円相場、望ましいのは95-100円程度 企業調査で8割回答

5月ロイター企業調査によると、企業活動にとって望ましい為替相場は1ドル100円程度との回答が半数近くを占め最多となった。次いで多かった95円程度と合わせると、約8割の企業が95─100円程度を望ましいと感じている...
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5月ロイター企業調査によると、企業活動にとって望ましい為替相場は1ドル100円程度との回答が半数近くを占め最多となった。次いで多かった95円程度と合わせると、約8割の企業が95─100円程度を望ましいと感じている。

輸出競争力と輸入コストのバランスを勘案すると、それ以上の円安進行はかえって企業活動にとってデメリットが出かねない。また異次元緩和の経営上の変化は、半数が「変化なし・検討なし」と回答し限定的となっているものの、長期資金手当てやインフレヘッジとしての土地購入など財務面の動きや、事業拡大を検討している企業が1割強あることがわかった。この調査はロイター短観と同時に実施、調査期間は4月26日から5月15日。大企業、中堅企業400社を対象とし、回答は250社程度。

<円相場、1ドル100円程度での安定望む>

日銀による異次元緩和から1カ月が過ぎ、1ドル100円を超えて円安が進行している。この間、企業活動には円安メリットとデメリットが様々な形で影響しているが、企業にとって最も望ましい為替相場の水準を尋ねたところ、全産業で100円程度が回答企業全体の48%、95円程度が29%を占めた。製造業では、円安メリットが大きいとみられる自動車をはじめ、加工型製造業も5割以上が100円程度と回答している。非製造業では、輸入取扱が多い卸売をはじめ、各業種とも100円程度と95円程度がほぼ同数を占めた。製造業の活動を中心に、経済活性化にはある程度の円高是正が望ましいものの、輸入インフレを100%販売価格に転嫁することも難しいことから、コスト抑制の観点から100円程度が限界と見ていることがうかがえる。

<異次元緩和の効果、一部に長期資金調達や事業拡大の動き>

黒田日銀が4月上旬に異次元緩和に踏み切ったことで、企業経営になにがしかの変化をもたらすか聞いたところ、今のところ手応えは限定的。製造業も非製造業も「その他」が半数近くを占め、その内容はほとんどが「特に変化はない」だった。変化の具体的項目を挙げて聞いたところ、製造業では「長期資金の調達」が17%と最も多かった。背景には「円安の影響で海外原料の調達コストが高くなることが予想されるため」(食品)などコスト増を意識した動きがあるほか、「生産量拡大を見越しての労務費予算の増額」(機械)「M&Aの検討」(電機)「長期で運転資金の借入を数年ぶりに検討中。また新しく首都圏でのビル物件を購入」(その他製造)といった企業活動の活発化を映じたものもある。

また、「金融資産や土地や不動産投資の増加」をあげた企業には「インフレ経済に本当に移行するかは今後の推移を見定める必要があるが、インフレに対するヘッジ手段として土地等の購入を検討、実行している」(電気機器)との声もあった。

一方、非製造業では「事業の拡大」「金融資産や不動産投資の増加」「雇用や賃金の増加」が15%程度で並んだ。中には「新規開設予定店舗の増加」(小売)「設備投資計画の前倒し実施 」(建設)といった前向きの動きや、「新卒採用枠拡大」(建設)「政府施策に配慮し賞与支給を増額 」(小売)といった雇用・所得への取り組みを上げる企業もあった。

「設備投資積み増し」との選択肢も、製造業、非製造業ともに12─13%程度となった。今年度に絞って当初計画からの上積みを検討しているか聞いたところ、9割以上が「特に変わらない」と回答、需要拡大に確信が持てるかどうか、まだ見極めている様子がうかがえる。「もう暫く様子をみてからの判断としたい」 (機械)「中長期計画に沿ったものであるため。変更は、景気動向を十分に見た上で必要であれば行う予定であるため」(サービス)など、慎重さが残る。

<望ましい成長戦略は、企業減税と規制緩和が上位>

安倍政権が進める成長戦略について、企業が最も望んでいる政策は企業関連税制の減税であることが浮き彫りとなった。望ましい成長戦略を1位から3位まで選んでもらい、点数をつけて集計したところ、最も点数が高かったのが法人減税で431点で突出している。2位は設備投資減税で257点、3位は規制緩和で250点とほぼ並んだ。法人減税を望む企業からは「海外企業に対する競争力・成長力の確保のため」(石油)「社内留保の増加による設備・雇用投資の増加に活かせる」(精密機器)といった声が目立つ。設備投資減税を望む企業からは「高額な設備を導入しやすくなり、税制面で優遇されれば費用対効果の上昇が望める」(機械)「景気回復には国内の設備投資の増加が必要」(ゴム製品)といった見方が多い。

規制緩和への要望も強い。規制に関しては「諸悪の根源とは言わないが、障害であることに違いない」(化学)「掛け声とは異なり、実質的には規制が厳しくなる分野もあり、産業の新陳代謝を妨げている」(機械)といった厳しい声もある。「規制緩和による企業家精神の発揚が最大の原動力」(輸送用機器)「伸ばせる事業の規制が多すぎる」(小売)など、規制緩和が企業の前向きの動きに寄与するとの意見が非常に多かった。[東京 21日 ロイター]

(ロイターニュース 中川泉;編集 宮崎亜巳)

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