使用済み核燃料、取り出し作業の懸念点は?【福島第一原発・4号機】

福島第一原発・4号機の使用済み核燃料の取り出しが始まる。この作業が完了することで、廃炉に向かう工程にどのぐらい進捗があると考えられるのか。また、この作業にはどのような懸念があるのだろうか

福島第一原発・4号機の使用済み核燃料の取り出しが、11月18日に始まる。長期にわたる廃炉作業の本格始動だ。この作業が完了することで、廃炉に向かう工程にどのぐらい進捗があると考えられるのか。また、この作業にはどのような懸念があるのだろうか。

■そもそも4号機の現状は?

2011年3月の地震発生時、4号機は定期検査中であった。そのため原子炉内には燃料はなく、使用済み燃料プールにのみ、燃料が存在していた。

しかし、地震発生から4日後の2011年3月15日に、4号機建屋で水素爆発が起こった。爆発の原因は現在でも解明されていないが、3号機とつながっている配管を通じて水素が流れ込んだ可能性とともに、使用済み燃料プールの冷却設備が電源を失ったことで、水の放射線分解(ガンマ線の照射により水が水素や過酸化水素を生成すること)が進んで水素が発生した可能性も指摘されている。

福島第一原子力発電所4号機注水車からの放水(2011年3月22日撮影)

4号機の使用済み燃料プールには1533体の燃料が残っており、そのうち1331体が使用済みで、高い放射線と熱を出し続けている。使用済みとはいえ、水素爆発すら引き起こす危険性のある燃料を、破壊された4号機建屋内に置いておいては廃炉作業が進まない。使用済み核燃料が安全な設備に移されるのは、このような事情があった。

■どのような作業をするのか?

4号機の使用済み燃料プールにある燃料は、「燃料ラック」と呼ばれるケースに入って守られている。今回の作業では、ラック中の燃料を、水中で1本1本引き抜き、水面から露出しないように「キャスク」と呼ばれる容器に移す。

キャスクがいっぱいになったら、蓋をして、大型クレーンで容器ごと釣り上げ、移動トラックの荷台に載せ、建屋から100メートルほど離れた共用プールまで移動させる。

(東京電力)

キャスクには、22体の燃料しか入らないので、1533体の燃料をすべて共用プールに移し終えるのは、来年末になる見込みだという。まずは未使用の新燃料を移行し、その後、使用済み核燃料を移行する。

■取り出し作業での懸念は?

この作業でまず懸念されるのは、ラックから燃料を引き抜く際に、燃料を傷つけないかという点だ。2011年の水蒸気爆発で建屋が破壊されたことで、使用済み燃料プールにも多くのガレキが散乱した。

(東京電力)

東電は取り出し作業の準備のため、使用済み燃料プール内の大きいガレキは取り除いたが、ラックの隙間に入り込んだ小さなガレキまでは取り除けていない。

そのため、燃料をラックから引き上げる作業では、1秒間に1cmというゆっくりとしたスピードで、燃料の状態を確認しながら作業するとした。

4号機内にある破損された燃料の存在も気になる問題だ。東京電力が11月13日に発表した内容によると、4号機の使用済み核燃料プールに存在する1533体の燃料のうち3体が破損しており、取り出しに注意が必要だという。

東電によると、3体はいずれも震災前に破損していた。1体は約25年前に作業員の操作ミスで「く」の字に折れ曲がった。他の2体は約10年前に「ピンホール」という穴が開いているのが見つかった。穴はプール内に混入した異物が燃料に接触し生じた。4号機の使用済み核燃料プールにある燃料1533体の取り出しの工程は損傷した3体の存在を把握した上で組み立てており、東電は「スケジュールに影響はない」としている。

(福島民報「損傷の燃料3体 福島第一原発4号機プール」より 2013/11/13 11:30)

これらの破損燃料は、東日本震災前に破損が確認されていたが、放射線量も高く使用見込みがないことなどから、使用済み燃料プールで保管されていた。共有プールまでの移動は他の燃料で使用するものとは違うキャスクを利用し、最後に回されるという。

また、作業員の確保についても懸念がある。使用済み燃料プールから共有プールまでの移動作業は、通常稼働している原発においても行われている作業である。東電内でも1200回以上の作業実績があり、今回の作業では熟練の作業員が担当することになった。

しかし、通常はコンピューター制御で行う作業を、今回は作業員の操作による作業が発生することになった。4号機にはガレキが多く存在するため、確認しながら作業を進めなくてはならないからだ。作業終了まで熟練の作業員が担当できれば良いが、被曝量が増え作業員が交代することになった場合に、事故が起こらないように作業ができるのかは疑問が残る。

着々と進められてきた4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出し作業であるが、1号機〜3号機の原子炉内の燃料については、現在どのような状態であるのかすらも分かっておらず、どのように取り出すのかという方法も見つかっていない状態だ。海外の協力も得て取り出しを検討しているが、放射線量も高く、目標とする2020年に作業開始できるかどうかは分からない。

40年以上かかるとされる廃炉作業のうち、今回の作業はまだ、ほんの少し前進したに過ぎない。それでも、そのわずかな前進が安全に行われることに期待したい。

福島第一原発4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについて、あなたのご意見をお寄せ下さい。

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