日本だけが経済成長を維持=公共事業の大幅な拡大が主な理由(IMF)【争点:アベノミクス】

国際通貨基金(IMF)は7月9日、最新の世界経済見通しを発表した。主要国は軒並み前回予想から引き下げとなっている中、日本だけが成長を維持している構図が鮮明となっている。理由は…
Japanese ten-thousand yen banknotes are arranged for a photograph in Kawasaki, Kanagawa Prefecture, Japan, on Monday, Dec. 10, 2012. The yen is losing its status as a haven for risk-averse investors as Japan lurches toward a chronic trade deficit and the front-runner to become the next prime minister calls for unlimited central-bank stimulus. Photographer: Akio Kon/Bloomberg via Getty Images
Japanese ten-thousand yen banknotes are arranged for a photograph in Kawasaki, Kanagawa Prefecture, Japan, on Monday, Dec. 10, 2012. The yen is losing its status as a haven for risk-averse investors as Japan lurches toward a chronic trade deficit and the front-runner to become the next prime minister calls for unlimited central-bank stimulus. Photographer: Akio Kon/Bloomberg via Getty Images
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国際通貨基金(IMF)は7月9日、最新の世界経済見通しを発表した。全世界の2013年の実質GDP成長率は前回予想(4月)から0.2ポイント引き下げ3.1%とした。主要国は軒並み前回予想から引き下げとなっている中、日本は0.5ポイントの上方修正となった。欧州の景気低迷と中国の失速で世界経済が鈍化する中、公共事業の増大によって日本だけが成長を維持している構図が鮮明となっている。

主要国のうち米国だけは下方修正とはなっているものの、堅調な推移が続いている。2013年の予想GDP成長率は1.7%で日本以外の主要国ではもっとも高い。

欧州ではこれまで経済の優等生だったドイツが0.3ポイントの下方修正となり、2013年は0.9%の成長にとどまる見込み。一方ドイツとの差が開く一方だったフランスはマイナス0.1ポイントの下方修正にとどまり、結果としてドイツの相対的な差が縮まった。

英国は0.9%のプラス成長とまずまずな状況。中国については、0.3ポイント下方修正し、7.8%成長とした。中国政府は7.5%程度の成長を目標として掲げているが、IMFではこの目標を達成可能とみていることになる。

主要国で突出しているのが日本である。日本は4月の予想から0.5ポイントの上方修正となり、2013年は2.0%のプラス成長となる見込み。上方修正の主な理由は公共事業の大幅な拡大である。今年1月に成立した2012年度補正予算(総事業費20兆円、政府支出10兆円の緊急経済対策)の効果が数字に反映された(本誌記事「IMFが日本との協議を終了。アベノミクスを評価するも、構造改革とセットにすべきと指摘」参照)。

公共事業は予算が立てられてから実際に執行されるまでにタイムラグがある。1月に決定した公共事業の増加は、4月以降になってようやく建設業界への受注額増加という形で顕在化してきている。今年いっぱいは公共事業の効果が続くが、来年度以降はこの効果が消滅する。IMFでは2014年の日本の成長率は1.2%に減速すると見込んでいる。

世界経済が失速する中、期せずして日本が世界経済の機関車役となっているが、この状態は一時的なものに過ぎない。

欧州は債務危機発生以後、一貫して緊縮財政を進めているほか、米国は大規模な財政再建をスタートさせている。中国は政府支出の一律5%強制削減を決めたばかりだ。日本だけが、国債を大規模に発行して、大型の公共事業を行っている。日銀が量的緩和で国債を買い入れているとはいえ、大型の財政支出は当然、持続可能なものではない。

IMFでは2014年には世界景気は持ち直すとの見方を今のところ崩していない。日本にとっては公共事業の効果が終了する来年以降、世界経済拡大の波に乗れるのかが重要なポイントとなる。

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