米国3位の携帯電話大手、スプリント・ネクステルの買収提案をめぐって、ソフトバンクは、米政府がスプリント内の安全保障面を担当する取締役を承認する権限を持つことができるとする異例の対応を行うと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
現在スプリントの買収については、米衛星放送大手ディッシュ・ネットワークも名乗りを上げているが、ディッシュ社は、ソフトバンクがスプリントを買収すれば、米国の安全保障上のリスクをもたらすとして、広告キャンペーンを展開していた。
International Business Timesは、このディッシュ社のキャンペーンについて下記のように報じている。
ディッシュによる広告は、インターネット上やワシントン・ポスト紙などに掲載された。ソフトバンクによるスプリント買収を、2006年に取りざたされたアラブ首長国連邦(UAE)の国営港湾会社ドバイ・ポーツ・ワールドによる米国港湾管理問題になぞらえ、「国家安全保障はアウトソース(外注)すべきでない」と訴えている。
(International Business Times 2013/5/23 06:30)
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、海外の企業が米国の企業を買収する際の安全保障上の懸念について、下記のように報じている。
国家情報長官(DNI)室の元法律顧問で現在弁護士のベンジャミン・パウエル氏は、米政府の取締役承認権限の要求について「通信分野における中国に対する懸念を浮き彫りにするものだ」と述べた。スプリントの取締役は10人で、安全保障問題担当はネットワーク・セキュリティーに関する米政府との合意が順守されているかどうかの確認を担当する。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2013/5/23 11:49)
中国企業に対するアメリカの安全保障への懸念については、ロイターが下記のように報じている。
華為技術HWT.ULや中興通訊(ZTE)(000063.SZ: 株価, 企業情報, レポート)などの中国の通信機器メーカーは、安全保障上のリスクを理由に、米国市場での事業拡大が阻まれている。
(ロイター 2013/05/23 14:19)
情報通信総合研究所の佐藤仁氏の記事では、スプリント及びソフトバンクの、中国製品に関する考え方について、下記のように整理されている。
ヘッセCEOは、「Sprintはアメリカの安全保障上の懸念を抱かせる製品は絶対に使わない。過去の業者選定時にも安全保障上の懸念のある製品を外したことがある。」と述べた。孫社長は、「アメリカ政府がこの問題に敏感になっていること、国家の安全保障の重要性をよく理解している。アメリカ政府が『(中国製品を)利用するな』と言うのであれば、ソフトバンクはその判断に従う。HuaweiやZTEの製品を導入しているのは、ソフトバンクグループの子会社の1つだけだ。」と述べた。
((株)情報通信総合研究所 佐藤仁氏「ソフトバンクのSprint買収と中国製品に対するアメリカ政府の要求:安全保障の観点」より。2013/4/3)
スプリント株主が、ディッシュ案に好意的な考えを示しているという報道もある。6月12日に開かれる、スプリントの株主総会まで目が離せない。