各党代表者が語る「経済政策」とは ネット党首討論会(2013年6月28日)全文書き起こし (2/4)

参議院議員選挙(2013年7月4日公示・21日投開票)に先駆けた6月28日夜、東京・六本木のニコファーレで主要政党の代表者が集まった「ネット党首討論会」が開催された。このニュースでは本討論会の内容のうち、「経済政策」をテーマとした討論を全文書き起こして紹介する。
時事通信社

ネット党首討論会(2013年6月28日)全文書き起こし(2/4) テーマ「経済政策」

参議院議員選挙(2013年7月4日公示・21日投開票)に先駆けた6月28日夜、東京・六本木のニコファーレで主要政党の代表者が集まった「ネット党首討論会」が開催された。

登壇者は以下の通り(※国会の議席数順)。

自由民主党 安倍晋三 総裁

民主党 海江田万里 代表

日本維新の会 橋下徹 代表

公明党 山口那津男 代表

みんなの党 渡辺喜美 代表

生活の党 小沢一郎 代表

日本共産党 志位和夫 委員長

社会民主党 福島みずほ 党首

みどりの風 谷岡郁子 代表

このニュースでは本討論会の内容のうち、「経済政策」をテーマとした討論を全文書き起こして紹介する。(発言者敬称略)

・ネット党首討論会(2013年6月28日)全文書き起こし(1/4)

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角谷:では、「この国のかたち」を始めてまいりましょう。始めのテーマはこちらです。経済政策です。「景気回復」、この言葉は、国民誰もが望むことだと思います。問題はその手法であるとか、若者の雇用であるとか。こういったものも含めて、この問題について議論していきたいと思っております。まずはこの討論の皮切りの質問がございます。それはこちらです。

「ある企業では、世界同一賃金の話が話題になりましたが、TPPで雇用も自由化されると日本人の仕事がなくなり、給料が安くなるのではないのかと心配です。アベノミクスの成果を相殺してしまう気がします。(男性 兵庫県 20代)」

では、最初はこの質問、安倍総裁から答えていただいたのち、挙手をしていただいて、それぞれの方にお話を頂きたいと思っております。では、総裁からお願いします。

■自民党・社会民主党による「経済政策」についての主張

自民党・安倍:まずTPPにおいて日本の雇用制度が影響を受けることはありません。これは、はっきりと申し上げておきたいと思います。大切なことはやはり、それぞれの方々が自分の、自己の夢を実現できる、そういう社会をつくっていくことだと思います。そして何よりもしっかりと雇用を増やしていくことが大切なんですが、私達の経済政策によってですね、今日ちょうど雇用統計が発表されましたが、5月は前年同月比で60万人の雇用が増えました。

そしてさらに、有効求人倍率は0.9(倍)となって、リーマンショック以前に、とうとう戻ったんですね。3ヵ月連続で改善しています。就業もですね、5ヵ月連続、まさに我が党が政権を取ってからずっと改善している。これが大切であって、さらにしっかりと雇用の場を作っていきたいと思います。

角谷:はい、分かりました。さて、これについて皆さんご意見を頂きたいと思います。では、福島さんいきましょう。

社会民主党・福島:TPPで雇用がどうなるかということなんですが、まだ影響がどうなるかわかりません。産業障壁といってISD(条項)で訴えられることや、問題にされる余地はある、と思います。かつてアメリカは教書の中で、ホワイトカラーエグゼンプション、残業代払わなくていいとか、解雇のルールの規制緩和を日本に要求しました。

私がひどく危惧しているのは、安倍内閣のもとにおける、規制改革会議、産業競争力会議、そして経済財政諮問会議などで、解雇のルールをもっと緩めたらいいんじゃないか、あるいは派遣法において、これは全面解禁、見直しをしたらどうかと。せっかく派遣村があり、規制を強化したのに、「もう一回派遣を全面解禁したらどうか」という意見すら出ています。解雇は民法のルールに従ってやったらどうかという意見さえ、産業競争力会議で出ております。もう一回、生活と雇用と地方を破壊するのかと、小泉構造改革の焼き直しだと危惧しております。

■公明党・民主党による「経済政策」についての主張

角谷:すみません、説明が遅れました。ここも1分ということになっております。失礼しました。ほか、皆さん、どうでしょうか。では山口さん。

公明党・山口:安倍総理もおっしゃいましたが、大前提として世界同一賃金、あるいは雇用の自由化がTPP交渉の対象にはなっていないということです。その前提において、雇用を増やす、成長戦略を確実に実行していくことが必要だと思います。そうしたプロセスの中でワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を進めるとか、あるいは非正規から正規化へのチャンスを作るとか、そういったことも含めた成長戦略の実行を確保していきたいと思います。

角谷:はい、では海江田さん。

民主党・海江田:まずTPPについてでありますけども、私共はやはり情報の徹底した公開をお願いしたいと思います。これは政府が交渉に当たっているわけですから、安倍総理からは雇用の問題は平気だというお話でありますけれども、そこは詳しく具体的な交渉の過程のなかでお話をしていただきたい。それから本当にTPPで守るべき国益が守れるのか、どうなのか。私達は国益が守られない場合は脱退もありうべしとの方針を決めています。

それから、雇用はですね、この参議院選後の国会がまさに規制緩和の国会になるというお話もありますけども、その中で、今もお話がありましたけれども、働く人の雇用の形態の自由化という名前を借りて、まさに雇用が破壊される。限定正社員なんて言葉が出ましたけれども、これはまさに正社員の非正規化に繋がると思っております。

■みどりの風・日本共産党による「経済政策」についての主張

角谷:有り難うございます。では谷岡さん。

みどりの風・谷岡:TPP交渉の一項目の中には、労働力の移動ということが明らかに入っています。ですから、それを考えれば、この危惧は当然のことだと思います。どういう形で、「こういうことはありえないのだ」とおっしゃるのかはわかりません。そして今、中身の交渉がどうなっているのかは秘密のベールに覆われています。

この間の会議でも多くのステークホルダー、つまり利害関係者の人たちに内容が説明されたと言われていますが、その多くの人とはアメリカを中心とする多国籍企業のオーナー達でありました。そして国には知らされないけれども、経済界には中身が知らされるというかたちで、このTPPの交渉は進んでいます。労働力の移動が問題になれば、それは当然、安い賃金で働く人達が流入していくということであって、それは労働条件を悪くします。給料を押し下げます。その危険性があるので、私達は、みどりの風は(TPPに)反対しております。

角谷:はい、有り難うございました。志位さん、行きますか。

日本共産党・志位:TPPというのは人・モノ・金をですね、国境なく自由にしていこうと、そしてアメリカ型のルールを日本に押し付けるという枠組みですから、当然、雇用のルールの破壊ということが強く危惧されます。ですから、私達は絶対に反対です。

そしてアメリカとの関係で言いますと、雇用の問題では、90年代から、たとえば派遣労働の自由化、これはアメリカから外圧をかけられて、99年に派遣労働が原則自由化される。2004年にはですね、製造業にまで拡大される。こういうやり方が使い捨て労働の蔓延を招いてきた。こういう問題があります。

そしてさらにですね、今、安倍内閣のもとでつくられている成長戦略の内容として、解雇を自由にする限定正社員、あるいは裁量労働制を拡大して残業代ゼロを拡大していく。さらに派遣労働を全く野放図に自由化する。そういう内容が盛り込まれておりますが、これは雇用を壊すことになり反対です。

■みんなの党・生活の党による「経済政策」についての主張

みんなの党・渡辺:TPPによって「雇用制度が破壊される」とか「国民皆保険がなくなる」とかいうのは、全く荒唐無稽な議論なんですね。むしろ日本が開国をもっともっとしていくことで日本の経済成長が促進される。日本がもっと豊かになる。そちらのほうがはるかにメリットが高いと思います。

人・モノ・金。これがもっと自由化されることによって、働く場所も増える。所得もあがる。輸出も増える。そういうことが国力の増進に繋がっていくんですね。日本のGDP比の直接投資を見てみると、北朝鮮よりももっと少ないんですね。いかに日本が残念ながら、閉ざされた国であるかということであります。国を開国することと同時に、デフレから脱却していく、デフレから脱却することによって所得が上がっていく、雇用が増えるんです。

角谷:有り難うございます。では小沢さん。

生活の党・小沢:皆さんと重複する点がありますけれども、安倍総理に、2点お伺いしたいと思います。一つは今、非正規社員が34~35%になっていると聞いております。これをさらに、限定正社員ですか、非正規の枠を増やそうということが政府のなかで考えられているということですが、この点について総理の答弁をお聞きしたいと思います。

それから健康保険、国民皆保険の問題ですけれども、これもTPPの交渉以前にですね、今、混合診療、自由診療の枠を拡大しようという考え方があるやに聞いているおりますけれども、この点に関しても、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

角谷:安倍さんいろいろと質問が出ましたけれども、じゃあ総合的にお答えください。

自民党・安倍:全体ですね。まずですね、労働移動がない社会は、死んでいく社会に、経済になります。当然、成熟産業もありますし、あるいはこれから伸びていく分野があります。ですからその成熟した産業から、これから伸びていく分野に必要な労働移動が行われるように私たちはしていきたいと思っているんですね。

そのためのしっかりとしたジョブトレーニング、職業訓練もしていきますし、その中においてキャリアアップができるように、我々は国として応援していきたい。つまり、なかなか将来見込みのない分野にすがりついても、みんなで衰退をしていくわけですから、しっかり伸びていくように応援していきたい。それによって我々はダイナミックな活力を手に入れることができますし、TPPによって、いわば強制的に雇用の自由化を、我々が受け入れるということはあり得ないということです。そしてもちろん、正規の社員がしっかりと増えていくのが基本であるということも申し上げておきます。

■各党党首の自民党への問いかけ

角谷:全部の質問に一度にお答えいただくのは1分では窮屈だと思いますが、また何度かお願い致します。これを広げる、あるいは別の話がある方はいらっしゃいますか。はい、海江田さん。

民主党・海江田:谷岡さんが聞いたのは海外との労働移動の話でしょ。今、総理がお答えになったのは国内の労働移動の話で、これは産業構造が変化するとともに、国内の労働移動があるというのは、当たり前の話でありまして、この間ずっとそうした国内の労働移動があって、ただその結果、何が起きてきたかというと、やっぱり賃金の減少ですよ。

モノづくりのところの企業の賃金は比較的そこそこ、まさに中間層だったわけですけれど、それがどんどん第三次のサービス産業に移っていって、そしてそこで年収が大幅に減って、一人当たりの所得が減ったということが、やはり今の一つの大きな流れの中にありますから、そういうことがさらにこれからの労働規制の緩和によって、さらに広がっていくのではないだろうかということに、私は大変大きな危惧を感じているわけですから、その意味では、労働の法制はしっかり守るということを私たちは考えています。

角谷:安倍さん、お答えいただけますか。

自民党・安倍:賃金の問題なんですが、ずっとデフレが続いてきたんですね。デフレによって、国民の総所得が50兆円減りました。デフレの中において、賃金は上げようと思ったって上げられませんから。まずはデフレから脱却をして、しっかりとその中で企業が収益をあげていくという中で、労働分配率が上がっていく(ということです)。

当然、経済が成長していけば、雇用市場もタイトになっていきますから。その中において、賃金は上がっていくんですね。そういう正常な競争力を維持する中においての、賃金が上昇していく。賃金が上昇していくことによって消費も増えていく。消費が増えれば、物が売れていきますから、物が売れれば新たな投資が起こってくる。今、そうしたサイクルに入ろうとしている。まさに入り口に差し掛かっていると、このように思っています。

ですから「今、この道を行くしかないんだ」ということは、はっきりと申し上げておきたい。このように思います。

角谷:志位さん、行きましょう。

日本共産党・志位:デフレと賃金の関係が逆転していると思うんですよ。デフレがあるから賃金が下がったんじゃない。長期に渡ってですね、国民の賃金が下がり続けている。1997年をピークにして、ずーっと下がっている。下がっているからこそですね、今、物が売れなくて、内需が冷え込んでデフレが起こっているんですよ。

なんで下がっていったかっていうとですね、やっぱり労働市場の規制緩和ですよ。その象徴は、派遣労働の拡大ですよ。その道をですね、もっとやろうと。派遣の拡大をもっとやろう。そして正社員も、今度は限定正社員を作ってですね。職種や地域限定の正社員で、その工場を畳んだらですね、そっくりクビにできる。そういう「クビ切り自由の正社員」を作っていく。

こういう方向に行ったらもっと賃金が下がっていきますよ。デフレをもっとひどくする。その道をやろうとしているのが、今、政府が進んでいる道だと思うんですね。やっぱりここを転換して、働くひとの所得を増やす。そのためには労働のルールをしっかりを作り直す。派遣法も抜本的に改訂する。均等待遇のルールを作る、これが必要です。

角谷:福島さん、行きましょう。

社会民主党・福島:10数年間起きてきたことは、企業は収益を上げたけれども、それがトリクルダウン(経済発展で富裕層が富んで格差拡大するものの、最終的に貧困層も豊かになるという経済学での考え方)しなかったということです。

ですから、賃上げ無くして、給料を上げること無くして景気回復なし。この視点がいまの内閣にありません。それと、さっきも申し上げましたが、規制改革会議は、労働法制、派遣を自由にすること、解雇のルールを自由にすること、というような、また限定正社員というのを提案している。これをやれば、さらにパート、派遣、契約社員が増えますし、労働条件が悪くなる。労働者、働く人たちの労働条件を向上するという提案が、今の内閣に無いんですよ。

この規制改革会議の雇用ワーキングチームの提案を実現すれば、明らかに雇用が悪くなり賃金が下がります。これの反省は無いのかと言いたいと思います。

角谷:では、山口さん。

公明党・山口:やっぱり何よりも経済成長。元の経済成長をしっかり図っていくということが重要だと思います。その上で、過去10年間で平均賃金が10%近く下がりました。これをまず取り戻すと。その上で、経済成長の中で、物価上昇率を上回る所得の増大、これを実現するということが重要だと思います。

企業の稼いだもの、これを分配できるように、政労使(政治・労働者・使用者)で協議をする機会を作って、この分配が適切に行われるようなルールを作ると。これによって賃金の上昇を確保すると、こういう取り組みが重要であり、それは、政府与党で決めた骨太方針の中にもこれが入っているわけであります。是非、これを確実に実行できるような政治の力を得ることが重要だと思います。

角谷:谷岡さん。

みどりの風・谷岡:260兆円(の内部留保)をため込んでいる大企業が、270兆円になったから、280兆円になったからといって、突如それを、皆さんの所得増のために給料を上げるでしょうか。それは280兆円、290兆円と、たまっていくだけではないでしょうか。

かつて雇用が安定してきたときには、先輩は後輩をしっかりと教育するために、いろいろな助け合い、分かち合い、そしてノウハウを継承するということをやったものです。でも、いま下手に後輩を育てたら自分がリストラされると。そういう状況の中で、お互いが競争を中でやる、日本人の良き分かち合い、協調、助け合い、そして継承というものが途切れてしまった。

その結果、企業の競争力は低くなりこそすれ、決して高くなることはありません。日本人の「先輩が後輩の面倒を見る」、そして「後輩は先輩に感謝する」その構造の中でこそ助け合い分かち合いと、この日本人の美意識というものを活かさなければならないと。そういうことの中で、今のお考えは違うと思っています。

角谷:はい、では渡辺さんいきましょう。

みんなの党・渡辺:1990年代なかばに、世界経済は一体化をしたんですね。そうすると、世界の大競争が起こりました。その中で、じゃあ、日本以外にデフレに陥った国があるのか、と言ったら、日本だけなんですよ。結局、日本は金融パニックを起こして、デフレ経済に入っていった。

増税をやっちゃいけないときに増税をやったり、金融引締めをやっちゃいけないときに金融を引き締めた。そういう国家経営の失敗が、長引くデフレ経済を作ってきた。デフレだから賃金が下がるんですよ。

じゃあ、デフレから脱却をして、たとえば物価が2%上がったら、失業率は1%低くなるんですね。こんなことは経済学の常識なんです。こういう、物価と失業率、こういう当たり前の常識がですね、国家経営に全く反映されてこなかった、そこが問題なんです。だから、今やるべきは、増税をしてはいけない、増税を凍結をすべきです。

角谷:では、安倍さん。

自民党・安倍:経済においてはですね、しっかりと結果を見ていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように、昨年の7月、8月、9月は、マイナス3.6%だったんですから。それがプラス4.1%になりました。

そして、その中において、この雇用においてもですね、有効求人倍率が0.9になった。3ヶ月連続です。そしてそれはですね、まさにリーマン・ショックの前に戻ったんですよ、4年ぶりにですね。そして同時に、たとえば今年の夏、65社、大手ではありますが、ボーナスが増えます。しかもその伸び幅はリーマン・ショック以前、バブル以来の最大の伸びをするんですね。ずっとなかったんですから。新しい政策によってそこまで変わってきた。

もちろん、まだそれは津々浦々まで広がっていない。しかし、そういう動きが出てきたのは、この10数年間なかったんですから。これやっと動いてきた中にあって、我々はそれを約5ヶ月間でやりました。まさに、これからもっともっとそれは広がっていくということは申し上げておきたいと思います。

角谷:はい、有り難うございました。経済政策についてはですね、もちろんいろいろな側面があります。景気の動向、それから、給料が上がる、雇用の問題、様々なテーマがありますから、この時間で全部を網羅することはできませんけれども、この議論の中でいろいろなことをまた改めて考えていきたいと思います。

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自由民主党 安倍晋三 総裁

2013年6月 ネット党首討論会

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