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子どもの貧困がない社会とは、今知っておくべき3つのこと

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子どもの貧困問題。テレビのニュースや新聞などでも取り上げられない日はないくらい、注目を集めています。最近では児童扶養手当の増額を決定するなど、政府は対策の強化に乗り出し、2月中には超党派の議員連盟も発足します。貧困解消への動きが広がっています。

子どもの貧困は大きな社会問題、政府が対応すべき。確かにそうです。しかし、このようなニュースで伝えられる対策だけでは十分ではありません。今だからこそ、自分自身や自分の子どもにも関わる問題として、是非3つのことを知ってほしいと思います。


1. 数字とは裏腹に貧困の子どもは見えにくく、孤立しています

日本では6人に1人が貧困家庭の子ども(*1)、という数字をよく目にしますが、単純計算で考えると、30人のクラスに5人貧困の子がいることになります。しかし、本当にそんなにたくさん貧しい子どもが日本にいるのかしら、と実感が持てない方が多いのではないでしょうか。

子どもの貧困率は地域によってかなり偏りがあることが最近の調査で分かってきています。都市部でも地域によって貧困の子どもの数には大きな差があります。最近では、沖縄の子どもの貧困率が29.9%(*2)の高水準であることが公表されました。もしかしたら、あなたの住んでいる地域には貧困の子どもが少ないため、実感が持てないのかもしれません。

日本などの先進国では、所得が低くてもガリガリに痩せてボロボロの服を着ているような状況になることはあまり考えられません。見た目ではわかりにくいものです。むしろ子どもは自分の家庭の貧しさを隠しているかもしれません。

ある学習支援団体での出来事を聞きしました。

その団体では、勉強の後に子どもにおやつを出しています。そこには、「おやつはいらないよ」と遠慮する子どもがいたそうです。それでも大人が勧めると、最初は遠慮していた子が、3つも4つも菓子パンを一気に食べたそうです。

自分の子どもだったらどうでしょうか。私の子どもだったら、学校から帰って来るなり
「お腹すいた!おやつちょうだい!」
とおやつをせがみます。よその家に行っても、おやつをもらったら、そのまま素直に喜んで食べています。

本当だったら、子どもは素直に振る舞っていいはずなのに、お腹がすいているのを我慢して遠慮してしまう、そういう子どもたちの孤独をどうやってすくいあげていくことができるでしょうか。子どもの貧困問題はただの経済的な問題だけでなく、様々な問題を抱えています。


2. 国の対策だけではなく、私たちが何をするかという問題です

私は現在オランダに住んでいます。オランダの子どもの貧困率は5.9%(*3)。日本とだいぶ差がありますが、日常生活の中でその差について何か実感するようなことはあまりありません。でも、オランダに住んで思うのは、子どもが誰に対しても素直であるということです。

ある時私は、道端で12、3歳くらいの女の子に声を掛けられました。
「私の携帯電話が壊れてしまったみたいで、待ち合わせの友達と連絡がつかず、会えなくて困っています。友達に電話をかけるために、携帯電話を貸してもらえませんか。」

また別の日には10歳くらいの男の子が、車に乗っている私に向かって手を挙げて、止まってくれるように頼んでいるようでした。
「今僕は急いでいるんです。この通りの先まで車に乗せてもらえませんか。」

私は内心戸惑いましたが、見知らぬ東洋人のおばさんに声を掛けてくる子どもたちは特別変わったことをしているつもりはないようです。その素直な気持ちに応えなくてはならない気がして、女の子に携帯電話を貸し、男の子を車に乗せてあげました。彼らにとって、私の対応も当たり前のことだったようです。
「ありがとう!」
と言って、そのまま去っていきました。

子どもが周囲の大人に助けを求めることも普通のことで、大人がそれに応えることも普通のことだと私は感じました。

私の幼い娘がスーパーや電車の中など、人がたくさんいる中で泣いていると、周りの人が
「かわいそうに。どうしたの?」
と娘に笑顔で声を掛けてくることが頻繁にあります。娘は意外にも周りの人の注目を浴び、時にはお菓子などを知らない人から渡され、泣いているどころでなくなってしまうようです。

子どもは笑顔でいないとね。気難しそうな初老の男性も派手なメイクの若い女性もそう思っているようで笑顔を向けてきます。

他愛のない出来事、話が逸れてしまったと思われたかもしれません。

でも、子どもを大切にする社会は、「あなたのことはみんなで助けてあげるから、大丈夫よ」というメッセージが行き交う出来事にあふれていると思いました。家庭や学校だけでなく、社会全体で、大人が子どもを助けようという気持ちでいる。そういう社会にならないと、お腹がすいていてもおやつを遠慮してしまうような、声を上げられない貧困の子どもを助けられないのではないでしょうか。


3. 「子どもがど真ん中」の新しいチャレンジが始まっています

2015年6月に子どもの貧困対策センター一般財団法人「あすのば」という団体が設立されました。この団体は「子どもがど真ん中」というコンセプトのもと、貧困やひとり親世帯を経験してきた学生たちも運営に参加し、今までにない新しい支援の仕組みを構築しようとしています。

現在、あすのばでは「ここにいるよ。」というプロジェクトに取り組んでいます。これは、孤立している貧困の子どもたちに、「あなたに想いを寄せている人がいる」というメッセージを伝えようと、広く一般の方から寄付を募り、直接的経済支援を行うというものです。

給付は「入学・新生活応援給付金」として、支給します。喜ばしいはずの子どもの入学や新生活は、貧困家庭にとっては、準備が経済的負担となっています。多くの人があなたの入学や新生活を祝っている、ということを、給付金を通じて届けようとしています。

学生たちによる街頭募金活動、ニュースや新聞などのメディア露出、いろいろな形でプロジェクトの周知活動を行ってきました。1月にはハフィントンポスト日本版でも記事が掲載されています。

・あすのば学生理事インタビュー記事
「塾に行く子に負けたくない」子どもの貧困から抜け出した内山田のぞみさん

・「ここにいるよ。」プロジェクト紹介記事
2016年の春は特別な春にしよう。想いを寄せる人がいると日本の子どもへ、エールを

1月15日段階では募金金額201万円でしたが、2月8日現在では420万円にまで大きく金額を増やしています。ハフィントンポスト読者の方からの支援メッセージもいただきました。関心の高い方が多いことにとても励まされています。すでにご協力いただいた方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

現在、給付受給申込手続きが開始され、応募が集まり始めています。募集締め切りは2月末日、その後書類審査を行い、3月中に対象者へ支給します。

実際に支給できる人数には限りがあり、1回限りの現金給付です。効果を疑問に思われる方もいると思います。確かに問題の大きさに比べれば小さい支援かもしれません。

しかし、あすのばでは、これをスタートと考えています。給付対象の子どもに合宿などのイベントへの参加を通じて、子どもを孤立させないつながりを作り、彼らの声を直接聞く機会を設けていきます。そのような声を反映し、制度の改善、他の支援方法の検討など、次のステップへつなげていきます。

あすのばは、1人でも多くの子どもに給付金を支給するため、2月末まで寄付の募集を継続します。

多くの人の手がすべての子どもにいつも差し伸べられている。それが当たり前になる社会が実現すると思いませんか。

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子どもの貧困対策センター あすのば
入学・新生活応援給付金「ここにいるよ。」プロジェクト 寄付申込フォーム
(通信欄に「ここにいるよ。」プロジェクト宛、とご記入を)

子どもの貧困対策センター あすのば Facebookページは、こちら

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*1 厚生労働省 2014年
*2 イノチェンティ レポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版 2013年
*3 2016年1月公表の沖縄県による調査

野口由美子(ブログ Parenting Tips

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