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フェイスブックの「ニュース配信サービス」、世界の有力メディアが一斉になびく一方で日本のメディアは沈黙

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ASSOCIATED PRESS
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フェイスブックの「ニュース配信サービス」、世界の有力メディアが一斉になびく一方で日本のメディアは沈黙

世界のパブリッシャーが、フェイスブックの手のひらの上で踊らされてしまうのでは・・・。世界の有力なニュースメディアがこぞって、フェイスブックのモバイル端末対応のニュース配信サービス「インスタント・アーティクルズ(Instant Articles)」に参加し始めたからだ。

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図1 世界の有力パブリッシャーが雪崩現象のように、フェイスブックの新しいニュース配信サービス「Instant Articles」と提携している。すでに350以上のパブリッシャーが契約している。ただし日本のパブリッシャー名が見当たらず、いまのところ蚊帳の外に。

フェイスブックは今年5月から、NYTimesやBBCなど選りすぐりの欧米ニュースメディアと提携して、インスタント・アーティクルズ(IA)の実験サービスを開始していた。そして今秋からは、より多くのパブリッシャーを加えて、iPhone ユーザーに向けてほぼ本番に近いサービスに入った。さらに、Androidにも対応してサポート体制が整ってきたのか、新興国の有力パブリッシャーとも組み、グローバル展開にも突入した。2週間ほど前にインドでのサービス開始を皮切りに、アジアや南米各国でのサービスが今まさに離陸しようとしている。

そのグローバルでのサービス展開は、思っていた以上に速いペースで進んでいるようだ。米国ではNYTimesやBuzzFeed、Washinton Postなどの主要パブリッシャーがほとんど契約し、英国でもBBCやGuardianに続いて Daily Telegraph, Independent, Sun, Daily Mail など著名な13パブリッシャーが一斉に契約した。実際に、筆者のニュースフィードでもこの2週間くらい前から、米英の有力パブリッシャーがフェイスブックに投稿したIA対応の記事を見かけるようになってきた。さらに驚くことに、後発と思っていた新興国の大手パブリッシャーの幾つかは、IA対応の記事をすでに発信しているのだ。この1週間で見つけたニュース記事例のスナップショットを、図2、図3、図4に掲げておく。先進国だけではなくてアジアでも、インドをはじめ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイなどの各国で、地元の有力パブリッシャーと提携してすでに走り出しているのだ。さらに、近く開始すると発表した南米や、未発表のオーストラリアやニュージーランド地域の一部パブリッシャーまでも、見切り発車のようにIA対応の記事をすでに発信しているのである。

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図2 IA対応の記事例。米国に次いで世界第2位のフェイスブック人口を誇り、今後も急拡大が間違いないインド市場でのIA普及に、フェイスブックは非常に力を入れている。図左はインドの著名なパブリッシャーAaj Tak、図右は同国トップの英語版ニュースメディアIndiatimes。赤丸で示した稲妻マークで、IA対応の記事であることをユーザーに知らせている

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図3 IA対応の記事例。図左はフィリピンのパブリッシャーGMA News、図右は中国の国営メディアのCCTVNews。CCTVは、12月16日世界インターネット会議で習主席がネット規制の正当性を主張した講演のニュースを、3倍以上拡散するといわれるIA対応にして投稿した。

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図4 IA対応の記事例。左はブラジルのパブリッシャーCatraca Livre、右はオーストラリアのパブリッシャーSydney Morning Herald

このように、世界中のパブリッシャーがどうしてほぼ同時に、フェイスブックの新しいニュース配信サービスになびいたのだろうか。どうも見境もなく飛びついるのではないようだ。IAサービスで提携しているパブリッシャーは前々から、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックを積極的に活用していたのである。これまで各パブリッシャーはフェイスブックページを設け、そこにニュース記事をリンク情報(リンクシェア)の形で投稿していた。その記事がファンのニュースフィードに掲載されたりしていたのだ。この2~3年の間にフェイスブックページのファン数を急増させ、投稿記事が一段と拡散するようになっていた。その結果として、大量のトラフィックがパブリッシャーサイト(ホームページ)に流入するようになった。つまり、世界の有力パブリッシャーの多くは、フェイスブックのプラットフォームに大きく依存しているのである。

確かにIAサービスに参加している有力なパブリッシャーは、図5に示すように、それぞれ自分たちのフェイスブックページで多くのファンを抱えている。参考までに図6に示した日本の代表的なマスメディアと比べても、桁違いに多いのがわかる。

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図5 IAに参加している著名なパブリッシャーが抱えるフェイスブックページ・ファン数。先ほど、IAの参加が明らかになったアフリカのパブリッシャーでも、ナイジェリアのNaij.comが2,840,000万人、ケニアのStandard Media Groupが1,070,000人と、かなりのファン数を獲得している。さらに有力なパブリッシャーともなると、人気の高いフェイスブックページを複数持っている。

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図6 日本の代表的なマスメディアが擁するフェイスブックページ・ファン数。

フェイスブックのプラットフォームに大きく依存している様子を、BBCの例で見てみよう。2500万人以上のファン数を誇るフェイスブックページBBC Newsを看板にし、それ以外に地域別や言語別、カテゴリー別にも数多くのフェイスブックページ用意しており、多くのファンを獲得している。BBC Brasil(ファン数が1,876,171人)、BBC Persian(同2,750,583人)、BBC Burmese(同3,777,108人)、BBC Hindi(同3,895,132人)、BBC Bangra(同6,357,641人)、BBC Nepali(同2,388,154人)からも分かるように、世界で万遍なく浸透しているフェイスブックを活用して、地域別や言語別に記事を配信しているのである。カテゴリー別でもBBC Sportのフェイスブックページが話題になっている。若年層を中心にファン数を8,461,256人にも急増させたお陰で、フェイスブックからBBC Sportのホームページへのトラフィックが、昨年9月に週間3万5000件しかなかったのが、今年9月には週間で370万件と100倍以上になった。

また新興国のパブリッシャーもフェイスブックへの依存を高めている。英語新聞として世界トップ級の発行部数を誇るインド Times Internetが旗艦ブランドとするIndiatimesも、400万人以上のファンを抱えるフェイスブックページを背景に、フェイスブック経由で世界中から多くのトラフィックを流入させている。NewsWhipの今年10月の調査結果によると、Indiatimesのニュース記事は、月間でLike数が9,999,468件、Share数が3,751,711件、Comment数が978,385件ものアクティビティを得ていた。欧米のトップクラスのパブリッシャー並みに、フェイスブック上で記事を拡散させているのだ。

このように、世界の大半の国の主要パブリッシャーはすでに、多くのファンを擁するフェイスブックページをバックに、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックを活用している。こうした下地があるからこそ、その延長上での新しいモバイル端末対応ニュース配信サービス「インスタント・アーティクルズ(IA)」を打ち上げられ、世界の主要パブリッシャーが一斉にIAサービスに走りだせる態勢を整えることができたのだ。

これまでパブリッシャーが彼らのフェイスブックページに投稿していたニュース記事はあくまでリンク情報で、その記事本文を読むためにはパブリッシャーのサイトに飛ばなければならなかった。お陰でパブリッシャーにとっては有り難いことに、あまりコストをかけないでも、フェイスブックから多くのトラフィックを流入してもらえていた。でもモバイル環境でのユーザーエクスペンスとしては、ユーザーが記事本文を読むのに、わざわざパブリッシャーサイトに飛ばさせ、時には10秒近くも時間をかけさせるようなことは、許されなくなってきた。

そこでパブリッシャーに投稿させるニュース記事を、これまでのリンク情報ではなくて、記事本文に切り替えていくこうとして、ニュース配信サービスIAをフェイスブックが打ち上げたのだ。パブリッシャーの記事本文がフェイスブック内にホストされるため、パブリッシャーサイトに飛ばなくても済む。フェイスブック内で即座にニュース記事全文が読めるようになる。ユーザーにとって有り難いことだ。ニュース記事をIA対応にするとサクサクと記事全文も読めるようになり、その結果ニュース記事の閲覧数も増えるので、パブリッシャーにとってもメリットが大きいと、フェイスブック社は主張している。

NewsWhipがNYTimesの投稿ニュース記事を対象に調べた結果によると、リンク情報の記事よりもIA対応のニュース記事のほうが、Share数で 3.5倍、Like 数で2.5倍、Comment数で5.5倍と、平均エンゲージメント率がぐんと高まっていた。つまり、リンク情報からIA対応(記事全文をホスティング)に変えると、より多く閲覧されるようになるということだ。にもかかわらず、NYTimesはリンク情報のニュース記事を今でも多く投稿している。自サイトへのトラフィックを減らしたくないためであろうが、またIA対応の記事では編集や広告フォーマットでフェイスブックによって規制が課せられることも、全面的なIA対応記事へのシフトを鈍らせているようだ。

ところがWashington PostはもっとIAに入れ込んでいる。NYTimesより遅れて秋からIAサービスに参加しているが、フェイスブックに投稿するニュース記事を、リンク情報ではなくて、すべてIA対応とした。この結果、フェイスブックからWashington Postサイトへの参照トラフィックは減るのだが、フェイスブックにホストしたニュース記事(全文)へのトラフィックが新たに生まれることになる。

Washington Post記事の総閲覧数=
Washington Postサイトでの閲覧数+外部プラットフォームでの閲覧数

となるので、第1項の閲覧数が減ったとしてもそれ以上に第2項の閲覧数を増やせれば、Washington Post記事の総閲覧数(トラフィック)が増えることになる。実際、第2項に相当するIA対応記事などの外部プラットホームでの閲覧が増えたことにより、Washington Postのトラフィックを大きく底上げすることになった。その結果、今年10月にWashington Postの月間訪問者数が6690万人となり、6580万人のNYTimesを初めて追い抜いた。さらに11月には7160万人と急伸し、NYTimesとの差を拡大させ、トップ3との差を縮めた(図7)。IAサービスの積極的な取り組みが、勢いづけていると見てよさそうだ。

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図7 米ニュースサイトの月間訪問者数(マルチプラットフォーム)ランキング。comScoreの2015年11月調査。米国ユーザーが対象。いずれも、膨大なファン数を獲得したフェイスブックページを持ち、それをベースにIAサービスにも参加している。最も積極的なWashington Postの伸びが際立っている

IAサービスを巡って現在も、水面下でフェイスブックとパブリッシャーの間の激しい綱引きが繰り広げられており、まだ課題も多く残されている。それでもともかく、世界のほとんどの国の主要パブリッシャーがIAに参加しているのである。でも日本の伝統的なニュースメディアは、フェイスブックが海外に比べあまり普及していないこともあり、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックをあまり重視してこなかった。このため、IAにまだ参加していない。国内市場ならそれでも構わないが、グローバルなメディア展開を目指すとなると参加を検討する必要がありそう。

◇参考
Instant Articles Launches to Everyone on Android, with More Than 350 Publications Globally(Facebook)
Facebook Instant Articles: More Media Partners, More iPhone Users Coming(Adweek)
Facebook signs up a further 13 UK publishers for its Instant Articles(Drum)
Facebook Partners With 50 Publishers To Launch Instant Articles In Asia(Techcrunch)
Is Facebook Driving Less Traffic to Publishers' Sites?(WSJ)
The Washington Post continues to see explosive growth, breaks yet another record with 71.6 million users in November(Washington Post)
Facebook Bends to Publishers, Tweaks Instant Articles Advertising(WSJ)
"Why not be all the way in?" How publishers are using Facebook Instant Articles(NiemaLab)
Facebook Instant Articles rolls out across Asia(Facebook)
Fairfax first local publisher to partner Facebook Instant Articles
(AdNews)

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2015年12月20日「media pub」より転載

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