「巨大な太陽嵐は現代社会に破壊的影響」科学者が警告

コロラド大学ボルダー校で大気宇宙物理研究所の所長を務めるダニエル・ベイカー教授は、太陽嵐が現代社会にもたらす脅威に対して、政策立案者は真剣に取り組む必要があると提言している。同教授は、特に2012年7月に発生した巨大な太陽フレアによって懸念を深めている。
379099 02: The sun's coronal loops are shown in this photo, released September 26, 2000, taken by special instruments on board NASA's Transition Region and Coronal Explorer (TRACE) spacecraft. Fountains of multimillion-degree, electrified gas in the atmosphere of the sun have revealed the location where the solar atmosphere is heated to temperatures 1000-times greater than the sun's visible surface. (Photo by NASA/Newsmakers)
379099 02: The sun's coronal loops are shown in this photo, released September 26, 2000, taken by special instruments on board NASA's Transition Region and Coronal Explorer (TRACE) spacecraft. Fountains of multimillion-degree, electrified gas in the atmosphere of the sun have revealed the location where the solar atmosphere is heated to temperatures 1000-times greater than the sun's visible surface. (Photo by NASA/Newsmakers)
NASA via Getty Images

コロラド大学ボルダー校で大気宇宙物理研究所の所長を務めるダニエル・ベイカー教授は、太陽嵐が現代社会にもたらす脅威に対して、政策立案者は真剣に取り組む必要があると提言している。同教授は、特に2012年7月に発生した巨大な太陽フレアによって懸念を深めている。

2012年7月に巨大な太陽フレアが生じたが、幸いなことに地球を直撃はしなかったと、ベイカー教授は声明の中で述べている。「宇宙嵐を研究する私の仲間たちは、地球に大混乱をもたらすような出来事が実際に起こらない限り、政策立案者が注意を払うことはないと懸念している」

2012年7月の太陽嵐は地球を大きく逸れたが、そこから放出された放射線が地球を直撃していたとしたら、世界中の電子システムが大混乱に陥っていた可能性があると、ベイカー教授は言う。この太陽フレアが発生した領域は、当時地球から離れた方向に向いていたが、そのわずか1週間前にはちょうど地球の方向を向いていたという。

また、2012年7月の太陽嵐は、コロナ質量放出の際に発生した放射線が宇宙を伝わる速度について、ベイカー教授に警鐘を鳴らすものとなった。通常は、コロナ質量放出が地球に届くまで2、3日かかるものだが、2012年の放出では18時間で地球に到達したのだ。

「このときの速度は、近年の宇宙研究でこれまで観測された最大のものと同程度かそれ以上だった」とベイカー教授は声明で語っている。「この爆発は、記録された中で最も強力なコロナ質量放出であっただけでない。(地球を直撃した場合は、)およそ11年ごとに繰り返す通常の太陽活動周期においてこれまで見られたことのない規模の磁気嵐と、高密度の磁気粒子の変動を引き起こしていただろう」

記録に残る中で最大の太陽嵐とは、1859年に発生したいわゆる「キャリントン事象」のことだ。記録によればこのときは、カリブ海沿岸等も含めて、世界中でオーロラが観測された。米北東部では明るいオーロラが出現したため、夜になっても新聞を十分に読むことができたという。また、電報の鉄塔は火花を発し、電源が遮断されているのに送信や受信が可能になった電報システムもあった。だが、2012年7月のコロナ質量放出は、これよりさらに強力だったと推測されている。

「キャリントン事象と2012年の出来事は、太陽の周期的活動が比較的穏やかと見られる今の時期でも、危険な太陽嵐が起こる可能性があることを示すものだ」とベイカー教授は述べる。

ベイカー教授は、全米研究評議会(NRC)が2008年に出した報告書の共著者だ。この報告書では、大規模なフレアによって放出される高エネルギーの粒子は、交通機関や通信システム、金融システム等を混乱させる可能性があるだけでなく、食料、医薬品、飲料水等の入手が困難になるかもしれないと書かれている(電力システムが大規模に破壊された場合、復旧に多大な時間と資金がかかることが懸念されている。キャリントン事象と同規模の太陽嵐が現代社会で発生した場合、全世界で2兆ドル規模の被害が発生する、とNRC報告書は推定している)。

現代社会で、太陽フレアによる強い磁気嵐によって長時間停電が起きたケースは実際にある。1989年3月13日、激しいオーロラ嵐による磁場の変動が原因となって、カナダのケベック州にある発電所の送電システムが障害を起こし、長時間の停電が発生したのだ

現在も、人工衛星の運営者や無線利用者などに対して太陽風の乱れを警告する宇宙天気予報は存在するが、大規模な太陽嵐に対する世界的な対策は存在しない。ロンドンにある英国王立工学アカデミーは、2013年の報告書(PDF)の中で、大規模な太陽嵐への対応を計画する宇宙天気委員会の創設を訴えた。また、宇宙嵐の際の危険な放射線を警告するシステムの構築も求めている。

[Matt Ferner(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]

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