女性手帳をめぐる少子化危機突破タスクフォースとメディアの攻防 森少子化担当相の会見全文

少子化対策を検討してきた有識者会議は5月28日、最終的な意見のとりまとめ「『少子化危機突破』のための提案」を森雅子少子化担当相に提出した。提案には、批判が巻き起こっていた「生命(いのち)と女性の手帳」(仮称、通称「女性手帳」)の文字はなかった。女性手帳については報道と議論が加熱、反対する人たちによる集会やネット署名運動にまで展開。ネットでは、「女性手帳」を提案したと思われるタスクフォースの委員のフェイスブックに反対メッセージを送ろうと呼びかけるユーザーも出現した。
Chika Igaya

少子化対策を検討してきた有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は5月28日、最終的な意見のとりまとめ「『少子化危機突破』のための提案」を森雅子少子化担当相に提出した。提案には、批判が巻き起こっていた「生命(いのち)と女性の手帳」(仮称、通称「女性手帳」)の文字はなかった。女性手帳については報道と議論が加熱、反対する人たちによる集会やネット署名運動にまで展開。ネットでは、「女性手帳」を提案したと思われるタスクフォースの委員のフェイスブックに反対メッセージを送ろうと呼びかけるユーザーも出現した。

しかし、この日の会合後、タスクフォースをまとめてきた座長、佐藤博樹・東京大学大学院情報学環教授は、「(女性手帳が)あたかも決まったかのように報道されたことは座長として心外。僕のところに誰も取材に来なかった」とメディアに苦言を呈した。佐藤座長は、たまたま別の取材で会った新聞記者に「僕のところに誰も取材に来ない」と話したところ、「そりゃそうですよ。新聞社が書いているのは、世の中でそういう議論があるということであって、事実かどうかというのはマスコミとして関心がない」と言われ、驚いたという。

森少子化担当相も、5月9日の参議院内閣委員会で、「女性を対象」「手帳という形式」は決まっていないとして、女性手帳に関する報道は「誤報の部分が多い」と発言していた。会合後の会見でも、メディアからの質問は女性手帳に終始し、森少子化担当相は「報道は誤解にもとづくもの」と説明を繰り返している。

一方、メディアからは内閣府による議事録の公開も遅れていることへの批判があった。「女性手帳」に対する議論が加熱した舞台裏で、どのような攻防があったのか。その一端が伝わるものとして、タスクフォース会合後に行われた森少子化担当相の会見全文を以下に掲載する。

――少子化のタスクフォース、まとまりましたが、今の率直なご意見を、受け止めをおっしゃってください。

そうですね。委員の皆様がたくさんの意見を出して頂いて、総合的な政策についてご提言を頂いてよかったなと思います。このご提言をですね、政府としてしっかり受け止めまして、今後、政府の政策を練り上げていきたいと思います。

――この中の議論でもございましたが、女性手帳について、一部報道での取り上げられ方が違ったということがあったということですが、あらためて事実関係をお聞かせください。

そうですね。私としても残念に思っておりますが、記者会見、国会答弁等で公の場でご説明してきたのですが、そのことが報道に取り上げられなかったことは大変、残念に思っています。ただですね、有識者の会議の中でのことですので、私としてそれについてですね、例えば報道についてですね、何か異議をとなえるということは私の進めた政策ではなく、有識者の方のご意見ですので、それについてはひかえておりましたけれども、今日、とりまとまりましたので、その中で、有識者の方々がご説明した通りであると思います。

まだ政府としての政策ではございませんので、有識者の皆さんのご意見として、男性も女性も男女ともに啓蒙してゆくことが必要だということを今日、まとめられてご提案頂いたということでございます。これは第1回目から男女ともに啓蒙することが必要ということは議論されておりましたので、私としてもそれをしっかりと受け止めていきたいと思います。

――啓蒙の一環として、あらためて女性手帳を配布するということについて、大臣のご意見はどのようにお考えなんでしょうか?

有識者のご意見の中に、女性手帳を配布するということは入っていないと思います。

――配布するという意見がそこになかったので、今回、見送るという報道もありましたけれども、それもなかったということでしょうか?

それも誤解だと思います。政府としての意見ではありませんし、政府としてのとりまとめではないのですね。ただ、私はこの有識者会議は重要な会議だと思っておりますので、折りに触れて参加し、今日は最初から最後まで同席をさせて頂きましたので、しっかりとやはり男女ともに啓蒙してゆくというご提案は受け止めていきたいと思います。そして、それだけでなく、啓蒙だけでなく、総合的な政策を進めてゆくという中で、その方法については、またですね、しっかりと皆さんの意見を聞きながら、議論をしていきたいと思います。

というのは、報道で一部誤解のような報道が残念ながらありましたけれど、それはやはり、女性の皆さんが悲痛な思いだと思うのですね。やはり子供を産む、産まないということは、女性が自分で決めることです。そしてまた、結婚したら、男女が自分たちで子供を持つか、持たないか、決めることです。そういうことに対して、国がなにか介入するのではないのかということを、誤解をもとにですね、大変、不安に思ってしまったということについては、やはり私自身も皆さんのそういう不安をしっかり受け止めてまいりたいと思いますし、やはり、誤解のないように、待機児童の解消や、また地方では産婦人科の不足、不妊治療の財政的な支援も含めてですね、しっかり困っている人に手が届くような政策を展開してまいりたいと思います。

――最後にすみません。あらためてですね、女性手帳はトーンダウンしたということではないということですか?

そうですね。私は当初から会見等で申し上げておりますが、男女ともに啓蒙してゆくという中で、有識者の会議の中で、色々な形態が、提案がされました。手帳という提案もありましたし、インターネットを通した啓蒙という提案もありましたし、学校教育の中でやったらどうかという提案もさまざまあった中で、どの形式ということが最終的には決まらずに、啓蒙の重要性ということで今日、ご提案を受けたというふうに認識をしております。

――各社さんの(質問を)どうぞ。

――(別の記者)確認ですけども、前回、サブチームの報告という形で、親会議のほうで議論があり、そういうことで、女性手帳という今、言われているものについてやる方向で一致したと。タスクフォースの親会議が。それを受けて、内閣府の事務方も予算編成なんかで個別に議論していかなければいけない部分がありますけれど、組織を作ってその実現に向けて具体化を進めるというですね、ブリーフィングを事務方から受けた覚えがあるんですけど、これは報道うんぬんという問題ではなく、内閣府の説明の問題なんじゃないですか?いかがですか?

そうですか。内閣府のブリーフィングの内容を正確に教えてもらえますか。

――あの前回ですね、あのこういったことで、私の記憶でですよ、朝日新聞ですけども、私の記憶では、そういったそのサブチームでの提案があって、親会議でももんだところ、そういった方向性についておおむね了承されたけども、ただ、名前などについては引き続き検討する余地がある、あるいは方法についても、手帳だけじゃなくて、ネットとかいろんなやり方もあるし、男性に対してもなんらなかの解決はしなければいけないだろうともいろいろ意見があったので、そこも含めて、検討チームのほうで具体的に進めて行くという説明だったと記憶しています。

そうですね。いま、私の説明と何か違うところがあったでしょうか?あの、私はそのブリーフィングを横にいて聞いていたわけではなくて、後から事務方から報告を受けているのですが、私が今答えたと同じように、男女ともに啓蒙していく必要があるということが親会議のほうでも、ほぼそういう意見が多数を占めていたと思います。それに対して、形態については紙媒体とかインターネットとか学校教育とかさまざまな意見が出ました。

――ニュアンスの問題ですけれど、前回の事務方のブリーフィングと私の受け止めですけれど、紙媒体を中心に、女性を中心に、女性だけと言ってませんけど、女性を中心に配るというような前提の説明だったと記憶しています。

ええとですね、サブチームから出た報告書にはですね、女性などというふうに書かれていたと思います。サブチームからの報告書です。それを受けて、タスクの本会議では、やはりそれは誤解を受けるという指摘とか、男性に対しても啓蒙が必要だという指摘が出ました。今日も委員の中の女性の編集者の方などがおっしゃっていましたけど、なにか不妊について女性のせいにするような、そういう誤解を産むようなことは避けるべきだ、やはり男性の側にも不妊の原因はありますし、ただ、そういったことの生殖についてのですね、知識が世界的にも低いという報告が、それと同時に論文も示されていましたので、そういった知識の啓蒙が必要であるということと、それから、不妊治療を受けている患者さんの生の声として、やはり、こういったことをもう少し早く知っていれば、たとえば、夫婦でもう少し早く病院に来ることを決めたりとか、本当に妊娠をする割合が非常に低くなるような高年齢になってから大変、高額な出費をして不妊治療を受けるようなことがなかったのに、という悲痛な声が寄せられているというご報告ございまして、そういったことに対する知識、啓蒙が必要だというは共通認識としてあったところでございます。

私はそのブリーフィング、横にいなかったのですけれど、もし説明が不十分であって、誤解を与えたようであれば、しっかりそれは指導してまいりたいと思います。私の方はここの場でですね、それについては当初から、男女ともに啓蒙するということであったということをご説明させて頂きますし、大臣の記者会見等でも何回もご説明をさせて頂いております。

――(別の記者)確認なんですが、女性手帳に関する報道は誤報というご認識なんですか?

私は誤解に基づくものがあったと思います。たとえば、政府が配布を決定などと書かれていましたけれど、このタスクフォースは政府の決定事項ではないことは最初からご説明しておりますし、それはブリーフィングでもご説明があると思いますが、有識者会議からのご提案を受ける場であるということをですね、政府がもう配布すると書かれてある部分は誤解だと思います。

――政府の決定以外の、手帳の中身についての報道も誤報ということでご認識されているわけですか?

手帳の中身というと?

――あの、どういう手帳を想定しているか、政府でなくても、会議の中でそういうことがほぼ固まったという報道が続いたかと思うのですが、それについても誤報だというふうにご認識されているのでしょうか?

手帳の内容というと記事の詳細をお知らせ頂ければと思いますが……

――女性を中心に生殖に関わることだとかを早期に教えると、そういう情報提供のための女性を中心にした手帳を考えていると。それはほぼ固まったということについては、誤報である?

ええとですね、個々の記事を見せて頂ければ、お答えをしたいと思いますが、女性だけに配布というふうに書かれていた部分は誤解だと思います。

(会見終了)

少子化危機突破タスクフォース

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