中国で深刻化するPM2・5、国境越えトラブル―日中韓で防げるか

日本、中国、韓国で環境分野の連携を図るための日中韓3カ国環境相会合が5日、北九州市で始まった。今年は15回目。中国で深刻化し、日本にも影響が及んでいる微小粒子状物質PM2・5など、大気汚染問題の対応などを協議。最終日の6日には、大気汚染に対して3カ国の協力態勢を強化することを盛り込んだ共同声明を発表した。
Traffic makes its way through heavy smog in Beijing on October 26, 2012. The US embassy's Beijing air-quality pollution monitor was recording a particulate matter (PM2.5) index of 343, or 'hazardous'. AFP PHOTO / Ed Jones (Photo credit should read Ed Jones/AFP/Getty Images)
Traffic makes its way through heavy smog in Beijing on October 26, 2012. The US embassy's Beijing air-quality pollution monitor was recording a particulate matter (PM2.5) index of 343, or 'hazardous'. AFP PHOTO / Ed Jones (Photo credit should read Ed Jones/AFP/Getty Images)
Getty Images

日本、中国、韓国で環境分野の連携を図るための日中韓3カ国環境相会合が5~6日、北九州市であった。今年は15回目。中国で深刻化し、日本にも影響が及んでいる微小粒子状物質PM2・5など、大気汚染問題の対応などを協議。最終日の6日には、大気汚染に対して3カ国の協力態勢を強化することを盛り込んだ共同声明を発表した。

産経ニュースは以下のように伝える。

「3カ国で取り組む基盤としての役割が期待されている」。微小粒子状物質「PM2・5」による大気汚染などについて議論した日中韓の環境相会合。北九州市で開かれた会合後の6日、共同記者会見で石原伸晃環境相は「解決へ向けた新たな第一歩を踏み出したと評価したい」と話した。

産経ニュース 2013/5/6 19:08)

尖閣諸島や竹島をめぐる領土問題や日本の閣僚の靖国神社参拝などの外交問題などで開催が危ぶまれたが、石原氏は「政治状況にかかわらず会合が開催され、実りある議論ができたことは意義深い」(産経ニュース)と前向きにとらえている。

ただ、大気汚染対策について即効薬があるわけではない。そもそも発生の原因も(1)急速な工業化、(2)都市化による偏りのある産業分布、(3)石炭の使用などがあり、複雑に絡み合ってあってもいる。根底には中国の経済成長の歪みがあるともいえ、一筋縄ではいかない。

今回の会合では、新たな対策会議の新設で3カ国が大筋で合意した。共同通信は以下のように伝える。

日本の政府関係者によると、微小粒子状物質「PM2・5」を中心とする大気汚染対策で、3カ国の政府高官による対策会議を新設することで大筋合意した。日中両国民などに広がった健康不安の払拭につなげる狙いがあり、国同士が対話を重ねるスタンスを強調する。

共同通信 2013/05/06 02:06)

大手メディア各社は、中国側が「大気汚染防止法の厳格化や国内のモニタリングポスト増設、石炭消費の総量規制などを例示し、環境改善に向け日本と韓国に協力を呼び掛けた」(朝日新聞)と報じているが、いずれも時間のかかることは間違いない。

日本にとってとりわけ心配なのは、偏西風に乗って中国から飛来する汚染物質だ。特に最近懸念されているのは微小粒子状物質PM2・5だ。肺がんやぜんそくを引き起こす恐れがある。

西日本各地で普段の濃度を超える値が観測されているが、今のところ、汚染物質の飛来は健康に影響が出るレベルではないという。国内でとりうる対策は、基本的にはモニタリング体制の強化と国民への迅速で適切な情報提供だ。モニタリングで観測したデータを充実させていけば、中国側に汚染対策を要請する根拠にもなる。

東アジアの世界第2、3位の経済大国と韓国が直面する国境なき大気汚染問題。領土や歴史の問題を乗り越える逆転の発想で対処できないものか。

注目記事