大学入試改革「人物本位」の選抜に 教育再生会議が安倍首相に提言

政府の教育再生実行会議は10月31日、現在の大学入試センター入試に代わり、「達成度テスト」の導入を柱とした第4次提言を、安倍首相に提出した。従来の一発勝負の入試を見直し「人物本位」の選抜を目指す方針だ。実際の導入は5、6年先になる見通しだという。
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政府の教育再生実行会議は10月31日、現在の大学入試センター入試に代わり、複数回受けられる「達成度テスト」の導入を柱とした第4次提言を、安倍首相に提出した。従来の一発勝負の入試を見直し「人物本位」の選抜を目指す方針だ。実際の導入は5、6年先になる見通しだという。朝日新聞デジタルが報じた。

政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は31日、大学入試改革に関する提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。大学入試センター試験を改編し、成績を点数でなく上位から下位まで何段階かにランク分けして表示。複数回実施も検討する。

(朝日新聞デジタル「大学入試「人物本位の選抜に」 再生会議が提言」より 2013/11/01 05:33)

点数で評価する大学入試センター試験と異なり、「達成度テスト」では、上位から下位まで何段階かにランク分けを行う。その後、各大学の2次試験で、面接や論文などを通じて「人物本位」の本質的な能力を総合的に評価していくという。

「達成度テスト」は、高校在学中に受ける「基礎レベル」を新たに創設し、現在の大学入試センター試験を「発展レベル」として衣替えする方針のようだ。

基礎レベルのテストは、「基礎的な教科について知識だけでなく、活用力や思考力など幅広い学力を検証する」とし、推薦入試やアドミッション・オフィス(AO)入試で活用する。

発展レベルのテストは、「知識偏重の1点刻みの選抜にならないよう、試験結果はレベルに応じて段階別に表示」することとし、複数回挑戦できることを可能にするよう求めた。

(MSN産経ニュース「大学入試、一発勝負型からの転換を提言 教育再生実行会議」より 2013/10/31 21:22)

文部科学省の関係者によれば、語学や職業の資格も、学力試験の結果と同等の扱いで大学入試に利用するよう、各大学に求めていくようだ。学力テストによる知識偏重の入試プロセスを改め、それぞれの能力や適性を総合的に判定できる制度にするのが狙いだという。

簿記など職業分野の各種資格・語学検定のほか、工業高校の生徒が取得した資格や技能を点数化して評価する「ジュニアマイスター顕彰制度」などが含まれる見通し。語学系の大学ならTOEFLや実用英語技能検定(英検)、経営学部系なら簿記といったように、各大学各学部の特色に応じた試験が利用されるという。

(MSN産経ニュース「大学入試改革 職業資格試験も活用 簿記など提言へ 教育再生会議」より 2013/10/27 02:05)

これをうけて、安倍首相は「大きな改革だ」とコメントしている。

「記憶力中心の受け身の学力にとどまらず、主体的に学ぶ力を育て、積極的に評価していくべきだという提言を頂いた。これは、20年以上前の大学入試センター試験開始以来の大きな改革だ。受験生や保護者をはじめ、国民にしっかり説明しながら、具体的な検討に着手してほしい」と述べました。

(NHKニュース「大学入試改革 首相に提言」より 2013/10/31 19:34)

第4次提言では、「高校教育の向上」「大学の人材育成機能の強化」「大学入試」についてまとめられた。今後、第5次提言に向けて「6・3・3・4」の学制のあり方などについて議論が進められる予定だという

欧米を参考にして進められている大学入試制度改革。同時に、本来の目的である「主体性、創造性のある多様な人材」の育成のために、大学教育のあり方についても議論が進められるべきだろう。

少子化と学校増によって、大学進学率は5割を超えている。大学「全入」の時代を経て、今では4割の私立大学で定員割れを起こしている。こうして、入れる大学に進学した結果、目的を見出せず中退を選ぶケースも多いという。

『中退白書2010—―高等教育機関からの中退』(日本中退予防研究所)によれば、大学では入学から卒業までの4年間で学生の12.6%が中退しているという。専門学校も含めれば、年間11万人以上、1日300人以上が中退している。中退は、フリーターや若年無業者を生む要因のひとつとなっている。また『若年無業者白書』(NPO法人育て上げネット)によると、若年無業者の4人に1人は、スーツを持っておらず、経済的に就職活動を行うのが困難な状況にあるという。

大学のカリキュラムも充実させ、中退者の数を減らすことは、非正規雇用の労働者や若年無業者の数を減らすことにもつながるだろう。大学側も、大学入試を経て入学した学生たちが学べる環境を整える必要があるといえる。

教育再生会議は、大学教育については、以下のように提言している。

大学入学時の学力ではなく、卒業時までに鍛え抜かれた力であり、大学が生涯を通じての学びの拠点となることが必要です。大学は、高等学校までの教育を基に更に付加価値を高めるため、それぞれの強みを活かし、学びの質的転換を図るとともに、厳格な卒業認定を徹底させることが必要です。

(教育再生会議「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言) 」より 2013/10/31)

※主体性、創造性のある人材を育てるための教育と、大学入試改革のありかたについて、あなたはどう思いますか? ご意見をお聞かせください。

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