雇用形態を「正社員から請負契約に変えたい」と会社に言われたら?注意すべき5つのこと

「会社が苦しいので正社員から請負契約にしてほしい」と会社から言われたとき、注意すべき5つのこととは?
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「正社員から請負社員になって」と会社に言われたら? 注意すべき5つのデメリット

「会社が苦しい。正社員から請負社員になってほしい」。そんな打診を受けたら、あなたならどうするだろうか。こうした例は、現実にもあるようだ。ネットの大手質問サイトには、勤続10年の製造業正社員が、会社の経営難を理由に「請負社員になってほしい」と要請された、という相談が寄せられている。

自分にとって「不利」な要請であることは、何となくはわかる。しかし、お世話になった会社が大変な時期を迎えたいま、自分の立場が少し変わるだけならと考えたり、職場の人間関係上断り切れなかったりで、承諾せざるを得ない……と判断する人もいるだろう。

だが、その言葉にうなずく前に、まず「請負社員」なるものと正社員との違いについて、きちんと把握しておくべきだ。両者の違いはどこにあるのか。労働問題にくわしい田村ゆかり弁護士に聞いた。

●「請負」と「雇用」は違う契約のかたち

「最初に言っておきますが、『請負社員』というのは正確な表現ではありません」

では、正確には何と呼ぶべきなのだろうか?

「その前に、『雇用』『請負』『委任』など、働く際に使われる代表的な契約について、順番にご説明したいと思います」

田村弁護士はこのように述べ、それぞれの契約形態について、次のように説明する。

「まず『雇用』は、他人の『労務それ自体』を利用することを目的とする契約です。いわゆる正社員・契約社員など、出勤時間と退勤時間が決まっていて会社の業務に専念する、というイメージです」

これは、いわゆる「会社員」のイメージだ。

「次に『請負』は、仕事の完成、すなわち労務によって行われた『一定の結果』の給付を目的とする契約です。たとえば注文主から仕事を請け負う大工さんは、家を一軒完成させる、というのが仕事ですよね」

請負は、雇われるのではなく「お金をもらって結果を提供する契約」ということだ。専門技能を活かすタイプの仕事に多そうだ。

「最後に『委任』は、労務提供者による相当に『自由な判断』のもとで、他人の法律関係やそれ以外の『事務の処理』を目的とする契約です。たとえば私たち弁護士は、依頼者から『委任』を受け、専門知識に基づいた判断をしています」

委任は、請負に比べても仕事をする側の自由度が高く、「お任せされた」という言葉のイメージに、より近くなるようだ。

●「請負社員」という言葉は正確な表現ではない

さて、ここまで分類を見てきたわけだが、「請負社員」というのはどれにあたり、正社員とどのような違いが生じるのだろうか。

「正社員から請負社員になるというのは、『雇用』から『請負』に契約関係を変更する、という意味でしょう。その場合、いったん退職して、新たに会社と請負契約を結ぶということになると思います。

『社員』という言葉は通常、雇用契約を結んだ従業員のことを意味するので、『請負社員』という言葉は正確な表現とは言えないのです」

つまり、「請負」ということは、会社に雇われるのではなく、何らかの「成果」に対してお金が支払われる形になるわけだ。それはもう「社員」とは言いがたい、別の働き方なのだ。

「請負契約は、その会社から請け負った仕事をする以外の時間に、他から請け負った仕事を同時にこなせるなど、自由な働き方ができるというメリットもあります。

しかし正社員と比べると、たとえば以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

(1)特定の仕事が終わった時点で会社から契約解消される

(2)報酬額が減る

(3)国民健康保険・国民年金に自ら加入して保険料等の支払いをすることとなる

(4)時間外手当がなくなる

(5)退職金がなくなる(一旦退職する際に支払われ、その後は発生しない)」

ここまでくると、単なる立場の変更とは到底言えない。腕一本で生きていく、職人的な仕事の仕方を誰もができるとは限らない。田村弁護士は「そのような要請に応じるかどうかは、弁護士に相談するなどして、慎重に判断されることをお勧めします」とアドバイスを送っていた。

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【取材協力弁護士】

沖縄県那覇市において、でいご法律事務所を運営。

平成25年度沖縄弁護士会理事。同年度沖縄県包括外部監査補助者。経営革新等支援機関

事務所名: でいご法律事務所

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