中国の防空識別圏設定に「内政向けパフォーマンス」「領土問題は政治決着を」などの声【争点:安全保障】

中国が、尖閣諸島上空などを含む空域を防空識別圏にしたことが波紋が広がっている。日本政府は中国に対し撤回を求めるが、中国は強く反発している。ハフィントンポストの記事にも「中国共産党の内政向けのパフォーマンス」...
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中国が、尖閣諸島上空などを含む空域を防空識別圏にしたことが波紋が広がっている。日本政府は中国に対し撤回を求めるが、中国は強く反発している。ハフィントンポストの記事にも「中国共産党の内政向けのパフォーマンス」「尖閣の領土問題については政治レベルで決着をつけることが急がれる。さもなくば、いずれ戦闘に発展するのは間違いない」といった意見が寄せられている。

防空識別圏は、各国が戦闘機による緊急発進(スクランブル)を実施する基準として、領空とは別に設定される空域。不審機による領空侵犯を防ぎ、航空機が敵か味方か識別することを目的に各国が独自に設定する。自衛隊法では次のように規定されている。

自衛隊法は「外国の航空機が領空を侵犯した場合、防衛大臣は自衛隊に、着陸か退去させるため必要な措置を講じさせられる」と規定。飛行計画を提出せず日本のADIZに入ると、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進するなどし、国籍や機種、位置を確認する。

(時事ドットコム 「防空識別圏」2013/11/23 18:02)

安倍晋三首相は11月25日午後の参院決算委員会で、一切の措置を撤回することを求めていく考えを明らかにし、「尖閣諸島の領空があたかも中国の領空であるかのごとき表示で、まったく受け止めることはできない」と強く批判した。また、外務省の斎木昭隆事務次官も11月25日、中国の程永華・駐日大使を外務省省に呼んで厳重注意し、撤回を要求した。

外務省の斎木昭隆事務次官は25日、中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したことについて、程永華駐日大使を同省に呼んで厳重抗議し、撤回を要求した。程氏は防空識別圏設定には正当性があるとし、要求には応じない姿勢を示した。

斎木氏は程氏に対し、防空識別圏設定について「不測の事態を招きかねず、非常に危険だ」と指摘した。



(47NEWS 「中国大使に防空識別圏の撤回要求 外務次官、首相は強く批判」2013/11/25 21:13)

日本政府の対応には、ケネディ駐日アメリカ大使も理解を示しているという。

岸田文雄外相は25日夕、東日本大震災の被災地を訪問中のケネディ駐日米大使と、中国の防空識別圏設定に関して電話で会談した。ケネディ大使は「中国の一方的行為に対する日本政府の迅速な対応を称賛する」と述べた。

(時事ドットコム「ケネディ大使、日本政府の対応称賛=防空識別圏設定」 2013/11/25-19:39)

一方、中国はこうした抗議に強く反発している。

中国外務省の秦剛報道官は11月25日の記者会見で、「国際法にのっとったもので、国家の主権と領土・領空の安全を守ることが目的だ」などと反論。

中国外務省の秦剛報道官は25日の記者会見で、「日本がとやかく言うのは、全く理不尽で間違いであり、断固として反対する」と反発したうえで、北京駐在の木寺大使に対して、逆に抗議したことを明らかにしました。



(NHKニュース「中国 防空識別圏巡る抗議に反発」2013/ 11/25 19:12)

また、アメリカが強い懸念を示していることに対しても「不当な主張を二度と発表してはならない」などと非難。日中関係にアメリカが関わる動きを牽制した。

中国外務省は、日本時間の25日未明に報道官の談話を発表し、「アメリカは一方に肩入れすべきでなく、不当な主張を二度と発表してはならない」と要求したうえ、北米担当の鄭沢光次官補が24日、中国駐在のロック大使に抗議し、「直ちに誤りを正すよう求めた」としています。

また、中国国防省で外国政府との窓口に当たる外事弁公室も24日夜、北京にあるアメリカ大使館の駐在武官に対し、「アメリカは情勢を緊張させる日本の危険な行いを助長するような誤ったサインを二度と送るべきでない」と抗議したことを明らかにし、対立する日中関係にアメリカが関わるのをけん制しました。

(NHKニュース 「尖閣上空の防空識別圏 中国が米に抗議」 2013/11/25 11:10 )

中国軍機関紙・解放軍報は、日米両国の抗議に対する社論を掲載。中国共産党の機関紙、人民日報系の環球時報も「もし日本の戦闘機が中国の防空識別圏内で中国機の飛行を妨害するなら、中国の戦闘機も断固として日本の戦闘機の飛行を阻むべきだ」と主張している。

中国軍機関紙、解放軍報は25日、日米両国が中国の防空識別圏設定を強く批判したことについて「国家主権を守ろうとする中国軍の決意を見くびってはいけない」と警告する社論を掲載した。

防空識別圏の設定にはどの国の許可もいらず「大国の顔色をうかがう必要はない」と強調。「日本が1969年に防空識別圏を設定した行為こそが非常に危険で一方的な行為だ」と反論した。

(MSN産経ニュース 「「中国の決意見くびるな」防空識別圏設置で軍機関紙、日米に警告」2013/11/25 12:40 )

民間航空機にも影響は及ぶ。中国民用航空局が防空識別圏を通過する航空機の飛行計画を事前に提出するように要求、日本航空などは台湾と香港線について飛行計画を提出した

民間航空機にも影響が及ぶ。日本航空によると、中国民用航空局が23日付で防空識別圏の設定を通知し、識別圏を通過する航空機の飛行計画を事前提出するよう求めてきた。

そのため台湾と香港線の定期便について、23日から中国に飛行計画を提出。日航は「安全が第一。中国が求めている以上、万一の事態を避けなくてはいけない」と説明する。全日空も24日から同様の対応を取る。

(朝日新聞デジタル「防空圏設定、民間にも影 日航・全日空、中国に飛行計画」2013/11/26 00:16)

中国の狙いは何なのか。

元北京大在住のイギリス外交官のケリー・ブラウン氏は、日本による尖閣諸島国有化への報復だと指摘する。

元北京駐在の英外交官で、現在は豪シドニー大学中国研究センターのエグゼクティブディレクターであるケリー・ブラウン氏は、昨年9月に日本が尖閣諸島を国有化したことへの象徴的な報復だと指摘。「物理的な接触や衝突が実際に起きれば、かなりまずい状況になるだろう。しかし両国の経済的な結び付きは極めて強いため、今回のADIZ設定は攻撃抑制心理が働く相互確証破壊(MAD)のようなものになるのではないか」との見方を示した。

(ブルームバーグ「防空識別圏設定、日中貿易妨げも-尖閣国有化への報復との見方」2013/11/25 11:59)

MSN産経ニュースは、習近平政権の強硬姿勢を国内外にアピールし、政権の求心力を高めるねらいがあるとと指摘する。

中国を改革開放に導いたかつての最高実力者、トウ小平は、1980年代から「韜光養晦」を外交の基本方針に掲げた。方針は胡錦濤時代まで続けられたが、習近平政権は民族主義をあおる「中華民族の偉大なる復興」などをスローガンに掲げた。中国外務省関係者は「胡錦濤前国家主席が提唱した『和諧(調和のとれた)世界』という理念はいま実質否定された。外交政策は協調から対抗に変わった」と語った。

中国の外交方針の転換は、「国力の増強に伴うもの」との指摘がある一方、「習政権が発足して一年、経済や治安、環境など内政面がうまくいっていないから、外国に対し強い姿勢を示すことで求心力を高めたい思惑がある」(共産党筋)と指摘する声もある。

(MSN産経ニュース 「中国「強兵路線」に 防空識別圏設置、政権求心力高める狙いか」 2013.11.23 21:45 )

ハフィントンポストの記事「中国が設定した「防空識別圏」は何が問題なのか」にも、様々なコメントが寄せられた。

この件について私は、中国共産党の内政向けのパフォーマンスと見ています。

尖閣を取りにいくためというよりは、少数民族問題、政府批判の高まりを抑制するための方策と考えた方が良いと思います。

ただ、防空識別圏が尖閣上に設定されますと偶発的に戦闘が起きかねませんし、既成事実化されると厄介ですから、国際社会に中国の不当をアピールすると共に、これを利用して日米韓の協力体制を整える必要があるのではないでしょうか。
(koootaさん )

今回の中国政府の公告に「反応してはいけない」などとは考えておらず、日中相互の防空識別圏が重なるエリアでの、あらゆる事故やトラブルを想定した事前の(日中間での)協議を行い、双方の政府同士、軍と自衛組織同士の、連絡体制が欠かせないと思います。

中国が「防空識別圏」の国先的な運用基準に合わせた運用を行わない意図があるのであれば、それは協議によって、中国政府に正してもらわなければならないでしょう。
Takayasu_Iwasaka さん)

両国共に尖閣を自国の領土だと主張して譲らない状態が続けば、いつかはその矛盾が軍事衝突という形で現れざるをえない。

このニュースはその一端。

尖閣の領土問題については政治レベルで決着をつけることが急がれる。さもなくば、いずれ戦闘に発展するのは間違いないと思う。
MaTsuGaMiさん)

日本政府は先ず、中国が防空識別圏を拡大解釈している点を指摘すべきであり、場合によっては国連安保理の議題に乗せるべき。

そのうえで、尖閣諸島周辺以外で防空識別圏が重なっている空域について、境界の調整等の協議を行うのがいいと考えます。

尖閣諸島周辺は防空識別圏の問題ではなく領空・領土の問題なので、そこは切り離して交渉することが必要だと思います。
go_ashさん)

日中の対応を世界中が見守るようになるでしょう。それだけに常軌を逸した行為を仕掛けていると、目一杯自制の姿を表に出しながら、中国に対応するのではなく、国際社会にアピールするべきだと考えます。
noriaki_akamatsuさん)

中国の防空識別圏の設定や日本政府の対応についてあなたはどう考えますか。引き続き、ご意見をお寄せ下さい。

尖閣・尖閣諸島

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