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普及し始めたオートブレーキシステム、どのような技術か知っていますか?(VISION2020)

オートブレーキとは、「プリクラッシュ・セーフティシステム」と呼ばれるテクノロジーの一環。レーザーセンサーや車載カメラによって前方の障害物を検知することで、追突の危険性をドライバーに通知することを第一の目標とし、それでもなお車体が停止しない場合は、自動的にエンジン出力を抑えブレーキをかけるシステムである。

いまを遡ること4年前の2009年。ボルボは、長年にわたる独自の事故研究・技術開発の成果である「シティ・セーフティ(低速用追突回避・ 軽減オートブレーキシステム)」を、新型車『XC60』全車に標準装備した。これは、クルマを完全に停止させる「オートブレーキ」が日本ではじめて導入された画期的な事例であり、国内のクルマ業界に与えた衝撃は決して少なくなかった。さらにボルボは、歩行者やサイクリストを検知する「ヒューマン・セーフィティ」を開発し、同社のセーフティテクノロジーが、業界のフロントロウに位置することを示し続けている。

オートブレーキとは、「プリクラッシュ・セーフティシステム」と呼ばれるテクノロジーの一環。レーザーセンサーや車載カメラなどによって前方の障害物を検知することで、追突の危険性をドライバーに通知することを第一の目標とし、それでもなお車体が停止しない場合は、自動的にエンジン出力を抑えブレーキをかけるシステムである。

日本国内においては、ASV(先進安全自動車)というプロジェクトが国土交通省によって1991年に立ち上げられており、実際2000年代に入ると、トヨタ(ハリアー)やホンダ(インスパイア)が、ドライバーをサポートする最新テクノロジーとして障害物を検知するセーフティシステムを市販車に導入し始めた。

ただ国土交通省は、プリクラッシュ・セーフティシステムをあくまでも「衝突時の被害を軽減するためのシステム」と定めていたため、ドライバーの意志とは関係なく、自動でブレーキがかかるオートブレーキ・システムを認可してこなかった。そのトビラをこじ開けたのが、ボルボの『XC60』だったのである。

それから4年。EUでは、「すべての商用車の新車に自動緊急ブレーキを装備する義務」が、2015年11月から発生することが決定しており、アメリカでも、米国道路安全保険協会(IIHS)の主導による既定路線として、商用車へのオートブレーキ装備の義務化が検討されている。そして日本でも、まずはトラックやバスといった大型商用車へのオートブレーキの搭載義務化が、2014年11月からスタートすることが決定している。もはや国内外の各メーカーにとって、オートブレーキの開発は、避けては通れない重要な技術革新分野となっているのである。

現在日本において、オートブレーキの研究開発の指針となっているのが、前述のASV(先進安全自動車)だ。具体的には8つのキーワードを挙げて開発の方向性が示されている。

1:「(ドライバーとシステムの)意思疎通」

2:「安全運転・安定的作動」

3:「作動内容を確認」

4:「過信を与えない」

5:「(ドライバーによる)強制介入可能」

6:「円滑な移行」

7:「安全性が後退しないこと」

8:「社会に受け入れられる素地が形成されていること」

これを要約するならば、「ドライバーの主体性を担保すること」「ヒューマンインターフェイス等の視認性に重きを置くこと」「社会インフラへのスムーズな導入」、という3点になる。確かに、ブレーキの「オート化」によるドライバーの過信は、何よりも注意を喚起しなければならないだろうし、一歩間違えば生命に関わるシステムゆえ、表示類のデザインを含むインターフェイスの検証は、細心の注意を払って行われるべきだろう。そして、オートブレーキを前提にしつつ、歩行者やサイクリストが安全に通行できる街づくりの模索は、ヒトとクルマの未来を考える上で、継続的に続けていかなければならない思考実験だろう。

では実際、各メーカーはどのようなオートブレーキシステムの開発に取り組んでいるのだろうか。これは、衝突の「監視デバイス」として、どのような手段を用いているかを比べるのがわかりやすいかもしれない。

現在用いられている「監視デバイス」は、主にミリ波レーダー、赤外線レーザー、そしてカメラの3種類である。

まずミリ波レーダーを用いているのは、国産車で言うとトヨタやホンダといったところ。ミリ波は探知距離が長く、誤差も少ないといったメリットがある一方で、システムが高価である点と、歩行者や自転車の検知には弱く、走行中に付着してしまう泥や雪などでレーダーの発信元が遮られた場合に、効力が落ちてしまう点を懸念する声もある。

次に赤外線レーザーを用いているのは、マツダやダイハツなど。赤外線レーザーは精度が高いものの、探知距離が短く、ミリ波レーダーと同様、車外の汚損に弱い点が指摘されている。

そして最後が、カメラを用いるシステム。例えばスバルが「EyeSight(アイサイト)」の名で導入しており、ミリ波レーダーの不得意分野である歩行者や自転車の検知や、車外の汚損にも強いのが特徴だ。その一方でカメラは、濃霧や豪雨の中、あるいは西日に向かっている場合、能力が落ちるとされている。

このように一長一短のあるオートブレーキ・システムだが、今後は、例えばトヨタが『レクサスLS』に搭載しているようなミリ波レーダーとステレオカメラを合わせたシステムが、少なくとも高級車においては主流となってくるのかもしれない。

一方、オートブレーキに関する技術開発や実績、あるいはドライバーの意識面において日本よりも数歩先を行く欧米に目を移すと、例えばメルセデス・ベンツやBMWは赤外線レーザーとカメラを合わせたシステムを用いており、ボルボの「ヒューマン・セーフティ」のように、ミリ波レーダーと赤外線レーザー、そしてカメラによるトリプルチェックを課すことで、歩行者に加えサイクリストも検知し、衝突の恐れがある場合はフルブレーキで車両を停止するシステムも登場している。

こういった「衝突を未然に防ぐ」技術の進化は、今後、ますます加速していくことだろう。クルマはもはや、「衝突をどう軽減するか」ではなく、「衝突をしない、させない」ことを前提につくられるべき時代に突入したのである。その核となる技術であるオートブレーキ・システムの性能は、今後、クルマを選ぶ際の重要な要素になることだろう。

そして前述のASVの指針にもあるように、このオートブレーキの流れは、メーカーだけではなく、ドライバー側や社会インフラ側の立場からも考えていく必要がある。

オートブレーキがあることで、長距離運転や渋滞中などでドライバーに掛かる精神的なストレスが緩和されることも期待できるが、機能に頼りすぎることへの懸念も出ており、各メーカーもオートブレーキは完全ではなくあくまで運転のサポートをする機能であると注意喚起をしている。事故を防ぐための最終的な判断はドライバーにあり、オートブレーキの進化にともないドライバーの運転モラルもより一層問われていくことだろう。

オートブレーキのようなセーフティ技術や自動運転車が話題になっています。そのような車を運転されている方も多いかと思いますが、ドライバーとテクノロジーの関係性について、みなさまはどうお考えですか?

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