オバマ大統領、シリアが化学兵器保有を認めたのに攻撃先送り表明 その真意は?

アメリカのオバマ大統領は10日夜(日本時間11日午前)、シリア情勢について演説し、シリアのアサド政権に化学兵器の放棄を求める国連安全保障理事会の決議採択を目指す方針を示した。アメリカ議会に軍事行動承認の決議案の投票延期を求めたことも明らかにした。対シリア攻撃は当面見送られ、国際社会による交渉が本格化する見通しとなった。

アメリカのオバマ大統領は9月10日夜(日本時間11日午前)、シリア情勢について演説し、シリアのアサド政権に化学兵器の放棄を求める国連安全保理の決議採択を目指す方針を示した。アメリカ議会に軍事行動承認の決議案の投票延期を求めたことも明らかにした。対シリア攻撃は当面見送られ、国際社会による交渉が本格化する見通しとなっている。MSN産経ニュースが伝えた。

オバマ氏は、シリアの化学兵器を国際管理下に置くとのロシアの提案について、武力を行使することなく、化学兵器の脅威を除去し得る「潜在的可能性」があると明言した。ただ、アサド政権が、化学兵器の国際管理というロシアの提案の受け入れを表明したことに関しては、アメリカが軍事行動の意思を示してきたことが要因のひとつだと主張。そのうえで「この申し出が成功につながるかどうかを判断するのは時期尚早だ」と述べた

また、オバマ氏は今回の演説の中で、もし軍事行動を取るにしても限定的なものになるとし、軍事行動を取る場合でも地上軍は派遣しないと述べている。「化学兵器の使用を抑止し、アサド大統領の力を削ぐという明確な目的を達成するための限定的な攻撃だ」と説明した。全体としては大統領演説のトーンは軍事攻撃を回避したいという、オバマ氏の本音が透けて見えるものだった。

■ オバマ演説、外交専門家はどう見る

オバマ氏の演説について、外交の専門家は議論の形勢を劇的に変化させる公算は小さいとみている。

ウォールストリート・ジャーナルに掲載された記事の中で、国務省の元中東問題交渉担当者アーロン・デービッド・ミラー氏は、オバマ大統領の演説が国民への呼び掛けというよりも、「経過報告」に近いものになった、と述べた。

また、元駐イラク米大使のクリストファー・ヒル氏は、大統領がシリア攻撃を慎重に進め、「非好戦的な戦士」を演じていると話した。演説は当初、シリアを攻撃しなければ米国の安全保障が危険にさらされかねないと訴えて、懐疑的な米国民を納得させることを意図していた。しかし、ロシアの予期せぬ提案や国際的な外交努力の進展で大統領の計算に狂いが生じた、とヒル氏は指摘した。

■ シリア、化学兵器保有初めて認める

シリアのムアレム外相は10日、化学兵器の製造をやめるとともに、その保管場所を国連やロシアなどの諸国に発表すると表明した。シリア政府は、アメリカを中心とする国際的な対シリア軍事行動を回避するため、外交的な可能性に飛びついた形だ。

ロシア国営テレビによると、ムアレム外相は声明で「われわれは化学兵器禁止条約への加盟を希望する。化学兵器に関する情報提供など条約が定めたあらゆる義務を順守する用意がある。化学兵器の製造を中止し、保管場所を明らかにし、製造施設をロシアや他の国連加盟国の代表に公表する用意がある」としている

シリアが化学兵器を保有していることを事実上認めたことになり、条約署名に前向きな姿勢を見せたことも含め、大きな方針転換となる。ロシア提案に真剣であることなどを国際社会に訴える狙いがあるとみられる

■ アメリカが反体制派に武器供与を開始、反体制派報道官述べる

シリアの反体制派スポークスマンは、10日当地で記者会見し、アメリカがシリアの反体制派に対する武器供与を開始したと述べた。

ロイターによると、反体制派のスポークスマンは「アメリカは反体制派最高軍事評議会(SMC)に、殺傷能力のない武器と、一部殺傷能力のある武器を供与しはじめている。SMCが構築したメカニズムが十分試され、殺傷能力のある武器が誤った勢力の手にわたることがないとアメリカが確信しているからだ」と述べた。

この発言は、供与した武器がシリア北部で活動するアルカイダ系「ヌスラ戦線」などのイスラム過激派に流れるのではないかとのアメリカの懸念に言及したものとみられている。

■ 国連、シリアで虐殺9件確認

国連人権理事会が任命したシリア内戦に関する国際調査委員会は11日、最新の報告書で、昨年4月から今年6月にかけて同国で市民に対する虐殺行為が少なくとも9件あったことを確認したと明らかにした。それぞれ約250人から数十人の犠牲者が出たとみられるという。47NEWSが伝えた。

虐殺は中部ホムスやハマなどで起き、8件はアサド政権やその支持グループ、残り1件は反体制派によるものだという。

■ アメリカ上院、外交解決とん挫ならシリア軍事行動決議案を来週採決も

シリア問題の外交的解決への取り組みが失敗に終わった場合、アメリカ上院は来週にも対シリア軍事行動を認める決議案の採決に着手する可能性がある。

上院外交委員会のベン・カーディン委員(民主党)は「上院の採決時期に関する戦略は、政府との間で決めることだ」とし、「来週の可能性がある。その可能性を排除しない」と述べた

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