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和菓子の老舗・とらやの77回にわたる挑戦、「虎屋文庫のお菓子な展示77」(下)

2015年06月20日 20時14分 JST | 更新 2016年06月17日 18時12分 JST

和菓子の老舗・とらやの77回にわたる挑戦、「虎屋文庫のお菓子な展示77」(上)では展示の一部を紹介した。(展示は6月17日で終了)

77回の歴史の中には興味深い変化が。虎屋文庫のスタッフにお話を聞いた。

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「虎屋文庫のお菓子な展示77」

77回の展示を振り返ると、伝え方もずいぶん変化してきました、と虎屋文庫専門職の中山圭子さんは言う。

「当初は弊社に関連する資料展示という比較的地味な内容から出発しましたが、80年代半ば頃から、広く和菓子文化全体に目をむけた展示が多くなります。さらに、映像コーナーを作るなど展示の仕方も工夫を重ね、体験コーナーなども設けるようになっていきました」

たとえば、44回の『和菓子と香り展』(1995年)では、肉桂や黒砂糖、桜の葉といった素材の匂いを実際に嗅ぐことができるコーナーを設けたという。また、54回の『寒天ものがたり』(1999年)では、凍結融解させる前の状態の寒天の模型を作って実際にその質感を指先で感じてもらったりしたそう。

今回の展示には、江戸時代のお通箱(菓子を運ぶための容器)もあった。輝く螺鈿細工。そのきらびやかな美しさに目を奪われる。

上蓋には虎の図柄が。しかし、よく観察してみると、あれ? 虎の顔がのっぺらぼうではないか。

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輝く螺鈿細工で虎を表現

「表面が摩滅し、虎の表情はもはやわかりません。それくらい頻繁に、お菓子を届けるのに使っていたのでしょう。」

伝統と革新の挑戦の象徴は「羊羹」にあり

室町時代後期創業という歴史を持つ老舗として、伝統と革新、その両方のバランスをいかにとっていくのかは、大きな課題であり、みんなが知りたい点だろう。

「伝統を大切にしつつ、今何をなすべきか考え、新たなことを生み出す。それが私たちの仕事でもあると思っています。日本食のユネスコ世界文化遺産登録も追い風になってか、小・中学生の教科書に和菓子のことが取り上げられたり、美術の時間に和菓子作りをする学校も増えてきました。もっともっと和菓子を楽しむ機会を増やしていけたら、と思います」と中山さん。

「伝統と革新」の挑戦。

今回の虎屋文庫の活動とは別に、「革新」について具体的に見ることができる現場を、紹介したい。

六本木・とらや東京ミッドタウン店のギャラリーでは2015年8月3日まで企画展「"みらい"の羊羹~わくわくシェアする羊羹~」を開催している。

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とらや東京ミッドタウン店ギャラリーの「"みらい"の羊羹~わくわくシェアする羊羹~」。須藤玲子氏、グエナエル ニコラ氏、渡邉良重氏の3名のクリエイターに ifs未来研究所が企画協力。「ちょっと未来の、和菓子のある暮らし」を思い描きながら、「みらいの羊羹」を創作。

「ちょっと"みらい"の羊羹」を提案する一方、伝統のスタイルを受け継ぎかたくなに守り、「竹皮包羊羹」を販売し続けていく。

「竹の皮は、今や希少な素材になってしまいました。それでも竹皮包みを続けています。300年前の江戸時代の百科事典には、竹皮包みの羊羹の絵が載っています。それを見た方は昔と今がつながっていること、伝統の重みとか日本独自のパッケージ文化、そのユニークさなどを感じるのではないでしょうか」

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竹皮包の羊羹

「和菓子は五感の芸術」

「菓子資料室である虎屋文庫を始めたのは、16代主人の黒川光朝でした。東京帝国大学で日本美術史を研究していたという経歴を持ち、資料の収集、研究・分析、展示の大切さといったことを痛感していたのだと思います。また和菓子を『五感の芸術』と位置づけたのも16代でした。1966年、今から50年ほど前にその言葉を文章に記しています」

「和菓子は五感の芸術」。なるほど、噛みしめると深い。

和菓子は食べて味わうだけでない。細工の美しさ、季節を表現する洗練された、独特のデザイン。微妙な色のグラデーション。

「夜の梅」「若葉蔭」「石清水」「初雁」「薄氷」など菓子に付けられた名前の美しい響き。

菓銘を聞いて耳から涼感を得たり、あたたかみを感じたりできる。音からイメージが膨らんでいく。

そして、口に入った時の質感・食感の楽しみ。甘さ、かすかな塩味、旨み。肉桂やゴマ、柚子などの香り・風味を味わうこともできる。

和菓子にはたしかに、めくるめく五感の世界が潜んでいる。

歴史の保存・継承と、イキイキとした「今」と組み合う和菓子の提案。伝統と革新を積極的に模索し発信してきた虎屋。

虎屋文庫の3年後の展示再開を含め、今後の活動が楽しみだ。

*とらや東京ミッドタウン店ギャラリー「"みらい"の羊羹~わくわくシェアする羊羹~」は2015年8月3日(月)まで開催。

株式会社虎屋/虎屋文庫

〒107-8401 東京都港区赤坂 4-9-22    http://www.toraya-group.co.jp/