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暮らしながら新たな景観を創り出す、三重県亀山市「関宿」のまちづくり

2013年07月08日 00時00分 JST | 更新 2013年09月06日 18時12分 JST

「景観」というとまず、視覚的なイメージが浮かびます。が、まちの風景を構成しているのは、建物や町並みのビジュアルだけではありません。音風景、かおり風景ということばをご存知でしょうか。音、かおり、光や風の心地よさ、人々のたたずまい、やりとり、木や塗り壁のあたたかい質感。

風景とは、実にさまざまな要素で成り立っているのですね。

三重県亀山市、東海道五十三次の47番目の宿場として栄えた「関宿」。歴史的な町並みが美しいこの場所で今、「雨音」によってまちの魅力をさらに際立たせる試みが取り組まれています。

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観光客をあてにする観光業やお店。梅雨の季節が早く過ぎればいいな、と眉間にしわを寄せて空を見上げる人も多いことだろう。

しかし、景観の引き立たせ役として「雨」を上手に活用しよう、というこんな事例もある。

三重県亀山市。東の追分から西の追分まで古い町並みがズラリと連なる関宿。ここは東海道五十三次の47番目の宿場として栄えた歴史ある町だ。

他の宿場町が昔の姿を失っていく中で、関宿は今も江戸後期~明治期の町家が200棟以上残っている。国の重要伝統的建造物群保存地区(昭和59年)や日本の道百選(昭和61年)にも選ばれ、地元の人々の不断の努力によって独特な景観は守られてきた。

約1・8キロも続く町並みは実に壮観だ。これだけのボリューム感で古い町並みを体験できる場所は他にはなかなかない。

 

「雨が降ったら関宿へ、と思っていただけたら嬉しい」と、関宿の老舗和菓子屋「深川屋」服部亜樹さんは言う。「関宿番傘プロジェクト」を企画した一人だ。

6月半ばから約一カ月間、雨の日限定で、貸し出された番傘をさした人が参加店舗で買い物をすると割引やサービスが受けられる、という今年初めてのプロジェクト。

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提供:関宿番傘プロジェクト 服部亜樹

「番傘を差す姿は、関宿の風景によく似合います。傘にひいた油のにおいや美濃紙の質感。雨が傘に当たるパラパラという音は、風情をいっそうひきたたせる」と服部さん。「雨の関宿で番傘をさして歩くと、その姿がまちなみに風情を加えてくれます。傘をさす人が景色になるなんて、すてきでしょう」(写真)

服部さんのお店は、漆喰を塗籠めた虫籠窓が特徴的な木造二階建。格式高い庵看板がある「深川屋陸奥大豫」。

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提供:関宿番傘プロジェクト 服部亜樹

販売している銘菓「関の戸」は、寛永年間から380年も同じ方法で作り続けられている。赤小豆のこし餡を白い求肥皮で包み、和三盆をまぶしてあるその和菓子は、ふわりとやさしい食感で、小豆の上品で奥深い風味がたまらない。「関の戸」は鈴鹿の峰に降り積る雪をモチーフに考案されたものだという。

街道沿いには、切妻や平入形の屋根が軒を接して隙間なく並び、虫籠窓に格子戸、足を止めれば繊細な漆喰彫刻や細工瓦が目に入る。職人たちが技をこらして作った美しい装飾が壁や屋根の上などあちこちに見つかる。そして、古い町並みの背後に、鈴鹿の山の稜線が。

ほとんどが民家という点も特徴的だ。古い町並みの中で日常の暮らしが営まれている。 関宿の町は、観光的な景観であると同時に、暮らしの空間でもある。

暮らしの文化を大切に継承してきたまち。しかし「今後、町並みがいつまで維持できるか不安もあります。世代交代で洋風の家屋が増えていくことも考えられる」と服部さんは複雑な表情だ。

だからこそ、古い街道沿いの町並み景観に安住せず、さらに「関宿番傘プロジェクト」のようなユニークな活動を次々に考え出し提案していくのだろう。

番傘を持って訪ねる人の姿が新たな景観を創っていく。そんな柔らかい発想が、とても新鮮だった。

(※「FAX-LINE」2013.7.3に掲載された記事の転載です)