日経平均、止まらない乱高下 「完治」に新たな材料必要か

マーケットは安定感を取り戻すことができず、乱高下が止まらない。日本株はいったん自律反発したものの、後場は再び急落。ドル/円や円債先物も大きく上下に振れている。アベノミクス期待が崩れたわけではないが、過熱感を一気に解消するような急落で市場センチメントは大きく傷つき、荒れやすい展開になっている。上昇基調に戻るには効果的な成長戦略など新たな材料が必要との見方が多い...
Reuters

マーケットは安定感を取り戻すことができず、乱高下が止まらない。日本株はいったん自律反発したものの、後場は再び急落。ドル/円や円債先物も大きく上下に振れている。

アベノミクス期待が崩れたわけではないが、過熱感を一気に解消するような急落で市場センチメントは大きく傷つき、荒れやすい展開になっている。上昇基調に戻るには効果的な成長戦略など新たな材料が必要との見方が多い。

<思い出した下落の恐怖感>

日本発の世界同時株安は米市場でいったん食い止められたが、24日の東京市場は再び乱高下する展開となった。日経平均

前日と同じように目立った材料があったわけではなく、短期筋とみられる大口の注文をきっかけに、各市場で連鎖的に下落や上昇が加速した。自動的に売買を執行するアルゴリズム取引が動きを加速させている面もあるが、「前日の急落で市場センチメントが不安定化しており、押し目買いも厚く入るが、売りも殺到しやくなっている」(東洋証券・投資情報部シニアストラテジストの檜和田浩昭氏)ことも、乱高下の背景にあるという。

現在の金市場のように一度大きな急落を経験すると、なかなか元に戻らないのがマーケットだ。先行き明るい展望を描き続けているなら、押し目買いのチャンスになるが、投資家は「上昇過程で忘れていた下落の恐怖感を思い出した」(国内証券)ことから、新たなるリスク積み増しに慎重になってしまう。長期投資家は高いボラティリティを嫌う。

急落前も日本株に割高感は乏しかったが、予想PER(株価収益率)は約17倍、PBR(株価純資産倍率)は約1.4倍と割安感があったわけではない。日本株を買えていない海外の長期投資家も多く、長期的には買いは引き続き入ると期待されているが、連日の乱高下を嫌気して、いったん様子見となる可能性もある。日経ボラティリティ指数

黒田総裁率いる日銀への期待感も若干ながら後退しているという。21─22日の日銀政策決定会合では政策現状維持で、市場の予測通りだったが、景気回復にともなう金利上昇であれば容認するのではないか、との疑念は晴れなかった。また金利上昇を嫌気して急落したJ-REITの日銀の買い取り枠は残り32億円しかないが、その拡充はみられなかった。「黒田総裁は、財務官時代に為替介入をとことんやった。金融緩和もとことんやると期待していた海外勢の期待はやや揺らいでいる」(国内投信)との指摘もある。

<「完治」には新たな材料必要か>

日銀はある程度の金利上昇を容認しているのではないかとの疑念は円債市場で根強い。市場センチメントは傷ついたままで、長期金利は日本株と連動するように乱高下している。ボラティリティの高さを嫌気して機関投資家の多くは様子見だ。朝方の現物取引では、ビッドとオファーが大きくかい離する状態が続くなど、「短期筋による先物売買が主体のため、株価・為替動向をにらみながら値が飛びやすくなっている」(国内証券)という。

「円金利のボラティリティがどれだけ落ち着いてくるかがポイント」とドイツ証券・チーフ金利ストラテジストの山下周氏は話す。

ドル/円も日本株に引きずられやすくなっており、荒れた展開だ。「日本株急落とともに円安局面はいったん終了した」(外銀)との声も出ているが、三菱東京UFJ銀行・市場企画部チーフアナリストの内田稔氏は、株価急落では円安基調は崩れないとの見方を示す。「なぜここまでドル高/円安に振れたかと言えば、世界的に株が上がってリスクオンだからものすごく円安になっているというわけではなく、あくまでも日本側の国際収支とインフレ期待が円安の原動力。米国の景気期待やFRBがQE3を絞るのではないかというドル高の要因よりも、やはり円安の要因の方が強い」と指摘している。円安基調に戻れば、国内輸出企業の業績上方修正期待も再び強まる。

トムソン・ロイター傘下のリッパー・サービスが23日公表した米国内ファンドの資金動向調査によると、22日までの1週間に日本株ファンドへの資金フローが15億1000万ドルに上り、27週連続と過去最長の資金流入超となった。日経平均は昨年11月半ばからほとんど調整がないまま84%上昇しており、連日の急落も過熱感を解消するための適度な調整との強気な見方も依然多い。

ただ、一度傷ついた市場センチメントが「完治」するには新たな材料が必要だとみられている。T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏は「10%程度の上昇であれば資産の一部に組み込まれるだけだが、80%も上昇したとなれば、いわば『あぶく銭』であり、消費が増える可能性が大きい。株がこのまま横ばいでも、急落さえしなければ、高額商品などの消費は伸びるだろう。ただ、日本人で株を持っている人はわずか。多くの人がアベノミクスを享受するとの期待感を持つためにも、有効な成長戦略が必要だ」との見方を示している。[東京 24日 ロイター] (伊賀 大記 )

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