政府は20日、東京電力福島第一原発事故からの福島復興を加速するための指針を閣議決定した。福島復興加速指針によれば、早期帰還者には一律で賠償金を上乗せするという。朝日新聞デジタルなどが報じた。
政府の福島復興加速指針に初めて盛り込まれた、東京電力福島第一原発事故の避難者のうち早期に帰還する住民への賠償上乗せの金額について、政府の原子力災害現地対策本部は、避難者1人当たり90万円を検討していることを20日、福島県庁での記者会見で明らかにした。
(朝日新聞デジタル「福島の早期帰還者に90万円 賠償上乗せ、政府が検討」より 2013/12/20 16:40)
安倍晋三首相は、指針の決定を受けて「福島の復興なくして日本の再生はない。関係閣僚は今回の決定に従って、地元と十分に協議しながら、被災者の生活再建と関係自治体の再生の道筋を具体化していってもらいたい」と述べている。
■早期帰還か移住か、2つの支援策を提示
新たな指針では、早期帰還を望む人と、帰還できないなどの理由で新しい生活拠点を望む人に、2つの支援策を提示している。どちらも、住宅などへの賠償が追加されているが、精神的な損害に対する賠償期間に違いがみられる。
避難指示が解除され、できるだけ早い帰還を望む人には、住宅の修繕や建て替えについて賠償を追加するとしていますが、精神的な損害の賠償は、避難指示の解除後1年間までと明記しています。
一方、避難指示が続き帰還できない人が新しい生活を始める場合は、移住先での住宅取得に必要な費用を賠償に加えるとともに、事故から6年後以降の精神的損害を一括で賠償することが盛り込まれています。
(NHKニュース「政府 復興加速の新指針を決定」より 2013/12/20
16:18)
放射線被ばくなどの不安を理由に、避難指示が解除された後も家に戻らない住民も少なくない。賠償上乗せで早期帰還を促す狙いもあるみられる。
■帰還に向けた除染作業や、被ばく対策の目標
復興庁によれば、東日本大震災の避難者は11月の時点で27万8000人を超え、このうち福島第一原発事故の影響による福島県民は、約5万人で8割を超えている。
産経新聞が11月に実施した調査によれば、被災者が帰還を望まない理由としては、被ばくの不安や住宅再建の問題が挙げられている。
「故郷に帰って住み直したいか」という質問に対しては、52%が「いいえ」と回答、35%だった「はい」を上回った。
帰還を望まない理由(複数回答)としては、66%が「被曝(ひばく)不安が残る」を挙げた。「人生設計が立てられない」(41%)、「住宅を再建できない」(29%)などが続き、帰還後の生活の不安から帰りたくても帰れない苦悩が浮かんだ。
(MSN産経ニュース「【東日本大震災1000日】「全員帰還見直し」賛成68% 本紙、被災者調査」より 2013/12/04 07:28)
原子力規制委員会はこれまで、住民帰還の必須条件について、個人の年間追加被ばく量を20ミリシーベルト以下とする提言をまとめていたが、政府は住民の帰還に向けて、新たに以下のような長期的な目標を設けるという。
▽住民の被ばく線量は年間1ミリシーベルト以下にすることを長期的な目標とし、▽住民の被ばく線量の評価をこれまでの環境中の線量から推定する方法ではなく、住民に線量計を配り実際に測る方法に変えるとしています。
(NHKニュース「政府 復興加速の新指針を決定 NHKニュース」より 2013/12/20 19:12)
■賠償金や除染費用のために、東電への国の無利子貸し付け額を9兆円に拡大
県民避難者への賠償や、住民帰還に向けた除染などの費用がかさむ東京電力。支払いが滞らないように、国は無利子で貸し付ける資金の枠を拡大するとしている。
東電への支援を大幅に増やし、除染や中間貯蔵施設にも公費を投入する。原子力損害賠償支援機構を通した支援を来年度予算で上限を9兆円にする。約2・5兆円は除染費用、約1・1兆円は中間貯蔵施設の費用にあてる。
(朝日新聞デジタル「早期帰還に賠償上乗せ 福島原発事故、復興加速へ政府指針 東電支援上限9兆円」より 2013/12/19 05:00)
賠償は引き続き、東京電力と原子力事業者の負担金で賄うが、将来的には国が保有する東京電力の株式の売却益も、除染費用などに充てられるとみられる。
※国が復興に向けて新たな指針を発表しました。支援内容について、どう思いますか? あなた声をお聞かせください。
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