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脱原発 叫ぶだけでは原発依存から抜け出せないと指摘する書

2013年10月29日 00時37分 JST | 更新 2013年12月28日 19時12分 JST

いったい、どこへ向かうのでしょうか。

小泉純一郎元首相が「原発ゼロ」をうたい上げました。三菱重工業、東芝、日立製作所の担当幹部・ゼネコン幹部とともに、フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を見学した結果、あらためてそう結論したのだとか。

「オンカロ」は世界唯一の最終処分場、つまり原発の「トイレ」。地底深い処分場に10万年の間、核廃棄物を保管し続けることで無毒化を目指す計画。

フィンランドの以外の国はすべて「トイレのないマンション」状態。小泉氏の発言は、原発の「エクジットストラテジー(出口戦略)」を考えた上でのゼロ発言、とも伝えられています。

この発言についてテレビ画面で有名な政治評論家が一刀両断。講演する小泉氏を見つつ、「あの顔はもう政治家の顔ではない。ただの一般市民が思ったことを口にしているだけ」と斬って捨てました。

読売新聞も、社説で小泉批判。対して小泉氏も反論を読売紙上に寄稿し、それにまた読売が再反論とバトルが展開中。その間にも日々あふれかえる汚染水。手をこまねいている政府。エネルギー政策について分岐点に立つこの国。否が応でも、今後の進む方向を決めていかなければならないという現実。

いったい何を基準に、どう考えていけばいいのでしょうか。そんな中、考える素材を提供してくれる本が出版されました。

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地域エネルギー発電所 事業化の最前線』(現代人文社 小石勝朗・越膳綾子著)に収録されているのは、全国各地に散らばる公共的な10の事例です。

多摩電力合同会社/上田市民エネルギー/ほうとくエネルギー/小浜温泉エネルギー/湘南市地域自然エネルギー基本条例/世田谷ヤネルギー/北条砂丘風力発電所/飯田市再生可能エネルギー条例/グリーンシティ/市民太陽光発電所

日本各地に、その土地の自然資源で発電する「地産地消のエネルギー発電所」、それを支える基本条例がいくつも生まれている、という現実をどれだけの人が知っているでしょう。まずはその現実に驚かされます。

本書には各々の設立理念、事業の立案・計画の進め方や、資金をいかに調達したのか、ファンドレイジングやプロジェクトファイナンスの運用、地域の人々との連携、人材集め等の実践例が収録されています。

「事業の内容や経緯をできるだけ詳しいデータで紹介するよう心がけた。情緒的な成功物語や地域エネルギー賛歌にとどまらせないために、事業主体からすれば都合の悪い出来事にも触れることにした」(まえがき)

エネルギーの未来について他人まかせの時代は、大震災・原発事故を境に終わりました。一時は派手な動きでもてはやされていた脱原発デモや集会も、最近では世間の話題にすら上らなくなってきています。

「反対を叫ぶだけでは、原発依存社会から脱却することはできない......市民共同発電所をつくった市民の『脱原発のためには身近なところで実践的な一歩を踏み出さないと意味がない』という言葉が印象に残った」(同)

この本は、再生可能エネルギーの将来を見定めようとする人、エクジットストラテジーを考えたい人、地産地消エネルギーで新しい暮らしの形を追求したい人にとっても役に立つ参考書・事例集です。

地域エネルギー発電所 事業化の最前線』(現代人文社 小石勝朗・越膳綾子著)

(※この記事は、2013年10月26日に掲載のNEWSポストセブン「脱原発 叫ぶだけでは原発依存から抜け出せないと指摘する書」から転載しました)