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NPOでなくてもできる、企業の社会貢献とコミュニケーション

2014年06月10日 17時06分 JST | 更新 2014年08月09日 18時12分 JST

前の記事で、時に企業の事業活動と、その社会への貢献のつながりがよく見えない、と指摘した。

これを生活者の不勉強・理解不足と断罪してしまうのは簡単だ。しかしこれは企業の社会に対するコミュニケーション不足、もしくはその方法がそもそも間違っているのかもしれない。

社会に貢献することと、企業で働くことはどうつながっているのだろうか。今回は企業のコミュニケーションという視点で考えてみたい。

こういうコミュニケーションを大企業は特に、CSR(企業の社会的責任)活動としてやっている場合が多い。しかしCSR活動として、自分の事業に関連のある問題に関して、ただ寄付などサポートするだけのような活動は、既に前時代的な感が否めない。

例えば、株式公開もしている企業で、なにか社会にいいことやっています的なアピールのためだけに、何も考えずにコミュニケーションをしている企業は、その企業が社会に提供している価値が伝わりにくい。そしてそれは結局、客や社会とのコミュニケーションがうまくとれていないということで、信頼あるブランドを築くことができず、ビジネスに影響するのだ。

もはや社会に対する貢献やコミュニケーションを、CSRという一部の部署やチームでやっているというスタイルが古いのかもしれない。このスタイルだと、やっている活動がよくても、企業の一部の活動のアピールに見えるし、"本業"である事業活動と別のサステナビリティ(持続性)がない、ボランティア活動に映るかもしれない。

それ以上に、そもそも本業の事業でどう社会貢献しているかを、コミュニケーションできていないことが問題だ。

事業は、創業者が意義がある、価値があると思ったから始められたことだ。その事業を通じて得られる社会的価値を、もっと前面にだしたコミュニケーションをできないものだろうか。

事業活動を通じた社会貢献という文脈では、よく「途上国の雇用を支えたくて、こんなビジネスをやっています。」といったアピールがある。途上国で頑張っている社会起業家をブランディングして、会社をアピールするコミュニケーションは、それはそれでいいとは思うが、もう一歩二歩進歩的なコミュニケーションもあるのではないかと思う。

例えば、途上国の雇用を助けるためにビジネスをしている、が企業の最初のメッセージになってしまうと、客は疑問に思う。そもそも何かの商品やサービスを企業から買うということは、その会社に関連する企業に勤める人の雇用をサポートするということだ。購買活動は多かれ少なかれ、誰かしらの雇用を支えているのである。であれば、特定の途上国の雇用を助けるという理由で、その企業の商品をあえて選ぶ、強い理由は何なのだろうか。

雇用を支える社会的意義を第一にうたうコミュニケーションはおかしいのだ。もちろん企業として雇用を支えていることはとても大切だ。しかし、それは企業であることの前提だ。そのメッセージが2つ目、3つ目にくるのはOKだとしても、1つ目に来てはおかしいのだ。

社会をどう変えたくて、客や社会にどういう文脈でどんな価値を提供したいのか、という発想が最初に来なくてはいけない。そうやってその企業が何かしらの社会的価値を生んだ結果として、雇用を生み出すのだ。

そういう姿勢こそ、選ばれる企業・商品のコミュニケーションではないだろうか。

話を戻そう。社会貢献と事業活動を考えるに、企業の事業活動そのものを、社会貢献に直接的に組み込んでコミュニケーションをするスタイルは、現代的な一つの形だと思う。

例えば、TOMSという会社がある。アメリカ発祥の靴メーカーだが、そのユニークな点は、社会貢献的要素を本業のビジネス自体にうまく組み込んでいることだ。私たちがTOMSの靴を一足買えば、靴を持っていない世界の貧しい人にTOMSから靴1足が寄付されるというのが、基本的な仕組みだ。

創業者の想いが詰まったストーリーと仕組みは、この靴を手にとってみたくなるコミュニケーションが満載だ。そしてこの靴を買った人は、客ではなく、TOMSの社会貢献を応援するサポーターとなってしまうのだ。そしてそのサポーターは、TOMSと大きなブランドロゴのついた靴を履き町を闊歩し、チャンスがあれば友人にその靴の素晴らしさと、ブランドストーリーを語るのだ。

私自身もTOMS愛用者だが、この靴は履き心地がよくて、ファッション性があり、靴として大切な基本がしっかりある。当然だが、ビジネスモデルやコミュニケーションが秀逸で、いくら社会貢献性が高くてブランドに共感しても、ダサくて履き心地が悪い靴は買われない。

こうしてTOMSは品質を当然としながら、別の軸でもTOMSを買うべき理由を与えてくれるビジネスになっている。さらにこれをビジネスにしているという点で、寄付金を集めてひたすらものをあげるボランティア行為に比べて、サステナビリティが遥かに高い。

またビジネスと社会貢献という視点で考えた場合、企業はたくさん黒字を出して税金を払わなくては社会貢献していないのではないかと考える人もいるかもしれない。だが、こうして本業から社会的価値を生み出していることをしっかりコミュニケーションができていれば、あまり税金を払えていないから、社会に貢献していないとは言えないだろう。(無論しっかり利益を出して、ビジネスをまわしていけなければ、ビジネスとしてのサステナビリティが問われることになる。)

TOMSはその会社の存在そのもの、事業活動自体がCSRだ。ブランドストーリー、共感性、そして本業に組み込まれた社会性。これはビジネスと社会貢献を考える上で、現代的でわかりやすい一つの形だと思う。

もちろん、全ての企業がTOMSと同じビジネスモデルやコミュニケーションをとれるわけではない。ただ生活者、特に若者の社会貢献意欲が強い今こそ、こういったモデルを学ぶことは、企業としても大いに価値があるのではないだろうか。