最先端の技術を盛り込み、2011年にデビューしたボーイングの新型旅客機「B787」。しかし運行開始直後から、技術的なトラブルが相次いでいる。主だった問題を時系列で追ってみよう。
■1月、ボストンでJAL機が発火事故を起こす→運行停止に
大きく報じられることになったのは、1月のJAL機の発火事故だ。
米マサチューセッツ州ボストンのローガン国際空港で7日午前、成田から到着した日本航空(JAL)の最新鋭機「ボーイング787」(ドリームライナー)の機内で火災があった。乗客乗員は全員が降りた後でけが人はなかった。消防士1人が消火活動中にけがをした。
(CNN.co.jp「日航機が駐機中に出火、乗客降りた後 米ボストン」より 2013/1/8)
事故が起こった際の管制官とパイロットの交信を記録した動画
これを問題視した米連邦航空局は、B787の運行を停止。原因究明に乗り出す。
米連邦航空局(FAA)は16日、トラブルが相次いでいるボーイング787型機(ドリームライナー)について、バッテリーの不具合に関連したリスクの解消が確認されるまで、運航を停止するよう航空各社に命じた。各国の航空当局に対しても並行した対応を呼びかけている。
(CNN.co.jp「米航空当局、ボーイング787の運航停止を命令」より 2013/1/17)
■4月末、ボーイング「改良した」と安全性強調
4月末、ボーイングは改良したバッテリーの安全性を強調、3カ月以上と長引いた運行停止措置を何とか解除しようとする。
米運輸安全委員会(NTSB)は23日、米航空機ボーイングの787型機のバッテリー発火トラブルに関する公聴会を開き、ボーイング側は改良したバッテリーの安全性を強調した。
(MSN産経ニュース「B787の新バッテリーの安全性強調、米公聴会でボーイング」より 2013/4/24)
■5月、改良済みの機体がANAに納入
米航空機大手ボーイングは14日、運航再開が認められた最新鋭機「787」をワシントン州で全日本空輸に引き渡し、顧客への納入を再開したと発表した。
(MSN産経ニュース「ボーイングがB787の納入再開、全日空に」より 2013/5/15)
■6月、JALとANAで運行再開
全日空と日本航空は1日未明、ボーイング787型機の定期便の運航を4カ月半ぶりに再開した。バッテリートラブルで運航停止が続いていたが、全機の改修が終了。両社とも初便はほぼ満席となり、午前1時過ぎに東京・羽田空港を離陸した。
(朝日新聞デジタル「B787型機、定期便の運航を再開 4カ月半ぶり」より 2013/6/1)
■運行再開以降もトラブル続出
しかし、運行再開後もトラブルが頻発する。
6月22日にはANAの羽田-秋田便で不具合が見つかり、別の機体に変更する措置が取られた。
22日午前7時半ごろ、羽田発秋田行き全日空871便ボーイング787の出発前の点検で、機体の姿勢を制御するシステムの一部に不具合が見つかった。別の787に変更し、乗客約110人は1時間16分遅れで出発した。
(MSN産経ニュース「秋田行き787に遅れ 全日空、5月納入の新造機」より 2013/6/22)
7月12日には、エチオピア航空のB787がロンドンで出火。
ロンドン・ヒースロー空港で12日、駐機中だったエチオピア航空 ETHA.ULのボーイング787型機(ドリームライナー)から出火し、滑走路が一時閉鎖された。搭乗者はいなかった。
このニュースを受け、米国株式市場でボーイング BA.N の株価は一時7%急落した。
ヒースロー空港の広報担当者は、機内から出火したと説明した。
(ロイター「エチオピア航空のB787型機、英空港で出火 バッテリーとの関連不明 」より 2013/7/13)
この事故に関して、欧州航空安全庁は「運行停止は時期尚早」とコメント
7月17日(ブルームバーグ):エチオピア航空が保有する米ボーイング 製最新鋭旅客機「787」型機(ドリームライナー)から出火した問題で、調査を進めている欧州の航空安全当局は787型機が近く運航停止を命じられることはないと述べた。
欧州航空安全庁(EASA)のドミニク・フーダ報道官は「787型機が運航停止になるかどうかを話すのは時期尚早だ」と電子メールで述べた。
(Bloomberg「ボーイング787型機、近く運航停止にならない-調査当局」より 2013/7/17)
7月18日にはJALのボストン-成田便で燃料ポンプの不具合。ボストンに引き返す事態に。
アメリカ東部、ボストンの空港から成田空港に向かっていた日本航空のボーイング787型機が18日、燃料ポンプの不具合を知らせるランプが点灯したため途中でボストンの空港に引き返しました。
(NHKニュース「B787日航機 米の空港に引き返す」より 2013/7/18)
■トラブルが相次ぐ理由は?
トラブルが相次ぐ理由は、根本となる原因を解明していないからでは、との声も。
調査の結果、バッテリー内部で制御不能な高熱を発する「熱暴走」が生じていたことが判明。しかし、なぜ熱暴走が生じたか、の根本原因はなかなか解明できず、長期にわたり、運航が再開できない状況に陥った。主力航空機の運航停止措置では、1979年に起きた墜落事故を機に米ダグラス社(現ボーイング)の「DC10」が、日米航空当局などから約1カ月間、停止させられたケースがある程度で、787の運航停止は異例の長さとなった。
原因が分からず、運航再開がいつかなうか先行きが見通せない中、米ボーイング社が打って出たのは、約80項目に及ぶ具体的な原因を想定したうえで、それぞれの原因に応じた改良策をあらかじめ講じる手段だ。
(現代ビジネス「ボーイング787運航再開 トラブルの根本原因不明 改善策で安全性強調[航空]」より 2013/6/10)
運航再開後も787は国内で計器不具合などのトラブルが相次いでいる。航空安全コンサルタントの佐久間秀武氏は「個々のトラブルは根本でつながっていることもある。原因不明の段階での運航再開には無理があったのでは」と話している。
(MSN産経ニュース「【B787出火】バッテリー発煙との関係は不明も 専門家「原因不明で再開 無理があった」」より 2013/7/14)
トラブルが人命に直結する、航空機の安全性。みなさんはB787のトラブルについて、どう思いますか?
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