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バイラル記事が氾濫、バイラルメディア・サイトが打つ次の一手は

2014年08月13日 00時09分 JST | 更新 2014年10月12日 18時12分 JST

米国のバイラルメディア・ブームはまだ峠を越えていないようだ。

フェイスブックにおけるパブリッシャーサイトのバイラル度ランキングを、メディア分析会社NewsWhipが発表しているが、その最新版(7月データ)で米国のバイラルメディアの動向を探ってみた。記事のバイラル性の指標としては、Interaction総数(=Comment数+Share数+Like数)を用い、各パブリッシャーサイトについて1か月間に投稿した全記事のInteraction総数(表のTotalFB)をはじき出している。トップ25のパブリッシャーランキング表を、最新の2014年7月版に加えて10カ月前の2013年10月版も以下に掲げた。

図1

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(ソース:NewsWhip)

トップ25のInteraction総数は14年7月には2億6240万件となった。13年10月の1億3840万件の約2倍である。トップ25のパブリッシャーが配信した記事本数総計はほとんど変わっていなかったので、この10カ月の間に、記事1本当たりのInteraction総数が約2倍になったことになる。バイラル記事に特化したバイラルメディア・サイトがトップ25に新たに登場してきたことが大きいが、新聞やTV系の伝統メディアサイトもフェイスブックで拡散しそうなバイラル性の高い記事を意識して発信するようになったことも無視できない。

トップのHuffingtonPostは生粋のバイラルメディアと言うよりも新興のニュースメディアであるが、この10か月間でInteraction総数を2.5倍に増やしたことからも分かるように、バイラル記事の提供に力を入れている。例えば7月の初めにはバイラル記事の定番である絶景写真のリスト記事を投稿していた。"The Top 50 Cities to See in Your Lifetime"は、100万件以上のLike数と20万件以上のShare数を得ており、かなりのトラフィックをフェイスブックから呼び込んだようだ。どうもこれは旅行コミュニティー会社のネイティブ広告のようである。

図2

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高級新聞とも言えるGuardian も、Interaction総数を昨年10月の458万件から今年7月には1061万件と倍以上に増やした。最近では、パレスチナやウクライナ、イラクのような紛争関連記事が以前に増してフェイスブック上でも議論されるようになってきている。次の記事"'The world stands disgraced' - Israeli shelling of school kills at least 15"も見出しと写真で読者の感情に訴え、25万件のInteractionを獲得した。このような悲惨なストレートニュース記事でも、7月のフェイスブックのバイラル記事トップ100に入るようになってきた。

図3

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フェイスブックで話題になるバイラル記事を盛んに配信しているサイトとなると、やはり目立つのはBuzzFeedに代表されるバイラルメディア・サイトである。今も新規参入が続いているが、一方で淘汰も始まっている。先のパブリッシャーランキング表に選ばれているトップ25の顔ぶれを見ても、バイラルメディアの場合、浮き沈みが激しい(図1の黄色で示したパブリッシャー)。昨年10月と今年7月の両月に顔を出しているサイトはbuzzfeed.comだけであった。昨年末からトップ25の常連であったupworthy.comやdistractify.comは、7月にランク外に落ちた。

 逆に最近トップ25入りしたバイラルメディアの新顔としては、次のようなサイトが浮上してきている。

・ijreview.com:保守系政治ニュース

・iflscience.com:サイエンス分野特化

・elitedaily.com:Y世代向けHuffingtonPost

・boredpanda.com:バイラルフォトが中心(本社がリトアニア)

・playbuzz.com:クイズコンテンツが中心

playbuzzは7月に外れたが、最近Interaction総数が100万件を超えるクイズコンテンツを連発しているので、8月にはトップ25の上位に返り咲くと見られている。

 興味深い流れとしては、ijreview.com、iflscience.com、elitedaily.comのように、カバー分野や対象ユーザーを絞って、"売り"を明確にしたバイラルメディアが勢いを増していることだ。iflscience.comはサイエンス分野のバイラルメディアで、たとえば最近では今話題のスーパームーンの記事がフェイスブックで25万件のShareを得ていた。また同サイトのフェイスブックページには1775万人からのLikeを得ているように、米国に多いマニアックなサイエンスファンを虜にしているようである。

図4

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図5

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 こうした個性あるバイラルメディア・サイトの寿命は比較的長いかもしれないが、この1年近くの間に雨後のタケノコのように湧き出たバイラルメディア・サイトは厳しい競争にさらされ始めている。多くのサイトから配信されるバイラルビデオとかバイラルフォトとかクイズコンテンツがネット上に溢れかえっており、また同じ素材を集めた似通ったリスト記事も目立って増えてきている。それでも今のところバイラルメディア・サイトの熱気はまだ続いている。Quantcastが米国ユーザーを対象にした調査によると、トップ25から外れたupworthy.comもdistractify.comも、モバイルWebブラウザーからの月間ユニークユーザー数は次のようになっており、まだ健在と言える。

buzzfeed.com 48,406,448

playbuzz.com 24,155,696

distractify.com 15,800,889

ijreview.com 12,177,381

upworthy.com 11,902,440

(公表されているバイラルメディア・サイト)

ただバイラルメディアも、今のようなコンテンツだけでは食傷気味となりいずれユーザーの熱気も冷めてしまうだろう。これまでのバイラルメディアが主対象としなかった、政治やサイエンスなどの分野に絞ったサイトが登場してきたのも、その対策であろう。そしてついに、バイラルメディア市場で質的にも量的にも独走しているBuzzFeedまでも、これまでのバイラルメディアからの脱皮を宣言したのだ。

BuzzFeedの目玉記事は、クイズコンテンツや、ペットや絶景などを対象にしたリスト記事であった。ニュース記事なども力を少し入れ始めていたが、実際には付け足しの脇役的な存在でしかなかった。新しいBuzzFeed編集では、これまでのバイラル記事(Buzz)と一線を画したニュース記事(News)とライフ記事(Life)も配信していくという。編集チームも独立した、BuzzTeam、BuzzFeed News, BuzzFeed Lifeに分かれる。BuzzFeedのニュース記事やライフ記事が、新聞やテレビの伝統メディアと競合するのは必至である。人も資金も本格的に注ぎ込むようだ。これまで培ったバイラル編集を活用したニュース記事となるはずだ。

対する伝統メディアも、冒頭で触れたようにフェイスブックでのInteraction総数を増やす記事を多く配信しようとしてきている。つまりニュース記事のバイラル化に注力し始めている。BuzzFeedが目指そうとするニュース記事と同じなのかもしれない。

図6

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◇参考

The Biggest Facebook Publishers of July 2014(NewsWhip Blog)

保守系政治ニュースのバイラルメディア「IJReview」、米国で一気に頭角を現す(メディア・パブ)

Higher-Brow Viral Media Site Ozy Gets to 3 Million Uniques a Month(re/code)

With $50 million, BuzzFeed growth calls for sharper lines between news and the other stuff(Nieman Journalism Lab)

2014年8月13日「メディア・パブ」より転載)