50周年のブラックパンサー党を称えて - 黒人文化の平和を唱える美術展覧会がロサンゼルスで開催

時に美術は、視覚や触覚の美しさで人々を楽しませるだけではなく、政治や文化を通し、人間の習慣や固定観念に啓蒙的な打撃を与えることがある。

時に美術は、視覚や触覚の美しさで人々を楽しませるだけではなく、政治や文化を通し、人間の習慣や固定観念に啓蒙的な打撃を与えることがある。

現在、アメリカの対抗文化で活躍を見せたブラックパンサー党の50周年を記念するアート展覧会「ICONIC: BLACK PANTHER」がロサンゼルスで行われ、注目を集めている。

ブラックパンサーとは、60年代から70年代にかけてのアメリカで、黒人の民主主義・解放運動を発展させた政治的グループである。

貧困地域での食料の無料供給、診療所の提供、組合新聞の発行、警察による蛮行行為撲滅運動などを展開させ、アフリカン・アメリカン文化の平等と平和を訴える、カウンターカルチャーの革命的政治グループの代表としての存在であった。

今回、ゴレゴリオ・エスカランテ・ギャラリーで開催された展覧会は、ブラックパンサー党をテーマとする美術組合「セピア」 によるプロジェクトの一環である。

今も昔も変わらぬ正義の戦いを留意することを目的とし、美術を通じて歴史的ブラックパンサーの活動を称えながら、オークランド、ニューヨーク、シカゴなど、全国の大都市でその活動を広げている。

海をひとまたぎする遠い日本では、間接的に入ってくるポップカルチャーなどの影響により、黒人文化に対しポジティブな印象を持つ人も多くいるかもしれない。

しかし、現在もアメリカでの黒人差別は実に繊細な問題であり、インターネット上で度々あらわになる非常な動画やニュースは年々数を増している。特に、警察と黒人社会の対立は深刻だ 。

ところが、インターネットでの情報リテラシーの向上により、悲観的な話題の反面で、今まで以上に人種問題を学ぶことのできる機会も増え、肌の色ではなく人間の本質を見つめようとする人々が増加しているというのも事実だ。

展覧会のキュレーター、ロザリンド・マクグレイさんはこう言及している。

「SNSの普及によって、黒人文化に様々な変化が現れたような気がしています。多くの人々が、世界中で一体何が、今現在起こっているのか、自分で確認することができるのですから。」

それを証明するかのように、今回のブラックパンサー展覧会は、ギャラリーで過去最大の来場者数を記録した。

なぜ、絵画や彫刻作品を通して黒人差別の問題を訴えようとしているのか、ロザリンドさんは以下のように続ける。

「芸術家たちは、自らの経験や考え方を絵画という平面から訴えることができます。展覧会では、美術を制作する側、そしてその作品をサポートする者たちが、お互いの考えを促進させる機会を得られ、異なる背景の人間が相互の敬意を表すことが可能となる、教育的な環境となるのです。」

それはまさに、元来の美術がアーティストと観覧する者を繋いできたかのように、美術を通し政治的な思考互換をも可能にしてしまうということである。

血を流さずにデモや抗議運動を発展させることができるのならば、それはより良い形の政治活動の一つだと認識されるべきであり、容易ではないかもしれないが、ますます広がればいいのではないかと思う。

ゴレゴリオ・エスカランテ・ギャラリーのオーナー、グレッグ・エスカランテは、展覧会オープニング時の様子を「とてもポジティブで高揚感を得られるものであった」と説明している。

差別は、肌の色だけから発生するばかりではない。

それは、人間の恐怖心、劣等感、憎悪など、普段の生活で湧き上がる感情が引き金になる場合もあれば、すぐ間近で自覚なしに発生する可能性もある。

負の感情は人間の心のコントロールを簡単に失わせ、自分が負傷したくないがため、代わりに相手を傷つける。差別は存在し続けるかもしれない。

しかし、それをどう変化させればいいのか、一人一人が考え、視野を広げ、自分次第でどうにも良くすることは可能だ。きっかけは人それぞれ。

人間の価値は、肌の色ではなく、魂であるということを深く認識していきたい。

Photos: Courtesy of Gregory Escalante Gallery

Iconic: Black Panther

April 08, 2017 - May14, 2017

Goregorio Escalante Gallery

978 Chung King Road

Los Angeles, CA, 90012

注目記事