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スロバキアの原子力発電所を見学して

2017年05月04日 17時05分 JST | 更新 2017年05月04日 17時05分 JST

スロバキアのMochovce(モホフツェ)原子力発電所を、医学部の友人たちと見学をしました。

原発を運営しているのは電力会社Slovenskéelektrárne(スロベンスケエレクトロネ)で、スロバキア国内の電気約73%を供給しています。

2016年8月に南相馬市と常盤市を訪問した事から、福島や原発について興味を持ち、留学先であるスロバキアの原発ではどのような取り組みがされているのか調査することにしました。

通信管理者のHolýRóbert氏(ホリー・ロバート)に、緊急時のプランとローカルでの取り組みについてお話し伺いました。

福島の事故を受けて欧州の原発で取り組みがどう変化したのか、私自身が福島訪問を通じて感じた事と照らし合わせてご紹介します。

モホフツェ原子力発電所

モホフツェは首都ブラチスラバから128km東のニトラ地方に位置しています。

ニトラ地方は面積約6,300平方km、人口約70万人で、群馬県と同じくらいの面積です。

モホフツェに一番近い場所に位置するレビツェの人口は約36,000人で、うち90%ほどが原発に勤務する職員とその家族です。

モホフツェには現在、加圧水型原子炉(VVER)440/V-213という旧ソ連で開発された原子炉が4基あります。

そのうちの1号基と2号基は1998年、1999年から稼働しており、年間3,000GWh以上、スロバキアの年間供給量のうち約11%の発電をしています。

3号基と4号基は1992年に一度資金難から建設が停止され、その後2008年11月から再び建設が始まり、今年2017年から2018年にかけて稼働を開始する予定です。

この2つの原子炉の導入により、年間700万トン以上の二酸化炭素排出量を縮減する事が可能です。また、3号基と4号基の建設にあたり5,000人ほど新たに雇用され、モホフツェでは建築士や事務局員を含め全員で約15,000人以上の職員が働いています。

ほか、原発について正しい知識を広げる為に作られた、見学用の施設があります。

スマートフォンと連動させた館内の見学、顔認証システムや3D映像など幅広い年齢層と多種多様な市民に少しでも興味を持ってもらう工夫が施されていました。

毎月半径40km圏内の小中学生を無料送迎バスで迎え原発の説明会を館内や、シティホールで一般の方に向けた講習会を実施しています。

福島原発事故の影響

福島第一原発の事故はスロバキアにも大きな影響を与えました。

2012年から2013年にかけて原発事故の事例を参考にした訓練が3回行われました。福島関連の行動プランは、3つに分類されています。

原子力発電の運行状況に関するもの、改良点の発見や推奨されるプランの導入ミッションと、緊急時の行動計画の点検ミッションがそれぞれ、スロバキア原子力監督当局、スロバキア政府の承認のもとで行われました。

それに加え、行動プランは福島原発事故後にEUの指示により改定されました。改定版の行動計画書には、福島の原発事故が事例として用いられており、前書きの部分には"frame work based on lessons learned from the accident in Japan."(日本で起こった事故から我々が学んだ事をもとに)と記載されています。

改めて福島の原発事故が与えたインパクトの大きさと事故の重みを、母国から遠く離れた地で感じました。

欧州原子力保安規定組合は、欧州各国の原発のストレステストを実施しています。

2011年11月に暫定テストが行われ、翌年1月から4月にかけて暫定テストの振り返り評価したピアレポートの作成されています。

このテストのレポートをまとめた、ファイナルレビューを参考に2012月12月に新しい国家行動計画書が作成されました。

その他には、このレビューによって、水素滞留を防止するための静的触媒式再結合装置の導入や、バッテリーモニタリングシステムの見直しがされました。

緊急時のプランと安全対策

国家行動計画書には、状況別の避難パターンと連絡網の流れが記載されています。

状況設定は自然災害、安全装置の故障、マネジメント過失ミスと地震やダム崩壊による洪水等の特別な状況の4つの項目に分かれています。

緊急時の大まかな流れとしては、緊急報告後1時間以内に、通常時の管理組合に代わりに国の緊急対策組合が処置の指揮をとり、その後国際レベルの被害が出ると判断された場合は、EUの緊急対策組合による指揮が取られます。

緊急時を想定した小規模訓練は毎朝実施されており、実際に使用される災害用救急車などを用いた大規模な訓練は3ヶ月〜半年に一度行われています。

私達が訪問したのはちょうど大規模な訓練後であった為、大きなキャタピラーがついた救急車が敷地内を走っていました。

半径5km、10km以内に住む住民には、避難時の対応が記載されているカレンダーや、避難する際に自宅のドアに貼る不在サインがあらかじめ配布されています。

それに加えて5km圏内に居住する市民とには、甲状腺がんを予防するためのヨード剤が支給されています。

モホフツェ原子力発電所から半径15km圏内には、大気汚染をモニターする為の検知装置が25機設置されています。

この探知機は遠隔での操作によって、大気や水、地中や食べ物に含まれるγ線、放射能性ヨードの放射能度を測る事が可能です。

福島の訪問を踏まえて私が感じた事

 

南相馬市総合病院を訪問した際に、内部被ばく量や食べ物から計測される放射能線による影響などの「目に見える被害」は想像よりはるかに少なく、本当に福島の市民を苦しめているのは、風評被害や様々な情報が飛び交う混乱からのストレスだと学びました。

福島の事故を踏まえ、スロバキアの原発が、小・中学生を含む市民に向けて、新たな取り組みをしています。

しかし、内部被曝や外部被曝の対策、スロバキアの原発がいかに安全かについての内容が主な内容で、風評被害などへの対策については記載されていませんでした。

また、国家計画行動書にも避難後の住民への処置等が特に記載されていない事からも、訪問したスロバキアの電気会社だけの認識ではなく欧州全体での対策が不十分だと伺えます。

今回の訪問から、スロバキアが欧州連合に加盟している事や、地つながりで隣国と接している事から、厳しい管理されている事がわかりました。

しかし、改めて福島が発信している本質的な問題は伝わりにくく、対策が不十分であると感じました。

今後も、スロバキアで医学生として学びを進め、福島を訪問した経験と兼ね備え、情報を発信していきたいと考えて居ります。ぜひ皆様の感想や意見をお寄せいただけましたら幸いです。