日本版NSC設立法案、迅速な成立がスムーズな国会運営のカギ【争点:安全保障】

日本版NSCの設立に関する法案の、実質的な審議が始まる。安倍首相は、今週中に法案を衆院通過させ、11月中旬までの成立を目指すという。しかし、野党からは与党のペースで国会運営が進むことをけん制する動きがあるため、この議論が迅速に進むかが、今国会の鍵を握りそうだ。
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日本版NSCの設立に関する法案の、実質的な審議が始まる。この審議がスムーズに進むかどうかが、今回の臨時国会をスムーズに進める鍵となりそうだ。

政府は10月28日から、外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設立するための法案を、衆議院に新たに設置された「国家安全保障に関する特別委員会」で審議開始する。

日本版NSCの主な目的は、日本の外交や安全保障の意思決定を、より迅速に行うことにある。その肝となるのが「4大臣会合」だ。

現在、国防に関する重要事項や緊急事態への対処については、9大臣が出席する「安全保障会議」で議論される。しかし、事案は安全保障会議後にもう一度開かれる閣議で決定してやっと効力を持つため、会議の二度手間や、スピードが落ちることなどが問題となっていた。そのため、首相、官房長官、外相、防衛相で構成される4大臣にメンバーを絞り込むことで、機動的に政策を決定したいというのが、4大臣会合新設の狙い。

4大臣会合は平時も開催され、場合によってはTPPに関する情報も扱うと、安倍首相は25日の衆議院本会議で述べている。

安倍総理大臣は、新たに設けられる4大臣会合では、安全保障環境の根幹に影響があると考えられる場合には、テロ対策、自然災害、TPP=環太平洋パートナーシップ協定などについても審議することもあり得るという考えを示しました。

(NHKニュース「“日本版NSC法案”審議入り」より。 2013/10/26 16:46)

この4大臣会合に通常から情報を集約する役目を担うのが、「国家安全保障局」だ。各省庁からバラバラに上がっていた情報を一元化して集約することで、迅速な判断に繋げたいとされる。各省の縄張り意識をなくすことも課題になる。

政府の情報収集では、これまで外務、防衛、警察など各省庁の縄張り意識から、それぞれが情報を抱え込んだり、個別に官邸に報告したりして混乱が生じるケースが多かった。これを改めるため、各省庁の安全保障に関する重要情報は、国家安全保障局への報告を義務付け、一元的に分析した上で首相らに報告する形を取る。ただ、省庁縦割りの弊害打破は容易ではない。首相周辺は「官邸が『情報を出せ』と言って出さなければ懲戒免職だ」と官僚組織をけん制するが、実効性の確保は運用次第の面が残る。

(時事ドットコム「情報活用「縦割り」打破課題=秘密保護法、根強い懸念-日本版NSC」より。 2013/10/25 19:05)

これまでの安全保障会議では、10名程度の担当者がいるだけであったが、国家安全保障局は60人程度の規模となる。そのうち10名程度に幹部自衛官を起用する方向で検討が進められている。

また、これらの情報に基づき首相を直接補佐する「国家安全保障担当総理補佐官」も設置される。国家安全保障会議に出席し、意見を述べることができる。

日本版NSCの設立には、懸念点もある。松田康博東京大学大学院教授は、説明責任の点を指摘している。

NSCに対する民主的監督機能の強化、言い換えるならば国民と国際社会への「説明責任(アカウンタビリティ)」と「記録責任」を強める必要性を強調したい。集権とは「諸刃の剣」であり、集権された政府が「迅速に」過ちを犯した場合、対処すべき問題がさらに悪化する可能性がある。集権に伴い、内外への説明責任や、将来の国民のための記録責任は増大する。特に秘密保護の強化は、諸外国との情報共有のために必須であるが、それを組織防衛のために濫用することは厳しく戒められなければならない。

(WEDGE「日本版NSC設置へ 「人材」と「組織」が機能強化のカギ」より。 2013/10/21)

また、国家安全保障局の人事方法に対する指摘もある。

ただし、「日本版NSC」が首相直属の機関となって首相や内閣官房長官に任免権があるとすれば、逆に「耳に痛い情報」が上位の

政策決定者に上がらない可能性もある。

(国立国会図書館「「日本版 NSC(国家安全保障会議)」の課題」より。 2006/09/22)

安倍首相は、今週中に法案を衆院通過させ、11月中旬までの成立を目指すという。しかし、野党からは与党のペースで国会運営が進むことをけん制する動きがあるため、この議論が迅速に進むかが、今国会の鍵を握りそうだ。

(フジテレビの山本周)解説副委員長は、「今回の国会の最大の目的は、成長戦略を実行することのはずです。しかし、政府・与党が最も気合を入れているように見えるのは、日本版NSC、国家安全保障会議設置関連法案です。中国や北朝鮮などの軍事的な脅威に対抗して、アメリカなどとの連携を強化するため、安倍政権としては、今国会で、ぜひとも成立させたい法案という位置づけです」、「ただ、このNSC設置法案とセットの特定秘密保護法案について、民主党などが、情報公開法の改正を同時に行うべきだと主張していて、審議は、順調には進まないかもしれません。この法案がもめてしまいますと、今回の臨時国会は、会期が短いことから、成長戦略にからむ、ほかの法案への影響が出てくる可能性もあります」と話した。

(FNNニュース「今回の臨時国会のポイントを山本 周解説副委員長に聞きました。」より。 2013/10/27 18:40)

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