トヨタ、最高益も視野

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営業利益の計画は市場予測に2500億円ほど届かないものの、為替の前提を慎重に置いており、足元の円安が続けば08年3月期の過去最高益も視野に入る。

トヨタが8日に発表した14年3月期の連結営業利益予想(米国会計基準)は前年比36.3%増の1兆8000億円。06年3月期の1兆8780億円に次ぐ過去4番目の水準で、リーマン危機直前の08年3月期に計上した過去最高益2兆2703億円にも近づく。

金融危機で09年に1043万台まで落ち込んだ米国の自動車市場が年1500万台を超える規模まで回復するほか、一時1ドル=75円まで円高が進んだ為替は100円近くまで円安に傾いている。リコール、東日本大震災やタイ洪水による減産などといった問題も見当たらない。

会見した豊田章男社長は「長く続いた円高がようやく是正されつつある。自動車市場は米国における回復や新興国の成長により、今後、拡大が見込まれる」と語った。一方、「これまでの逆風が収まり、いざ攻勢の時といった声も聞かれるが、まだ持続的成長のスタートラインに立っただけ」と述べた。

通期の為替レートは1ドル=90円、1ユーロ=120円とし、前年度の実績からそれぞれ7円、13円の円安で想定した。為替変動は前年度から4000億円の増益要因となる。連結の世界販売台数は910万台と、08年3月期の891万4000台を抜き6年ぶりの過去最高を計画。前年度の887万1000台から上積みし、800億円の増益を見込む。このほか原価低減が1600億円の増益要因となる。

連結売上高は前年比6.5%増の23兆5000億円、当期利益は同42.4%増の1兆3700億円を計画している。設備投資額は前年度の8527億円を上回る9100億円を予定しているものの、基本的に既存設備を最大限利用する方針。会見に同席した小平信因副社長は「新たな工場建設についてはすでに決定しているものを除いて考えていない」と述べた。

<1ドル=95円なら2兆円乗せ>

営業利益の見通し1兆8000億円は、トムソン・ロイター・エスティメーツによる主要アナリスト22人の予測平均値2兆0503億円を2500億円ほど下回る。しかし、前提となる為替レートが「ホンダ

トヨタは為替が対ドル、対ユーロで1円変動すると、年間で営業利益にそれぞれ400億円と40億円影響する。足元の為替水準1ドル=99円、1ユーロ=130円が1年間続けば、単純計算で営業利益を4000億円押し上げ、市場予測だけでなく、過去最高益に迫る可能性がある。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の自動車担当アナリスト、吉田達生氏は、1ドル=95円で営業利益は2兆円を超えると指摘。さらに1ドル=99─100円近辺が年間を通じて続いた場合は「最高益は完全に視野に入る」とし、業績の段階的な上方修正の可能性に言及する。

<13年3月期は大幅増配>

トヨタが同時に発表した13年3月期の連結営業利益は前年比3.7倍の1兆3208億円だった。2月公表の会社予想は1兆1500億円、主要アナリスト20人による営業利益予測の平均値は1兆2429億円で、実績はいずれの予想も上回った。円安を追い風に、国内が主体の単体の営業損益は2421億円の黒字(前年は4398億円の赤字)と、2008年3月期以来、5年ぶりに黒字を確保した。

13年3月期の連結世界販売は前年比20.7%増の887万1000台。国内ではエコカー補助金の追い風を受けてハイブリッド車の「アクア」や「プリウス」などが売れたほか、北米や東南アジアの販売も好調に推移した。

年間配当は1株90円で、12年3月期の同50円から大幅増配。14年3月期の配当予想は公表していない。

(ロイターニュース 杉山健太郎 大林優香;取材協力 杉山容俊 編集 久保信博) [東京 8日 ロイター]

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