北朝鮮の金正恩第1書記の叔父で、事実上のナンバー2とみられていた張成沢・国防委員会副委員長が失脚した可能性があると、韓国メディアが一斉に伝えた。韓国の情報機関・国家情報院は、張氏の側近2人が公開処刑されたとみていることを明らかにしたという。
張氏は、故・金正日総書記の妹・金慶喜氏の夫にあたり、金正恩氏の後見人を務める事実上のナンバー2とみられていた。事実なら、北朝鮮の権力層に重大な変化が起きた可能性がある。
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■「すべての職務から解任」
韓国の通信社・聯合ニュースは、国家情報院が明らかにしたとして、以下のように伝えた。
最近、(張氏が部長を務める)労働党行政部内の張成沢の核心側近たちに公開処刑された事実が確認され、張成沢も失脚した可能性が濃厚とみられる。
現時点でわかっているところでは、11月下旬、北朝鮮が党行政部内の核心側近である李竜河・第1副部長と、張秀吉・副部長を公開処刑したのち、張成沢の所管組織と関係人物についても後続措置を進めている。
内部的には、張成沢の側近たちを、不正など反党行為で公開処刑したと広め、金正恩に対する絶対的な忠誠を強調する思想教育を実施するなど、内部の同様を遮断することに腐心していると伝えられている。
(聯合ニュース「北朝鮮ナンバー2、張成沢失脚 国家情報院"側近2人公開処刑"」より 2013/12/03 17:21)
韓国の朝鮮日報は、安全保障当局者の話として、張氏が朝鮮労働党政治局委員など、すべての職務から解任され、党行政部も無力化または解体された可能性が高いとみている。
張氏は労働党政治局委員と行政部長、中央軍事委員会委員、中央委員などを兼任しており、国家体育指導委員長や、北朝鮮の国会にあたる最高人民会議代議員、さらに朝鮮人民軍の大将の肩書も持っている。11月には訪朝したアントニオ猪木参院議員と会談していた。
韓国の通信社・ニュースワンは、国会の情報委員会の所属議員に国家情報院が12月3日、報告したとして、同委員会幹事を務める野党・民主党の鄭清来議員の話を以下のように伝えている。
張成沢の両腕だった李竜河・第1副部長と、張秀吉・副部長が11月中旬、公開処刑されたという。この時点で張成沢は行方をくらましていて、国家情報院は張成沢が失脚したとみている。処刑の事実も軍の内部で公示されたという。
金正恩の叔母である金慶喜が、夫の張成沢と夫婦仲がよくなかったという。にもかかわらず、夫のために、失脚までさせていいのかと(金正恩氏に)助言したが、受け入れられなかったと国家情報院は報告した。
張成沢と妻の金慶喜は、金正恩の後見人を務める重要な核心権力だった。張成沢が失脚したのであれば、北朝鮮の権力機構は非常に大きな変化が起きるだろう。(ニュースワン「鄭清来"国家情報院、張成沢が失脚と報告…側近は11月下旬に処刑"」より 2013/12/03 17:49)
■「軍との権力闘争に敗れ」
また、朝鮮日報は、以下のような分析を伝えている。
北朝鮮の専門家らは、張成沢は崔竜海・総政治局長ら軍部勢力との権力闘争に敗れ、失脚したとみている。
金正恩の権力基盤は、自身の親戚勢力と、革命第1世代(注:1948年の北朝鮮建国を担った人物)の子女らに支えられているというのが支配的な分析だ。崔賢・元人民武力部長の息子である崔竜海・朝鮮人民軍総政治局長がその代表であり、叔母である金敬喜とその夫・張成沢らが代表的な親戚勢力だった。
(中略)
張成沢は比較的、穏健派に分類されており、北朝鮮の経済再生のため改革・開放を進めなければならないという立場をとってきた。最近、経済開発の特区事業などを推進したことで、軍部や労働党幹部から不満が出ていたと消息筋は伝えた。
(朝鮮日報「張成沢失脚…軍部との権力闘争に敗れ」より 2013/12/03 16:57)
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