近畿大学が志願者数2年連続日本一に  「下剋上」の理由を分析

今年の私立大一般入試も終わりを迎えつつあります。フタを開けてみれば......志願者を日本一集めたのは、近畿大学。

今年の私立大一般入試も終わりを迎えつつあります。フタを開けてみれば......志願者を日本一集めたのは、近畿大学。昨年初めて日本一になった近大が、今年も連覇しました。

近大の志願者数は11万3704人。前年度より7814人の増加と、猛烈な勢いです。2位は明治大。10万5702人と、昨年より190人増。3位は早稲田大の10万3494人。昨年より1930人減という厳しい結果に。

この少子化時代、良くても微増、多くが減少しているのに、どうして近大は急増? 近大の下剋上が加速している? 8000人近くも志願者を増やす推進力の正体とは、いったい何なのか? 多くの人が疑問に思っているのではないでしょうか。

いくら「近大マグロ」が話題を集め、料理店「近畿大学水産研究所」に行列ができたとしても。「マグロ効果」の一語で「2年連続志願者数日本一」という現象を説明しきれないのではないか?

V2が判明した直後、近大広報部にその理由について、どう分析しているのか聞いてみました。すると3つの答が返ってきました。

【1】近大マグロを代表とする研究成果が全国的なメディアで報道され、志願者が増加した

たしかに料理店「近大水産研究所」のみならず、近大マグロの生産拡大・量産化へ踏み出したニュース、マグロの骨の出汁でカップ麺を開発等、途切れなく近大の話題が伝わってきました。

【2】文系学部の復活。文系(法・政治・経済・文芸・総合社会)の志願者が大幅に増加した

最近は全国的に「理高文低」が続き、近大も理系学部の功績が有名。しかし本年は理系傾向が弱まり、近大の文系学部に志願者が殺到したもようです。

【3】女子志願者と新たな志願者層の増加

女子志願者数は過去最高の3万1262人に増加している上、これまで以上に「進学校」と呼ばれる高校からの志願者が増加、またエリアも全国に拡大したという。東北方面から 前年の1.8倍、関東方面からは前年の1.5倍に。

近大の広報部は「関西ローカルから全国区の大学になりつつある」という手応えを得ているそうです。

私自身も2014年に近大取材に取り組み、『なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか』(光文社)を上梓しました。

しかし、正直に言って、取材を進め本の執筆に取り組んでいる最中も、その人気が本当に持続するのか、一年だけで終わってしまうのかは未知数でした。

近大関係者自身も「不安はある」と口にしていたくらいですから。

ただし、取材を進めていく中で、近大の「複眼的」な取り組みが次々に見え驚かされたこともまた事実でした。受験生世代にアプローチするのは大学として当然のことですが、近大の射程範囲は若年層や教育界に留まってはいなかったのです。

食料問題・資源枯渇問題への対処としての、「養殖」技術。再生エネルギー問題に一つの回答を出した、バイオコークス技術。民間企業からの受託研究実施件数が全国1位(平成25年度。本の取材時は3位だった)......。

詳細は本書に記述していますが、「近大マグロ」に留まらない複数・多角的な視点と挑戦が見つかりました。

「なぜそれを大学が」と自己限定せず、次々に社会へ踏み出し、実学教育を推し進め、本質的な「ブランド力」をつけ、それを戦略的に広報し発信していく力が、「V2 達成」につながっていったのではないか。

近大の取り組みから学ぶことはビジネスにおいてもたくさんあるのでは。と書いているまさにその時、3月20日の卒業式についてリリースが届きました。

「"女子学生に優しい"卒業式を挙行します。今回初の試みとして、女子学生の袴の着付けを行う時間を考慮して、開始を例年より1時間繰り下げ、学内に着付けスペース、メイクを行うパウダールーム等を設置するなど、"女子学生に優しい"卒業式になるよう準備しています」

まさしく「大学」の枠を超え、一般ビジネスがヒントにすべき「サービス」「おもてなし」のヒントが詰まっている近大、と言えそうです。

注目記事