新日鉄住金が賠償の意向 韓国の戦時徴用訴訟で敗訴確定時 「日本政府が頑張るべき」との意見も

朝鮮半島の植民地時代に徴用工として強制労働をさせられたとして韓国人4人が損害賠償を求めた訴訟で、被告の新日鉄住金(旧新日本製鉄)は韓国の最高裁で敗訴が確定した場合には賠償に応じる意向であることを明らかにした。ソウル高裁は、7月10日に、韓国人4人に請求通り計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じた。戦後補償問題で韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じた初めての判決だった。
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朝鮮半島の植民地時代に徴用工として強制労働をさせられたとして韓国人4人が損害賠償を求めた訴訟で、被告の新日鉄住金(旧新日本製鉄)は韓国の最高裁で敗訴が確定した場合には賠償に応じる意向であることを明らかにした。共同通信が報じている。

ソウル高裁は、7月10日に、韓国人4人に請求通り計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じた。戦後補償問題で韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じた初めての判決だった。新日鉄住金は判決を不服として最高裁に上告したが、同社は「もし最高裁で敗訴が確定した場合は世界規模で事業展開する企業として賠償に応じざるをえない」としているという。

産経新聞によると、新日鉄住金の訴訟をめぐっては、原告のうち2人が1997年に日本で同様の訴訟を起こしたが、2003年に敗訴が確定。韓国でも確定判決の効力を認め、1、2審で請求を退けたが、韓国最高裁が昨年5月、個人請求権を認め、審理を高裁に差し戻した。新日鉄住金側はソウル高裁判決を不服として、7月30日に上告手続きを取っていた。

元徴用工の賠償請求問題について、菅義偉官房長官は7月30日の会見で次のように述べた。

この日韓間の財産請求権の問題は、日韓請求権経済協力協定によって完全にそして最終的に解決済みだ。我が国の立場は一貫しており、引き続き、このような立場を外交ルートを通じて韓国側に伝えて行くことが大事だ

日韓請求権協定とは、日韓国交正常化に伴い締結された協定。日本が韓国に無償3億ドル、有償2億ドルを供与することで、両国及び国民の間で、相手側に対する「請求権」問題は「完全かつ最終的に解決されたと確認する」としている。

朝日新聞デジタルによると、韓国政府の官民合同委員会は2005年、国交正常化に伴う日本からの無償3億ドルの経済協力に「強制動員の被害補償解決の性格をもつ資金が包括的に勘案されていると見なければならない」との見解を示し、日本の主張を追認していた。しかし、7月10日の高裁判決はこの見解について「植民地支配に直結した不法行為による損害賠償請求権は、協定で解決されたとはみなせない」との解釈を示した。韓国政府のかつての見解と高裁判決が食い違う格好だ。

判決が確定し、新日鉄住金側が支払いを拒否した場合には韓国内の保有株式・債券や売掛金などの差し押さえを受ける可能性が高まる。産経新聞によると、新日鉄住金の幹部は「取引先にまで影響が及ぶ可能性があり、確定判決を無視するのは困難」としているという。

日本政府としては、日韓請求権協定で賠償請求問題については解決済みという立場を貫きたいが、一企業が外交問題まで抱え込むのは困難だ。

Twitterでは田母神俊雄氏が「日本政府が頑張るべき」とコメントするなど様々な意見が飛び交った。

※韓国の元徴用工の賠償請求問題について読者の皆さんはどう考えますか?コメント欄にご意見をお寄せください

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