不妊治療助成、「42歳まで」 早期治療促せるか

体外受精などの不妊治療の公費助成の見直しについて議論している厚生労働省の検討会は29日、女性の対象年齢を42歳(43歳未満)までに制限する案をまとめた。年間の回数制限を撤廃する一方、現在最大10回認められている助成回数は原則6回に減らした。によると、対象者の年齢層が上がっており...
Clicked in a maternity shoot for one of my close friend in Japan.
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体外受精などの不妊治療の公費助成の見直しについて議論している厚生労働省の検討会は29日、女性の対象年齢を42歳(43歳未満)までに制限する案をまとめた。年間の回数制限を撤廃する一方、現在最大10回認められている助成回数は原則6回に減らした。時事通信によると、対象者の年齢層が上がっており、治療の有効性や安全性に考慮して、年齢制限を設ける必要があると判断した。

不妊治療では年齢が上がるにつれて治療効果が出にくく、流産や合併症も増えることが指摘されている。晩婚化が進み、助成件数が増えるなかで、検討会では、より効果的な助成のあり方が議論されてきた。

産経ニュースによると、検討会は、43歳以上になると流産率が50%を超え、出産に至る割合は50回に1回に下がることなどを指摘。さらに、体外受精は「6回までの治療で9割以上の人が妊娠・出産している」との医学的データをもとに、助成回数の上限を6回(40歳以降に不妊治療を始めた場合は3回)と決めたという。

これまで、検討会の作業チームが出産につながる割合のほか妊娠による合併症の発症などを年齢ごとに詳しく分析した結果、助成対象を「42歳以下」か「39歳以下」に限るという2つの案をまとめており、会合では「39歳以下」とする案も検討された。しかし、産経ニュースによると、結婚や初産年齢の上昇に伴い、不妊治療を受ける人の3分の1は40歳以上となっている現状を重視し、42歳以下とすることで一致したという。

年齢制限により、早い時期に集中的に治療を受けられるようにする狙いがあるが、出産時期の高齢化が進み、不妊治療を受ける女性は増えており、子供を望む夫婦から反発もありそうだ。

■なぜ、年齢制限を設けるのか

日本の不妊治療は、世界でも「特異な状況」と言われている、とNHKは報じる。不妊治療を行う医療機関は約600軒、体外授精の件数は年間24万件で、いずれも世界最多。体外授精を受ける人の30%が40歳以上で、他の先進国の2~4倍に上る。高齢のためになかなか成果が出ず、治療が長期化し、治療費に1千万円以上費やしたり、抑うつ状態になってしまう人もいるといい、不妊治療で子どもをもつ以外に、選択肢が少ないという現実もあると指摘する。

不妊治療の公的助成に年齢制限を設ける背景には、晩婚化や技術の進歩で助成が増え続けていることがある。

人工授精や体外受精などの不妊治療の多くは公的医療保険が使えず、心身の負担や治療費の確保が重くのしかかる。朝日新聞デジタルによると、不妊治療ではまず人工授精を試みる。その後、卵子と精子を混ぜて受精させる体外受精、卵子に針を刺して精子を注入する顕微授精と、段階的に進めるのが一般的だという。人工授精は1回数万円だが、体外受精や顕微受精は数十万円かかる。

助成制度はこうした経済的負担を軽くするために2004年度に始まった。現在は年収730万円までの夫婦を対象に、1回あたり最大15万円を助成している。回数は5年間で10回まで。さらに1年目は3回まで、2年目以降は年2回までと制限があるものの年齢制限はない。助成件数は04年度は1万7千件だったが、その後の対象拡大もあり07年度は6万件、12年度は13万5千件に増え、国と自治体の負担は約200億円に膨れた。助成があることで、やめる時機を逃す患者もいるとの指摘も出ていた。

■不妊治療経験者は・・・

東京都のフリーライター、島田宣子さん(44)は結婚3年目の39歳のとき、婦人科を受診し、8回目の人工授精で妊娠したが、7週で流産した。ホルモンのバランスを整えるなどしばらく体を休め、再び治療を開始したときには40歳。今度は体外受精を試みたが、妊娠にはつながらなかった。治療を4年間続けた。かかったお金は233万2205円、245日の通院で打った注射は116本にのぼった。

島田さんは産経ニュースに次のように答えている。


「治療を始めるときは軽い気持ちだったけど、終わらせるには、出産するかあきらめるしかないんです」と“辞め時”にも悩んだ。

仕事をセーブせざるを得ず、「夫ががんばって働いてためたお金を、結果が出るかわからない不妊治療に使ってしまっていいのか」とも悩んだ。治療と並行して生命保険の見直し、仕事復帰の準備など夫婦で生きていくための準備を始め、43歳で最後の体外受精に臨んだ。妊娠はしなかったが、昨年末、自らの体験を「シアワセノカタチ 39歳からの不妊治療」という書籍にまとめた。

島田さんは、検討されている年齢制限について、島田さんは「公金を使う以上、ある程度の制限は仕方ない」と話す。ただ「保険適用を広げるなどして、早期に安く治療を始められる体制を整えることも重要」と指摘している。
(産経ニュース「39歳から不妊治療経験の女性『早期に安く治療の体制整備を』」 2013/5/3 00:50)

検討会委員で不妊体験者を支援するNPO法人「Fine」の松本亜樹子理事長は朝日新聞の取材に次のように話している。

「年齢制限は、高齢出産のリスクなどを考えるとやむを得ない。ただ、回数制限は支給される総額が大幅に減ることになり、現在の経済状況では非常に厳しい。移行期間は長くとってほしい」と注文をつける。(朝日新聞デジタル「膨らむ公費負担、背景 知識普及、求める声 不妊治療助成に年齢制限」2013/7/30)

年齢制限については、舛添要一元厚生労働相がテレビ番組で「個人差があり、40歳を超えて産んだ人も多い。産むための条件整備は社会全体で改革しないとならず、年齢制限だけではいけない」などと述べるなど、反対する声もある。前述の舛添元厚労相の発言を紹介した「不妊治療助成に年齢制限、「42歳以下」と「39歳以下」の2案で議論」に寄せられたコメントでも様々な意見があがる。

genienookuさん

不妊症そのものを助成するのに年齢制限はいらないと思います。

若く早期の助成で妊娠率が高くなるなら早めの支援が必要だし、年齢が上がり負担が多くなる場合も支援が必要。

身体的な負担を配慮した制限ならまだ理解できる。

同時に養子や里親制度の制限や支援の見直しもして多様な家族形成に対する理解も深めていく必要もあると思う。

asdfghjklkjhgfdsaさん

不妊治療はやったことが分からない人は、誰もその辛さが分からない。

月額30万円ずっと払い続ける辛さを皆さんも体験してみてください。

経験したことの無い人が書くコメントは、非常に適当に感じる。

だってその経験が無いのだから辛さが分かる訳が無い。

毎月30万円払えば、そりゃ少しは助成金も使いたくなる。

それと問題は保険適用されていないという点、そして会社が休めないという点、それも大事なこと。

Tonari no totoroさん

私は年齢制限には賛成です。ただし、生活が苦しい方でも治療ができるよう、補助額を増やすべきだと思います。

個々の人生が確率で測れないのは当然ですが、回数を重ねれば金銭的な負担も大きくなります。体外受精には一回20万から50万という金額がかかるとのことで、このような金銭的な負担は、多くの家庭で不妊治療の受診をためらわせる原因となっています。加えて、受診には男性の協力も欠かせないため、時間とお金の両面で生活に余裕のある方に治療が限定されているのが現状です。

フランスでは、補助は42歳まででストップされますが、人工授精が6回、体外受精が4回まで無料で行えるそうです。年齢制限をなくすのではなく、女性が早く治療を受けられるようにし、またそれを貧富の別なく誰でもが受けられるようにすることの方が、少子化を解消するうえでも、女性個人の人生にとっても良いと思います。

加えて必要なのは、男性側の意識改革です。不妊の原因が男性にある場合も当然あるのですが、その際に男性の側はどうしても仕事を優先して、「また今度な」と受診を回避してしまいがちです。妊娠は縁だという考え方もありますが、これに関しては夫婦間でよく話し合い、考えを共有すること、そしてその決断を職場や社会の側がバックアップすることが、解決には不可欠であろうと思います。

※不妊治療の助成を「42歳以下」までに制限する見直し案や不妊治療に対する支援について、みなさんのご意見をお寄せください。