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自転車事故増加、事故を防ぐために必要なこととは?

今年の6月、道路交通法改正で注目された点のひとつが、自転車の悪質運転への罰則が強化されたことだ。
時事通信社

今年の6月、道路交通法改正で注目された点のひとつが、自転車の悪質運転への罰則が強化されたことだ。

改正道交法では、信号無視や、飲酒しての運転といった違反に対し、各自治体の公安委員会は「自転車運転者講習」の受講を命じることができると定めたほか(第百八条の三の四)、以前から義務づけられている自転車の車道左側通行に加えて、車道に路側帯がある場合にも通行できるのは道路左側の路側帯のみと明記(第十七条の二)。これまで路側帯では左右の双方向の通行が可能だったが、左側通行のみに限定されたことになる。

背景には、全交通事故における、自転車の関連する交通事故の割合の漸増傾向がある。2001年の全交通事故数に占める自転車事故の割合18.5%(全交通事故件数947,169件、自転車関連事故件数は175,223件)に対し、2011年は20.8%(全交通事故件数691,937件、自転車関連事故件数は144,018件、※2012年10月5日警察庁交通局交通企画課データ)。

さらに東京都内だけをみると、この割合は36.0%(※警視庁交通総務課調査分析係)と高く、総事故件数こそ減少しているものの、まだまだ解決すべき問題をはらんでいるといっていい。

もうひとつ、自動車を運転する人にとっては、自転車事故の実に8割以上が自動車との事故だというのは見逃せない数字だろう(2012年、自転車事故全体132,048件−第1当事者事故20,891件= 111,157件、※日本損害保険協会)。自転車と自動車の事故は大ケガや致死傷につながる可能性も高い。言うまでもなく、自動車の運転には細心の注意が必要となってくる。

公益財団法人日本サイクリング協会(JCA)の保険担当者は「日本の道路交通法では、依然、自動車<自転車<歩行者といった図式で、右に行くほど法律で守られています。だから自動車の側で、事故防止への意識を強く持たなくてはならないでしょうね」と話す。

「もちろん、全ての責任を自動車のドライバーや自動車メーカーに押しつけるのは間違っていると思います。道路構造の改善や、自転車の走行マナー、歩行マナーの啓発など、環境改善にも努める必要があります」(JCA)。

そのような背景の折、先月末にボルボ・カー・ジャパンが発表した「歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ システム(ヒューマン・セーフティ)」は、この自転車−自動車事故の軽減へ向けて踏み出した、大きな一歩だったといっていいだろう。

この機能は、自動車の時速4km/hから80km/hで作動し、自車の前方を同方向に向かって走る自転車を、フロントグリル内に組み込まれたミリ波レーダーやフロントガラスに装着されたデジタルカメラと赤外線レーザーで検知して、ドライバーが自転車に気が付かず接触しそうになった場合、フルオートブレーキを作動させてくれる。

分かりやすいケースでいえば、自動車で走行中に何かしらの障害物を避けようとした自転車が急に目の前へ飛び出してきてひやりとするケースにおいて、音と光による警告とともに急ブレーキを自動でかけ、事故を未然に防いでくれる。

「大変素晴らしい機能だと思う」とは前述のJCA保険担当者。一方で、いくつかの懸念も隠さない。「高さ70cm以上の位置にあるリフレクターに反応するという作動条件は、この素晴らしい機能を著しく損ないかねません。近年増加傾向にあるロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイクは、その目的・機能のため、リアにリフレクターをつけていない。

さらに、フルオートブレーキの作動によって急停止した場合、直後を走行中の自転車や自動車が追突する恐れもあるでしょうね。」と自転車側の事情も吐露する。

ボルボ・カー・ジャパン側も、ボルボ車を購入したドライバーに、サイクリスト検知機能、自動ブレーキの特徴を十分に説明し、あくまでもドライバーをサポートする補完的な機能であることも含め、理解促進に努めているが、各メーカーによりこれらの安全機能の動作が異なることは注意する必要があるだろう。

各都道府県警にもその認識は強く、自転車にまつわる教育の場は増えている。

いずれにせよ、こういった最先端のセーフティ機能の普及と自転車専用道など道路構造の整備などハード面が発展していくと同時に、自動車と自転車双方の走行マナーが向上するなどソフト面も備わっていけば、自転車対自動車の事故は削減することができる。

「“どっちがより悪い”ではなく、相互に思いやり、譲り合いなどを行って、事故を回避すべき」。

自動車、自転車、それぞれの歩み寄りが、より安全な社会をつくり出す。

もちろん、サイクリスト機能のようなテクノロジーの進化が人々の活動を安全面でサポートしてくれるが、それを使うのは最終的に「人」。東日本大震災後、自転車を利用する人たちも増加している。人々が、自分たちの使う移動手段がどういうものかを理解し、ルールに従って正しく使用することで、社会の安全性は向上していくのではないだろうか。

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