米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ
Reuters

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ

ミッドアメリカンは先週、同業の米NVエナジー

しかし米金融市場からはこの案件にもう一つ別の目立たない理由があるとの声も出ている。82歳のバフェット氏がバークシャーの抱える500億ドル近いキャッシュの投資先をがっちりと固め、後継者問題をめぐる懸念を鎮静化しようとしているというのだ。投資家はバフェット氏が適切な人物を後任に選ぶと確信しているが、世界で最も成功したバリュー投資家だけに同氏は特別だと認めている。

バークシャーのチャールズ・マンガー副会長は昨年、ミッドアメリカンが今後10─15年に約1000億ドルを投資する可能性があると述べた。

ウェッジウッド・パートナーズの最高投資責任者(CIO)のデービッド・ロフル氏は「エネルギーセクターは(バフェット氏が)多額の資金を投資する経路になっているようだ。向こう10年間でやすやすとバークシャーで最大のセクターになる可能性が非常に高い」と述べた。ウェッジウッドはバークシャー株を3億ドル保有している。

ミッドアメリカンはエネルギー・電力関連で年初来最大規模となったNVエナジーの買収案件を含めても、バークシャーの税引き前利益に占める比率が10%程度にすぎず、巨大な保険部門にかなり見劣りする。しかしこうした状況は変わる見通しだ。

モーニングスターのアナリスト、グレッゴリー・ウォーレン氏はバークシャー傘下のミッドアメリカンや鉄道のバーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)が果たしてきた役割について「キャッシュフローが同じ事業に再投資される流れを確かなものにした。そのため後継者がバランスシート上にあまりにも巨額のキャッシュを抱えて、アイデア不足に陥るというリスクがいくらか除かれる」と述べた。

BNSFは鉄道インフラ拡張や天然ガス機関車などの新技術に投資しており、ミッドアメリカンもさらに買収に動く可能性がある。

<不可欠のサービス>

バフェット氏は株主への最近の書簡でミッドアメリカンの収益について、「不可欠のサービスを提供している」ため「景気後退に抵抗力がある」と説明した。

ミッドアメリカンはNVエナジー買収後の資産が660億ドルとなり、この中には天然ガスパイプラインのカーン・リバー、新設の再生可能エネルギー部門、不動産取引会社などが含まれる。ただ、オレゴン州のパシフィコープなど規制下ある電力事業に重点がある。

バフェット氏はミッドアメリカンの最高経営責任者(CEO)に最も信頼する側近のグレッグ・アベル氏を充てている。バフェット氏はこの数年、何度もアベル氏を称賛しており、同氏は後継候補の1人と目されている。

ミッドアメリカンの元会長で一時はバフェット氏の後を継ぐとみられていたデービッド・ソコル氏は、株式取引で問題を起こして辞任した。2年前のスキャンダル発生以降、アベル氏のほか、バークシャーの保険部門責任者のアジット・ジェイン氏、BNSFのマシュー・ローズ氏などが後継者候補に浮上している。

ディスティネーション・ウエルス・マネジメントのマイケル・ヨシカミCEOによると、NVエナジーのような買収案件により、バークシャーは金融危機時の2008年にゴールドマン・サックス

バフェット氏が次に狙う大型買収案件は、電力に比べて割安な工業セクターだとの見方が多い。しかしヨシカミ氏は、電力部門のバリュエーションが少しでも下がれば、バフェット氏が動くと予想している。[5日 ロイター]

(Nichola Groom記者)

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