国民党と社会労働党の二大政党を脅かしている。

今後より幅広い支持層を確保するために、中道寄りにシフトしており、ポデモスの指導部は「極左」という呼び方はやめてほしいとよく言っている。ポデモスが支持した市長もバルセロナとカディスに2人誕生している。昨年末の総選挙時には約39万人の党員が存在し、スペインで2番目に多い。

従来とは異なる政治手法

ポデモスはギリシャの急進左派連合と緊縮政策反対という点では共通している(た)が、新しさという意味では大きく異なる。既に述べた通り、政治資金はクラウドファンディングで集め、シルクロス(スペイン語でサークルの意味)という地域単位での集会を開いている。既にシルクロスはスペイン全体で1000個近く存在する。またどこからでも参加できるようオンライン上でもシルクロス同様に討論を行っている。このシルクロスはベネズエラのウゴ・チャベス大統領が行った「ボリバルサークル」を模倣したものかもしれない。

もちろん、facebookやyoutubeも積極的に活用し、支持者にアプローチしている。元々人気のあったTVにも出演し、イグレシアス氏はカリスマとして存在感を発揮している。今後は、議席を確保した政党として運営面が大きく問われることになるが、新しい政治手法を発展させられるのか引き続き注目していきたい。

(2016年1月15日「Platnews」より転載)

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