朝鮮学校生への学費補助を復活へ 神奈川県「子どもに罪はない」

神奈川県は、朝鮮学校に通う在日朝鮮人の児童・生徒らへの補助金を、2014年度から事実上復活させる方針を決めた。「外国人学校は国際情勢の影響を受けやすい。今後も安定的に教育を受ける機会を確保するため」
時事通信社

神奈川県は、朝鮮学校に通う在日朝鮮人の児童・生徒らへの補助金を、2014年度から事実上復活させる方針を決めた。これまで支給していた学校単位の補助をやめ、世帯の収入に応じた児童・生徒単位の補助に一本化する。

■学校単位から児童・生徒単位に

12月11日の神奈川県議会常任委員会で報告した。朝日新聞デジタルによると、中華学校など他の外国人学校も含め、学校の運営費補助として支出していた制度を廃止し、家庭や児童・生徒単位に一本化するという。

高校相当の生徒には、私立高に通う生徒の授業料を補助する制度を援用し、保護者の収入に応じて年間で最高18万2400円を支給。中学までの子どもには、最高で県内の私学の平均授業料分を補助する。

県私学振興課は「外国人学校は国際情勢の影響を受けやすい。今後も安定的に教育を受ける機会を確保するためだ」としている。

(朝日新聞デジタル「朝鮮学校児童・生徒への補助、学費に一本化へ 神奈川県」より 2013/12/11 20:03)

神奈川県は2013年2月12日に実施された北朝鮮の核実験を理由に、県内の朝鮮学校5校への補助金を打ち切っていた。朝日新聞デジタルは「子どもには何の罪もない」とする黒岩知事のコメントを伝えているが、翌日の報道各社の取材に対し、黒岩知事は「再開ではない」「決定ではない」とも答えている。

県は今年度の経常費補助を予算計上せず、黒岩知事は来年度も支給を見送る考えを表明していたが、「生徒は、学校とは違うということを学費補助という形でまとめ、提示した。朝鮮学校への補助金を再開するというものではない」と学費補助の趣旨を説明した。

「実質の支給再開では」「唐突感がある」という指摘に対しては、「私自身も確信を持って、この案が絶対良いとは思い切れていない部分がある。それらも含めてこれから議論をスタートさせたい」と述べた。

(MSN産経ニュース「神奈川県が朝鮮学校生徒に学費補助 黒岩知事『学校への補助金とは違う』」より 2013/12/12 13:10)

■高校無償化以前からある補助金

朝鮮学校と学費補助を巡っては、民主党政権下で2010年度から導入された「高校無償化」の対象にするかどうかが焦点になり、2年以上にわたる審査の末、自民党政権で「国民の理解を得られない」として対象外とすることが決まった。日弁連が「拉致問題の進展の度合いなどの子どもの教育を受ける権利とは何ら関係を持たない事柄を根拠に就学支援金の給付を否定するものであり、憲法14条などが禁止する差別的取扱に当たる」と会長声明で批判しているほか、生徒らが国を相手取り訴訟を起こしている

それ以前から自治体によっては独自の判断で、外国人学校を対象に補助制度を実施している。多くは専修学校など各種学校への補助として、中華学校やブラジル人学校、小中学校の課程も含めている。

ただ、2002年の拉致問題発覚や、その後の北朝鮮の核実験などを理由に、朝鮮学校の教育内容が「政治的だ」とする風当たりが強まった。2013年2月12日に実施された北朝鮮の核実験では、朝鮮学校に限定して補助金の予算計上を見送る自治体が相次いだ。神奈川県の黒岩知事は以下のように述べていた。

黒岩知事は記者会見で「朝鮮学校は多文化共生の中での一つの学校という認識のもと、私としても必死で守ってきた」と説明。その上で「被爆国の日本にとって、核実験は特別な意味を持っている。補助金を出し続けることは県民理解を得られないと思い、決断した」と理由を話した。

また、「朝鮮学校に通う子どもたちが、補助金がなぜ支給されなくなったのかを理解することも、教育の一環だと思う」とも述べた。

(朝日新聞2013年2月14日付朝刊・神奈川版)

東京都は、北朝鮮とつながりの深い在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と密接な関係にあるとして、補助金を打ち切っている。

調査の結果、朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容や学校運営について強い影響を受ける状況にあることが分かりました。(中略)朝鮮総連が編纂した現代朝鮮歴史の教科書には、「敬愛する金日成主席様」、「敬愛する金正日将軍様」等の記述が、409ページ中353回も出てきます。また、朝鮮学校が朝鮮総連や、その関係団体に経済的便宜を図るなど不適正な財産管理を行っていることも分かりました。

これが、大田区にある東京朝鮮第6学校や、町田市にある西東京朝鮮第2学校では、学校施設の一部を朝鮮総連支部の事務所として無料で長年使用させています。(中略)これらの状況を総合的に勘案して、朝鮮学校に補助金を交付することは、都民の理解が得られないと判断しました。

(東京都「知事の部屋 / 記者会見(平成25年11月1日)」より 2013/11/01)

朝日新聞デジタルによると、2013年度に朝鮮学校への補助金計上を、少なくとも7都道府県が見送ったという。

【※】拉致問題や核問題など政治・外交上の理由で、朝鮮学校への補助金を打ち切ることはやむを得ないと思いますか?皆さんのご意見をコメント欄にお寄せ下さい。

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