「トップページから愛されたい」【cakes加藤×ハフポスト松浦】

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォームを立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回の話題は、媒体はどんなふうに愛されているのか。愛されるコツとは?
Chika Igaya

「cakes」CEO加藤貞顕さんと松浦茂樹ハフィントン・ポスト日本版編集長が徹底対談

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回の話題は、媒体はどんなふうに愛されているのか。愛されるコツとは?

松浦:トップページをブックマークして読んでくれるようなお客さんって、とにかくその媒体を愛しまくってる人なんです。今までの僕のウェブメディアの作り方でいうと、すごく大事な人たちで、彼らが増えてないということは、サイトとして満足されてないって思ってます。

加藤:その増減は、毎日気にして見てるんですか?

松浦:そうです。検索なら、今日の加藤×松浦インタビューで検索すると、私たちの媒体、もしくは違う媒体に流れるかもしれない。彼らに再び来てもらう魅力がそのサイトにあるかっていう話です。その時にちゃんと捕まえられるか。ソーシャルなら、その媒体ばっかりリツイートしてる人もいるだろうし、フェイスブックにしろツイッターにしろ、お友達の紹介みたいな形で流れてくるじゃないですか。どういう風にそれぞれのトラフィックからやってきてるのか、ウェブ編集者がわかってないといけない。

加藤:それは本当にそうですよね。やっぱり、僕はウェブでコンテンツを作る上で最大の違いはそこだなと思っていて、紙の本を作る時って基本的に勘で作るんですよ。これ売れるんじゃないかなって作って、もちろん数字が出るんですけど、それって売れ数だけなんですよね。ここがよく読まれたとか、ここが読まれてないとかはない。

はがきで多少わかるんですけど、はがきって1%も返ってこないし、はがき書く人が典型的なユーザーかっていうとまたそれもわからないところがある。ウェブで作る上で最大の違いは、全て反応がある。このリンクを押されるかどうかとか、ここに何秒滞在したとかデータが全て取れるので、作り方がまるっきり変わったなっていうのはすごいありますね。

松浦:だからこそ、最終的に数字を見るだけではだめだと。ここで、今日の一つの結論なんですけど、ウェブ編集者は数字の部分を気にするだけではだめで、読むだけでもだめで、それをもって類推して次につなげられるかどうか。

加藤:まあ、次に繋げるところでそれこそ勘とかも大事になったりするんですけど。そうそう、だからウェブ編集と紙の編集何が違うんですかって話がテーマだと思うんですけど、その部分は多分あんまり違わないんですよ、勘の部分は。だからそこはすごく今までの経験は生きる部分ではあると思う。

松浦:でも、勘の部分は一緒っていいながらも、雑誌とか新聞とか書籍とかやってきた人はその勘の部分がすごいんですよ。ネットばっかりやってると、どうしても数字の方、数字の方に偏って、そっちをおろそかにするところが多少ある。数字もまた正しいし、それでどんどんサイクルを回していって結果を出すところでもあるんだけど、やっぱりそこってわからないからこそ、勘が研ぎ澄まされていくってところもあるかなと。

加藤:ああそうですねえ。だから、僕の会社って今、エンジニアのほうが編集者よりも多いんですけど、大体ちょっとエンジニアが多くて、こういう風にサイトの仕組みや機能をこうしたいっていうと、まず必要性をわかってもらうのがすごく大変で、これはこうでこうだからいるんだよっていうんだけど、なかなか納得してもらえないんですよね。

松浦:そうそう。だからそこは数字としての部分、たとえばABテストするなり、ユーザーインターフェイス(UI)の部分でクリック数が上がるとかそういう形で、ウェブの箱作りの部分でそういうとこを気にしがちになってしまう。

加藤:そう、だから勘と数字を繋ぐ一つのツールは、ABテストですね。2種類の仮説があったら、2種類ともやってユーザーのクリック率とかを確認すると。

松浦:私はライブドア辞めた後に「WIRED」っていう雑誌のウェブとかやったんですけど、雑誌側とありがたいことに編集部がひとつになったんですよ。それでストーリー作って、コンテンツを作って一冊にしてくってとこを見た時にやっぱり紙の編集ってすごいなと。

加藤:ああ、紙はそうですね。ストーリーが一番重要かもしれないですね、それは雑誌だろうが書籍だろうが。ウェブですごくそこが難しいのが、どうしてもコンテンツがばらばらに細切れになるじゃないですか。そこをどう担保するのか。どうするんですか、難しいかなと思ってるんですけど。

松浦:パーマリンクが1個1個、たとえば第1回から第7回みたいな形で、第6回にランディングした時に横に動くのがやっぱり難しいじゃないですか、ウェブって。だから、新聞でも雑誌でもいいんですけど、1万字とか1万5千字のインタビューをウェブに持ってきて、1ページにおさめてればストーリーとしてまとまるかもしれないですけど、それは無理。だから、やっぱり新聞とか雑誌の記事をそのまま持ってくるっていうのは、そもそもパッケージが違うんです。パッケージをウェブ用に合わせて作れば、ストーリーはちゃんとその中で機能するかなと思います。

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