女性活用で経済成長 安倍政権の理想と現実のギャップ【争点:アベノミクス】

安倍首相が、成長戦略の一環として女性の活躍を重視していく方針を明らかにしたのは今年4月。経済政策において、初めて女性の労働力が大々的に取り上げられたとも言われており、海外からも注目されている…
Shinzo Abe, Japan's prime minister, listens during a news conference at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, on Wednesday, June 26, 2013. Abe wants to focus on the economy for the next three years, he said today at a news conference in Tokyo marking the end of a parliamentary session. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
Shinzo Abe, Japan's prime minister, listens during a news conference at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, on Wednesday, June 26, 2013. Abe wants to focus on the economy for the next three years, he said today at a news conference in Tokyo marking the end of a parliamentary session. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
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「女性の活躍で経済成長」 安倍政権の理想と現実のギャップとは

安倍首相が、成長戦略の一環として女性の活躍を重視していく方針を明らかにしたのは今年4月だった。経済政策において、初めて女性の労働力が大々的に取り上げられたとも言われており、海外からも注目されている。

ロサンゼルス・タイムズ紙では、日本社会で眠っている女性の労働力が持つ可能性を分析しながら、高学歴な人々が多いにも関わらず、結婚・出産が理由でその能力が活かされずにいる現状を、米国社会と対比している。

【米国と比べ男女で大きい収入格差】

まず、日本の労働力人口(15〜64歳の人口)は1990年代をピークに減少している。90年には約8500万人で国民の約70%を占めていたその数は、2050年には5500万人程度となり、約50%となる見込だという。

シンガポールにおける同じ期間の変動率も同様に約20%減とされているが、多くの先進国は10%減程度で、インドやフィリピンに限っては10%増と言われている(※1)。無論、労働力となる人口が増えるだけで経済が成長するわけではないが、重要な原動力であることに違いはない。

日本では、女性の雇用率を男性と同レベルに引き上げることで、800万人分の労働力が増加するとロサンゼルス・タイムズ紙では報じている。安倍氏が着目しているのはこの点だ。世帯所得が増加、消費拡大し経済も上向きになるという狙いだ。

一方で、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、正社員である米国の女性の収入は男性の81%(2010年時点)であるのに対して、日本では71%であるという。女性の雇用を増やすだけでなく、労働市場における男女平等の改善によって、さらに経済成長に影響を与えることができるだろう。

【社会全体、根本からの変革が必要】

同紙は取材を通して、日本では、実績があっても結婚・出産を機に退職し、復帰せずにいる女性が多いことを取り上げている。会社側から結婚や出産を理由に退職を強いられるケースも少なくない上に、そのような辞職が違法であるにも関わらず、公の場で訴える女性があまりにも少ないと指摘している。

また、日本人男性も家事に参加するようになってきたとはいえ、米国に比べて、日本人の父親は子どもと接する時間が3分の2であることや、親の介護や家事も女性が主に請け負っているため、仕事との両立が困難であると述べている。取材に答える日本人女性らは、この他、保育サービスの欠如なども訴えており、当事者たちからの声と政府が掲げる理想にはまだまだギャップがあるようだ。

総じて、根本的な男女平等の意識が改善されなければ社会は変わらないため、安倍政権の打ち出している女性の労働力活用に向けた変化には、時間がかかることが浮き彫りになったといえる。

※1 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2013」

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