普天間基地問題、辺野古埋め立てはどうなる?仲井真知事の判断時期が迫る

普天間基地移設問題が大きな山場を迎えようとしている。沖縄県の仲井真弘多知事は、政府の埋め立て申請を承認するかどうか、12月23日の県幹部からの報告などを踏まえ、今週中に判断する考えだという。
時事通信社

普天間基地移設問題が大きな山場を迎えようとしている。

沖縄県の仲井真弘多知事は、政府が申請した名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認するかどうか、12月23日の県幹部からの報告などを踏まえ、今週中に判断する考えだという。NHKニュースが報じた。

沖縄県は、アメリカ軍普天間基地の移設に向けて政府が提出した名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請の審査を進めており、23日に県幹部が上京して、東京都内の病院に検査入院している仲井真知事に、承認する場合と承認しない場合の双方を想定して作成した審査結果を報告することにしています。

これを受けて仲井真知事は、審査結果に加え、先に要望した普天間基地の5年以内の運用停止や、牧港補給地区の7年以内の全面返還など、基地負担の軽減を巡る政府側の対応も見極めたうえで、今週中に申請を承認するかどうかを判断する考えです。

(NHKニュース 「普天間移設問題 今週1つのヤマ場に」より 2013/12/23 04:09)

普天間基地移設問題の発端は1995年にさかのぼる。参議院調査室作成資料「普天間飛行場移設問題の経緯と最近の動向 」によると、1995年9月に発生した米兵による「少女暴行事件」を契機に、日米地位協定の見直しや基地の整理縮小を要求する声が高まった。さらに、2004年には、普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学構内に海兵隊所属のヘリが墜落し、同飛行場の危険性の問題が顕在化。早期移設・返還の必要性が再認識された。

そして、2006年、日米両政府は「再編実施のための日米のロードマップ」を発表。移設先の名護市辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾に代替施設を2014年までの完成させることを目標とした。

2009年7月、自民党から民主党へ政権交代した衆院選で、鳩山元首相が「最低でも県外」と主張していたことで、普天間基地の辺野古への移設は一旦白紙となる。これをきっかけに普天間基地移設問題は沖縄県外でも注目されることになった。

しかし、2010年5月4日、当時の鳩山首相は仲井真知事と会談し、移転先は名護市辺野古付近にお願いせざるを得ない旨を伝えた。その後会見で「学べば学ぶにつけて海兵隊の役割を考えた時にそれがすべて連携していると、そのなかで抑止力が維持できる」と述べ、基地の県外移設は1年も経たないうちに頓挫した。その後、同年5月28日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、「キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する」ことで合意した。

2013年12月14日〜15日にかけて、朝日新聞社が沖縄タイムス社、琉球朝日放送と共同で、沖縄県内有権者を対象に行った世論調査では、「辺野古埋め立て申請を知事は承認すべきか」という問いかけに64%が反対しているが、辺野古埋め立て申請を承認するか否か、仲井真知事の最終判断時期が迫っている。

琉球新報によると、12月17日に官邸で開かれた沖縄政策協議会では、安倍晋三首相と全閣僚が出席、仲井真知事は主に次のような基地負担軽減を要求した。

  • 日米地位協定の改定
  • 米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止
  • 牧港補給地区の7年以内の全面返還
  • 普天間に配備されている輸送機オスプレイの県外配備、過半の訓練の県外移転

安倍首相は「最大限実現するよう努力したい」と表明した。知事が5年以内と期限を区切って普天間の運用停止を求めるのは初めて。普天間の県外移設は今回求めなかった。

(琉球新報「普天間飛行場、運用停止5年内に 知事が初要求」より 2013/12/18)

これまで、仲井真知事が繰り返し求めてきた普天間の県外移設。今回の要望に含まれなかったことは何か意味があるのだろうか。朝日新聞デジタルは自民党の県議に取材した内容を以下のように報じている。

ある自民県議によると、約1カ月前、知事に辺野古移設の必要性を説いた際、知事は「埋め立てを承認するにしても無条件ではダメだ」と話したという。「今回の要望がその『条件』なのでは」

朝日新聞デジタル『辺野古埋め立て判断控え、牽制 仲井真・沖縄知事「普天間5年以内停止を」』より 2013/12/18 05:00)

しかし、仲井真知事の要望をすべて実現するのは容易なことでは無さそうだ。アメリカ国務省のハーフ副報道官は日米地位協定について「改定の交渉に合意したことはないし、今後も検討することはない」と否定したという。朝日新聞デジタルが報じた。

日米両政府はこれまで、地位協定そのものは改定せず、日米の関係省庁による合同委員会を開いて運用を見直す対応にとどめてきた。ハーフ氏は「私たちは常に、諸課題に関する懸念を共有しようとしており、これは既存の枠組みの中で対処するのが最善だ」と述べ、今後も同じ対応をすることが望ましいとの考えを示した。

(朝日新聞デジタル『地位協定の改定、米国務省が否定 「今後検討もない」』より 2013/12/18 12:42)

また、米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止も、実現には高いハードルがある。47NEWSによると、工事期間を埋め立ての許可から計9年と見込んでおり、小野寺五典防衛相は短縮検討を表明したが、防衛省筋は短縮が実現しても「わずかな月数かもしれない」と漏らしていたという。

菅義偉官房長官は17日の会見で、「真摯に受け止め、最大限努力していく」と述べ、日米地位協定の改定も含めて、基地負担の軽減に全力を上げる考えを示した。22日には、NHKの番組に出演した岸田文雄外務相は「あらゆる可能性を検討しなければならない」と述べ、沖縄側の要望にできるかぎり応えられるよう検討する考えを示したという。

沖縄県の仲井真知事が、日本に駐留するアメリカ軍関係者の地位などを定めた「日米地位協定」の改定や、普天間基地の5年以内の運用停止などを求めていることについて、「具体的な結果が出るよう、しっかり取り組んでいきたい。沖縄の要請を受け止める以上、あらゆる可能性を検討しなければならない」と述べ、沖縄側の要望にできるかぎり応えられるよう検討する考えを示しました。

(NHKニュース「沖縄の負担軽減 あらゆる可能性検討を」より 2013/12/22 11:23)

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