日本の長期金利上昇抑制、日銀効果か?【争点:アベノミクス】

株高・円安や欧米長期金利の上昇にもかかわらず、日本の長期金利の上昇が限定的だ。日銀による異次元緩和の導入から3カ月が経過し、大規模な国債買い入れに伴う長期金利上昇抑制の効果が発揮されている可能性が大きい…
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株高・円安や欧米長期金利の上昇にもかかわらず、日本の長期金利の上昇が限定的だ。日銀による異次元緩和の導入から3カ月が経過し、大規模な国債買い入れに伴う長期金利上昇抑制の効果が発揮されている可能性が大きい。

今後は消費者物価指数(CPI)の上昇などに伴う成長・インフレ期待とのせめぎ合いが、長期金利の行方を左右しそうだ。

8日の東京市場では、5日に発表された6月米雇用統計が市場予想を上回る好調な内容になったことを背景に、日経平均

一方、米国市場では雇用統計を受けて米国債価格が急落。長期金利(米10年国債利回り)は20ベーシスポイント(bp)も急上昇し、2.7%台を付けた。

こうした外部環境にもかかわらず、日本の長期金利の上昇は限定的。午前の取引では一時0.880%に上昇したものの、上げ幅は2.5bp程度。

相次ぐ日本の良好な経済指標や米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和縮小観測などをめぐって、株式、外為、米債市場が乱高下を繰り返す中でも安定して推移している。

特に連関性が強い米長期金利は5月初旬以降、これまでに100bp以上も上昇しているが、日本の長期金利は5月下旬に一時1.0%に上昇したものの、その後は米金利上昇に反して低下。6月に入ってからはほぼ一貫して0.8%台での取引になっている。

市場で発行される国債の7割程度も吸い上げる大規模緩和の金利上昇抑制効果が、導入から3カ月を経て、ようやく発揮されてきた格好だ。導入当初こそ前例のない大規模な国債買い入れによって市場が動揺し、長期金利は乱高下を繰り返したが、この間、市場との対話を通じて国債買い入れの頻度を増やし、1回あたりの買い入れ額を縮小するなど、日銀はオペ運用の弾力化を進めてきた。

黒田東彦総裁は、これまで長期金利の乱高下に対して市場安定に努めるとともに、大規模な国債買い入れを継続することで、金利低下圧力は「さらに強まっていく」と力説してきた。

実際に最近の国債買い入れでは、これまで応札倍率が4倍を超えていた残存3年超5年以下が3倍台に、3倍を超えていた残存5年超10年以下が2倍台に低下している。

日銀に売る国債が次第に減少し、需給がひっ迫しつつあるといえる。このため日銀では、市場不安定化に備えて6月会合で導入を見送った固定金利オペの期間延長を温存しながらも、当面は現行の国債買い入れを継続することで、長期金利に低下圧力をかけ続ける方針を継続するとみられる。

ただ、日銀が市場から大量の国債を吸い上げているため「流動性が細っている。見かけは安定しているが、予想外のイベントが発生すれば、金利が跳ねるリスクは残っている」(地銀関係者)との声があるのも事実。

また、CPIの前年比上昇率のプラス圏への浮上が時間の問題となる中、今後は成長・インフレ期待の高まりが長期金利の上昇圧力を強める可能性も否定できない。

日銀では、2年程度で2%の物価安定目標を達成するには、インフレ期待の高まりに伴う実質金利の低下が重要とみており、過度な名目金利の上昇が起きないよう、今後も市場動向を注視していく考えだ。

(伊藤 純夫 竹本 能文 編集;田巻 一彦)

[東京 8日 ロイター]

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