ルイ・ヴィトンやエルメスがしのぎを削る"サプライヤー買収"競争、ワニ養殖場からバラ農園まで

ルイ・ヴィトンやエルメスなどの大手高級ブランドが、供給ラインの確保でもしのぎを削っている。ワニ園やバラ園など、世界各地でサプライヤーの買収に動いているという。
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ルイ・ヴィトンやエルメスなどの大手高級ブランドが、供給ラインの確保でもしのぎを削っている。ワニ園やバラ園など、世界各地でサプライヤーの買収に動いているという。

仏LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)

高級ブランド各社はこれまで、新興国を中心に世界で店舗展開を進めてきたが、現在では販売のみならず、供給ラインの確保でもしのぎを削っている。

仏エルメス

LVMHは先月、イタリアの高級カシミア衣料ブランド「ロロ・ピアーナ」の株式80%を20億ユーロ(約2625億円)で取得。アナリストらは、ロロ・ピアーナが今後、フェンディやセリーヌなどLVMH傘下のブランドにのみカシミアを提供し、ライバル企業への供給を中止する方針に切り替えていくと予想する。

一方、時計ブランドでは、スウォッチ・グループ

こうした動きは、高級ブランドが製造から店舗での販売に至るまで一貫して手掛ける「垂直統合型」に転換していることを示す。バーンスタインのアナリスト、マリオ・オルテッリ氏は、垂直統合型がブランドに競争上の優位性をもたらし、高品質の製品というイメージを強調すると指摘する。

企業によるサプライチェーンへの投資は多くの場合、約2000万─5000万ユーロ程度となる。LVMHは2011年、時計のダイヤル製造を手掛けるArteCadを6000万ユーロで買収し、シンガポールを拠点とするクロコダイル皮なめし工場Heng Longの株式51%を4700万ユーロで取得した。

<ジャスミンとバラ>

化粧品業界では、ディオール、シャネル、エルメスが製品原料の供給を確保するために、植物の生産農家と独占パートナーシップを締結してきた。

ディオールは、2014年に発表予定の香水やクリームに必要な原料供給に向けて、スイスとアフリカのサプライヤーと契約を結んだ。また、香水産業で有名なフランスのグラース近くに、ジャスミンとバラを生産するための土地も購入した。

シャネルもグラース郊外で香水「No.5」向けにジャスミンとバラを栽培しているが、輸送中に花が損傷するのを避けるため、畑の中に抽出機を設置している。

素材確保をめぐる動きは衣料業界にも広がっており、シャネルは昨年、スコットランドのカシミア製造会社を買収したほか、刺しゅう工房なども所有。クリスチャン・ディオールも昨年、パリの刺しゅう工房を買収した。

<「垂直統合型」に限界も>

さらに、ハンドバックを手掛けるエルメスやLVMHは、動物の飼育場も傘下に収めている。エルメスは米ルイジアナ州やオーストラリアに複数のワニ養殖場を保有。LVMHも昨年買収した皮なめし工場向けに、オーストラリアでワニ養殖場を購入した。

業界筋によると、今年に入ってなめし工場を買収したケリングはニシキヘビの養殖場に投資する可能性があるという。同社からのコメントは得られていない。

一方で、高級ブランドによる垂直統合型には限界も見えている。エルメスは、主要材料である子牛皮の供給が減少しているという問題に直面する。子牛皮の供給は食用の子牛と密接に関係するが、業者は子牛肉の需要低迷を受け、飼育数を減らしている。対照的に、高級皮革製品の需要は拡大を続け、高品質の皮革の価格は年間20─30%上昇している。

しかし、子牛の価値の約8割は食肉にあるほか、高級バッグに使用できるほどの良質な皮は全体の1─2割にとどまることなどから、エルメスが自社で子牛を飼育することは合理性に欠ける。

入手可能な皮革が減少していることを受け、エルメスは家畜向けワクチンに資金を提供するなどし、欠品を減らす地道な取り組みも行っている。

(原文執筆:Astrid Wendlandt記者、翻訳:本田ももこ、編集:橋本俊樹)

[パリ 23日 ロイター]

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