東日本大震災を描き残す「ストーリー311」がクラウドファウンディングに挑戦 漫画家うめさんに聞く「みんなと一緒に描くプロジェクト」

漫画家のひうらさとるさんが発起人となってスタートした、東日本大震災を描き残すプロジェクト「ストーリー311」。上田倫子さんやおかざき真理さん、新條まゆさん、末次由起さんなど、連載を抱える人気漫画家が参加。多忙な日々の合間を縫って、岩手、宮城、福島などに足を運び、被災された方々の話を聞いて描かれた作品は2012年3月11日に単行本『ストーリー311』として発表され、多くの人の反響を呼んだ。

漫画家のひうらさとるさんが発起人となってスタートした、東日本大震災を描き残すプロジェクト「ストーリー311」。上田倫子さんやおかざき真理さん、新條まゆさん、末次由起さんなど、連載を抱える人気漫画家が参加。多忙な日々の合間を縫って、岩手、宮城、福島などに足を運び、被災された方々の話を聞いて描かれた作品は2012年3月11日に単行本『ストーリー311』として発表され、多くの人の反響を呼んだ。

震災から2年8カ月。被災地の今を語りつづけていくために、第2巻を作りたい―—。そんな思いから、漫画家たちは今、創作を続けるためにネットで支援を募るクラウドファウンディングに挑戦している。当初の目標200万円を達成した現在、英語版の翻訳などを見据えて、12月20日までにさらに300万円の到達を目指しているという。

今回は、漫画家ユニットのうめさん(写真)おふたりに「ストーリー311」に参加する理由や、被災された方々を取材した感想、クラウドファウンディングに挑戦する想いを聞いた。

(左)作画担当の妹尾朝子さん(右)原作担当の小沢高広さん。

――「ストーリー311」に参加されたきっかけを教えてください。

もともと友人だった発起人のひうらさとるさんに声をかけてもらったのがきっかけです。ずっと震災に対して何かできることがあれば……という想いはあったのですが、震災直後はまだ生後2カ月の子供がいて自分の仕事以外のことをする余裕がありませんでした。しばらく経って、余裕ができたタイミングで声をかけていただいたので、迷わず参加を決めました。

――今回、「ストーリー311」がクラウドファウンディングに挑戦して、10日足らずで当初の目標金額200万円を達成したことについて、どう思いますか?

素直に「良かったな」という感じです(笑)。最終的には、達成できるかなと思っていましたが、もう少し時間がかかると思っていました。今は、海外の人にも「被災地の今」読んでもらえるように、英語版の翻訳などのストレッチゴール(300万円)も達成できればと思っています。

――うめさんは、ご自身でもクラウドファウンディングに参加して漫画「スティーブス」を制作するという経験されています。クリエイターの創作を一般の方が支援するこの仕組みについて、どう思いますか?

漫画家は、「締切」がないと描けないんです(笑)。描きたい気持ちはあるんですが、連載など他の仕事があると、なかなかオリジナルの作品を描くのは難しいんですね。

そんななか、クラウドファウンディングを通じて、執筆を宣言することで「締切」を作ることができるんです。支援してくれたみんなに「作る!」と約束することで、ちゃんと作品を発表することができます。

「ストーリー311」に関して言うと、みんなメインの仕事をしながら作業しているので、正直なところスケジュールが、とてもタイトです。でもこの本は、発売日をちょっと後ろにずらします、という本ではない。発売日がこんなに大きく表紙に描いてある本はなかなかないですから(笑)。かといって、忙しいから今年はやめて来年の311に、なんてことをしたら、きっといつまでもズルズルしてしまう。

みなさんに支援していただけることで、参加する漫画家のみんなが2014年の3月11日に必ず第2巻を出すよ、という約束ができるのかなと思います。

――第2巻の執筆のために、第1巻に続いて、南三陸の兄弟料理人、内田卓磨(たくま)さん、内田智貴(ともたか)さんを取材されました。久しぶりにご兄弟にお会いした感想をお聞かせください。

第1巻では、調理師免許を持つふたりが、南三陸の避難所で被災された方々に料理を作るストーリーを描いたんですが、実際には削らなければならなかったエピソードたくさんあったんです。だから、もし続編があるなら、また内田兄弟を描きたいと思っていました。久しぶりに話を聞いて「描きたい」という思いが強くなりましたね。

昨年、南三陸で内田兄弟に会って、すぐに「ふたりを描こう」と決めました。最初は、被災地を取材することに少し腰が引けていた部分があって……どう聞いていいのか、どこまで聞いていいのか、わからない部分があったんです。でも、ふたりが予想を上回る力強さを発揮してくれて、こちらを笑わせてくれました。またふたりのルックスも、漫画のキャラクター向きで素晴らしかったです。

第2巻の取材を受けた内田卓磨さん。第1巻は「宝物です」と話す。※ご自身のお店「glow」にて。

――第1巻を読んだ方からは、どんな感想が寄せられましたか?

「おもしろかった!」「思わず笑った」と(笑)。「かっこよかった」といわれたのは、素直にうれしかったですね。たぶん、この本を読んだ人は、心構えとして「笑おう」と思っていなかったはずなんです。私たちが、兄弟に対して感じた感情が、うまく読者の方にも伝わったかなと思います。

――最後に、12月20日に迫ったクラウドファウンディングの締切を前に、ひとことお願いします。

このクラウドファウンディングという仕組み自体が、いろんな可能性を持ったお金の集め方だと思うので、まだ未体験の方がいたら、この機会に、500円でも1000円でもいいから参加してみるといいと思います。

漫画家も、みなさんと一緒にこの本を作る感覚で描いています。参加してみると、自分がお金を出して支援したプロジェクトが、形になっていく様子が、肌で感じられるはずです。第2巻が出たときに、「これ一緒に作ったんだよねー」とみなさんといいたいですね。

※漫画家が東日本大震災を描き残す「ストーリー311」がクラウドファウンディングに挑戦しています。この取り組みについて、どう思いますか? あなたの声をお聞かせください。

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