勉強したい人が求めるのは、「豊富な学習コンテンツ」ではなく、「信頼できるたった一つの学習コンテンツ」

私は多くの学生や社会人が、「Webで効果的に勉強している」と言う話を寡聞にして知らない。実は、その理由は経験的には明らかである。
Phil Boorman via Getty Images

近年、カーン・アカデミーを始めとする学習系のwebサービスが数多く出現しており、国内でも数多くのサービスがある。

どのサイトもよく出来ている。おそらく20年前と比べて、「勉強したい人」が手にすることの環境は、格段に良くなっていることだろう。

インターネットにアクセスさえすれば、あらゆる学習教材が存在し、そのどれも工夫が凝らされている。

それにもかかわらず、私は多くの学生や社会人が、「Webで効果的に勉強している」と言う話を寡聞にして知らない。

実は、その理由は経験的には明らかである。

独習を開始する時、人が最初に頭を悩ませるのが、「学習教材」であることは間違いない。

だが、「勉強したい人」がどのように学習コンテンツを選択するのか、ということに関しては20年前からあまり進歩していない。

20年前は、「勉強したい人」が手にすることの出来たのは、殆どの場合書籍や参考書であった。

「勉強しよう」と思った人が本屋を訪れると、そこには無数の参考書やら書籍やらが存在し、その状況ですら、どれを手にとったらいいか・・・、という状況だった。

そして、多くの人は「教師」や「友人」からの紹介によって、教材を選択した。

そして、それは今も変わらない。

だが、インターネットにアクセスすると、無数の資料やら動画やら、サービスやらが存在し、どれを手にとったらいいか判断をするのは不可能である。

「ネット上の評判」もどれが真実で、どれがウソなのか、区別をすることは難しい。

実際、若手社会人、大学生、高校生、中学生ら、「勉強しなければいけない」人々は、インターネット上の学習コンテンツの使い方に困っている。

学習はSNSやゲームなどの他のウェブサービスと異なり、「効果を体感」することに恐ろしく時間がかかる。

「なにか違うな・・・この参考書は変えようかな」

と思った頃には、すでに莫大な時間を費やすことになっており、変更は難しい。

だから、「勉強したい人」は、非常に保守的だ。どうせなら、一番信頼の置ける教科書で勉強したいと考えるのだ。

多くのコンテンツをちょっとずつ噛じって・・・、くらいの知識であれば「豊富なコンテンツ」ということに惹かれるかもしれないが、そこで得た知識など、放課後のおしゃべりや飲み会のネタになるくらいである。

せいぜい「雑学」である。

現場の感覚として、生徒らが最も気にするのは、「これをやっておけばまず大丈夫」という保証である。

本当に「勉強」し、きちんと知識を使いこなすのであれば、「勉強したい人」が求めるのは、「最も信頼のおける、実績あるコンテンツ」に他ならない。だから、「先生の勧める」参考書で皆勉強する。

事実、勉強に関して学校や塾の先生が一番受ける質問は、「とりあえず、どの参考書をやっておけばいいですか?」という質問だ。

「自分で勉強できる」一握りの生徒や社会人にはWebコンテンツも良いかもしれない。「豊富なコンテンツ」という切り口も、もしかしたら魅力的に見える可能性もある。

しかし、殆どの人物にとっては、「コンテンツが豊富」なのは、特にありがたい話でもない。

勉強したい人が求めるのは、「豊富な学習コンテンツ」ではなく、「信頼できるたった一つの学習コンテンツ」なのだ。

・2013年11月21日 Books&Apps に加筆修正

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