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なぜ日本はいじめが多いのか? 誰も語らない要因

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昨年の7月、岩手県の中学校2年生、松村亮君が、いじめを苦にして電車に飛び込み自殺した事件は、記憶に新しいと思います。担任とやり取りしていたノートに、松村君はいじめを受けていたことや自殺を暗示する内容を書いていました。でも、担任は松村君の両親に連絡をすることはなかったそうです。そして、「もう死ぬ場所はきまってるんですけどね」という彼の訴えに対して、「明日からの研修たのしみましょうね」とコメントしたのです。

松村君の自殺はトップニュースとして報道され、大きな衝撃を与えました。13歳の子どもがSOSを発信していたのにも関わらず、いじめを苦にして自殺したのですから、多くの人がショックを受けたことでしょう。でも、もっと驚くべきことは、このような事件が頻繁に起こっているということです。

いじめの件数は増え続けています。文部省の調べによると、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は18万8,057件で、前年度より、2,254件増加。いじめを認知した学校の割合は、全学校の56.5%でした。

なぜ、こんなにいじめが多いのでしょう?

政府も専門家も問題の複雑さに圧倒され、解決策を見い出せないでいます。学校の問題か家庭の問題か、という批判的な討論からは問題の本質は見えてこないでしょう。なぜなら、いじめは社会全体の問題であり、大人である私たちひとりひとりに責任があるからです。いじめをなくすには、誰も語ろうとしない要因に向き合う必要があります。

それは、日本は「溶け込めない人間」に対して、非常に冷たい社会だということです。

日本社会では、周りと合わせることや集団の中で生きていくことが重要視されます。お互いの違いよりも似ていることが評価され、個性よりも調和が大切だと教えられます。周りに馴染めない場合、集団の中で孤立するか、もしくはその集団から取り除かれて、違う集団に入れられます。

その例が、障がい児教育です。欧米では当たり前な「インクルージョン・クラスルーム(健常児と障がい児が一緒に学ぶクラス)」は日本にはありません。障がい児は健常児と離され、特別支援学校に通うのが一般的です。彼らは幼い頃から、社会のメインストリーム(主流)から取り除かれるのです。

そして、周りとちょっと違う子どもたちや、個性的な子どもたちは、一般の学校に通いながら孤独を感じることになります。セクシャルマイノリティーの子ども。ハーフの子ども。学習障がいのある子ども。貧困の子ども。親の死や離婚で、家庭環境が複雑な子ども。このような子どもたちがいじめのターゲットになりやすいのは、言うまでもありません。

私の兄は、周りになかなか溶け込むことができない子どもでした。繊細で大人しかった兄は、中学校でいじめられるようになりました。顔を殴れられて学校から帰って来たりしてましたから、小学生だった私にも、兄がいじめられていることはわかりました。でも、担任は兄のことを信じなかったのです。いじめっ子は優等生でクラスの人気者。担任は、集団に溶け込めない兄よりも、優等生の言い分を信じたのです。

子どもが「いじめられている」とか、「死にたい」とか、「もう限界だ」と訴えたとき、大人はそれを真剣に受け止める義務があります。問題を解決しようとしたり、誰かを批判したり、アドバイスをするのではなく、まずは、子どもの話を親身になって聞くことが大切です。子どもは、「どうしたら学校に行けるようになるか」や「どうしたらいじめられなくなるか」というようなアドバイスを求めているのではありません。安心して気持ちを打ち明けられる人に、感情を受け止めて欲しいのです。

いじめを減らすためには、社会の問題と向き合う必要があります。お互いの違いを尊重し、支え合うことを子どもに教えるためには、まずは大人がそれをしなければいけないのです。溶け込めない人、困っている人、助けが必要な人に、やさしい社会を築く必要があります。子どもに起こっていることは、社会の問題を反映しているのです。

そして最後に、子どもたちに伝えておきたいことがあります。

もし、あなたが学校でいじめられているとしたら、それはあなたのせいではありません。「もっとこうすれば、いじめられなくなる」と周りは言うかもしれません。もっと自分に自信をつければいいとか、もっと意見を言えるようになればいい、とか。でも、変わるべきなのはあなたではなく、いじめをしている人たちです。あなたは、自分らしく生きてゆけばいいのです。

ひとりで悩まず、誰か信頼できる人に話してみてください。誰にも話せない場合は、チャイルドラインに電話をください。匿名で相談ができます。助けを求めるのは、弱さではなく、勇気のある証拠です。

いじめっ子に対して、一番の復讐は自殺することだと思っているのなら、もう一度よく考えてみてください。あなたの死は、あなたのことを愛している人にのみ悲しみをもたらします。死ぬことではなく、生き続けることこそが、あなたを苦しめる人たちを悩ませるでしょう。生き抜いてください。

今は、真っ暗なトンネルを歩いているような気持ちかもしれません。先が見えずに不安でも、希望を失わないでください。感情は必ず変わるものです。つらい気持ちも苦しみも、一生続くわけではありません。どんなに長いトンネルでも、必ず出口には光が見えるはずです。

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(2016年2月9日「佐藤由美子の音楽療法日記」から転載)

【佐藤由美子】

米国認定音楽療法士。ホスピス緩和ケアを専門としている。米国ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間勤務し、2013年に帰国。著書に「ラスト・ソング 人生の最後に聞く聴く音楽」(ポプラ社)がある。

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