デフレ脱却、一番のポイントは? 西村康稔・内閣府副大臣に聞く

西村康稔内閣府副大臣は27日、ロイターのインタビューで、来春の消費税引き上げに伴う景気下振れ懸念に関して、日銀は状況に応じて適切に対応してくれると思うと述べた。安倍晋三首相と日銀の黒田東彦総裁の定期協議は、消費増税にしっかり備えることが狙いだとの認識を示したうえで、政府・日銀間で経済・物価動向や賃上げ動向の認識を共有し、機動的な対応に万全を期す考えを強調した。
時事通信社

西村康稔内閣府副大臣は27日、ロイターのインタビューで、来春の消費税引き上げに伴う景気下振れ懸念に関して、日銀は状況に応じて適切に対応してくれると思うと述べた。

安倍晋三首相と日銀の黒田東彦総裁の定期協議は、消費増税にしっかり備えることが狙いだとの認識を示したうえで、政府・日銀間で経済・物価動向や賃上げ動向の認識を共有し、機動的な対応に万全を期す考えを強調した。

消費増税を控え、来年前半の一番のポイントは「賃上げがどこまで実現できるかだ」と指摘。一時1ドル105円まで進んだ為替の影響についても、全体として「円安はマクロ的には日本経済にプラス」とし、輸入物価上昇を通じたマイナスの影響があることには、企業収益が賃上げの形で家計に還元されることが大きな課題だとした。

インタビューの詳細は以下の通り。

──景気の現状認識と来年の展望

「全ての経済指標で上向いてきている。特に物価水準は2カ月続きコアコアCPIもゼロを上回り、底堅く推移している。順調にデフレ脱却に向けて進んでいくことを期待している」

「ポイントは給与・賃金。円安も進んできているので、輸入物価が上がることで家計にはエネルギーなどのコストが上がる。来年4月からは消費税も上がる。確実にそれに(物価上昇に)匹敵するくらい賃金が上がってこなければ、今堅調に伸びている消費の伸びが止まる可能性がある。来年前半の一番のポイントは、賃上げがどこまで実現できるかにかかっている」

──賃上げは実現するか

「われわれのできることは、第3の矢について、しっかり方向性を打ち出し実行していくことだ」

「賃上げと成長戦略を軸に、消費増税を乗り越えていく。海外情勢も2月にはまた米国で財政問題が起こると思う。欧州も若干物価上昇の度合いが鈍化してきている懸念がある。海外経済が順調にいって、何とか消費増税を乗り越えて成長軌道に乗せていければと思っている」

「株価は、振り返ってみれば6カ月程度の先行指標になっている。今の時期でこれだけ順調に推移してくれれば(27日日経平均終値:1万6178円)、6カ月後も大丈夫との見方をしている人が多いということだ。そうなるように経済運営をしっかりやっていく」

──首相が、日銀総裁と定期協議の場を持つと言及。諮問会議で四半期ごとに金融集中会議を行っている。加えて定期協議を行う狙いは。

「一番は消費増税に対してしっかり備えようということ。金融集中会合は3カ月に一回やっていく。ここでは、賃金上昇についてもチェックしたい。(集中会合が行われる)4月、7月で、金融・物価状況、賃金上昇、ベアがどうなったか、7月は夏のボーナスがどうなったかの検討と合わせてやりたい」

「諮問会議でも分析しながら必要な対策を提案してもらおうと思っている。消費増税は反対論もあるなかで決断した。非常に心配な面もある。総理はより機動的に、そのあたりのところを日銀と共有し、共通の認識をもって、日銀には日銀がやるべきことをやってもらおうとの認識だと思う」

──市場では、4月以降の景気の落ち込み度合によっては追加緩和期待が根強くある。

「黒田日銀総裁は非常に強い意志をもって、日銀全体を率いて、今年の4月も大胆な金融緩和を行ってくれた。その強い意志を、われわれはいろいろな機会に確認してきている」

「諮問会議の場でも、政府の見通しや政府の取り組みに対して、政府・日銀間で共有しているとのことだった。消費増税に対する懸念、われわれも一部落ち込むことを乗り越えての経済対策をやっているが、そこの心配があるので、状況をみながら、日銀は日銀で、状況に応じて適切に対応してくれると思っている」

──為替は1ドル105円台に突入した。これ以上の円安になると輸入物価の上昇など負の側面も大きくなる。

「全体として、民主党政権時代の行き過ぎた円高が是正されてきたことは歓迎する。マクロでいえば、円安は日本経済にとってプラス。ただ、一方で、輸入物価の上昇を通じて、家計や中小企業にはコストアップというマイナスの影響が出ている。家計で言えば、企業収益が賃金上げの形で還元されることが、来年前半の大きな課題だ」

「政労使の場でも確認したが、中小企業の転嫁、原材料費の上昇を販売価格に転嫁できるようにしっかり大企業側に要請し一定の合意に達している」

「こうしたことを踏まえていけば、全体として円安はプラスに働く。デフレ脱却には輸入物価上昇を通じてプラスに働く。全体としてはプラスになる。さらに、米国の金融緩和縮小が、リスクオフで急激な円高になることも心配したが、金利急上昇にもつながっていないし、結果的にスムーズな形で市場に受け止められていることを、好意的に受け止めたい」

──過度な円安に対する懸念はいまのところないということか。

「為替のレベルについてはコメントしない。仮に今の水準、あるいは円安に進んだとしても、中小企業では価格転嫁できるように対策を打たなければならないと思うし、家計について言えば、コスト上昇への心配はあるが、賃金上昇がしっかりしてくれば、日本経済全体としてはプラスだ」

──デフレ脱却宣言は見送られた。脱却の要件は。

「デフレ脱却というためには、賃金が上がっていくかが大きなポイントだ。合わせて消費増税をどう乗り越えていけるかということ。合わせて、成長戦略が具体化し、海外からも評価され、株価も堅調に推移していくということ。企業業績が上がれば、需要も出てくる。需給ギャップも今の8兆円からさらに縮小に向かっていくことなどを総合的に評価することになる」

──脱却判断はかなり慎重になる。

「消費増税があるので、まだまだ慎重に判断しなければならない」

──来年前半に脱却宣言は可能か。

「なかなかそんな簡単ではない」

──成長戦略は6月にまとめる。

「人口減に対する対応では、高度人材を拡充する法律を通常国会に提出する。多くの技能をもった人に海外からきてもらいたい」

「外国企業の対日投資も倍増の方向性を出しているので、具体化に向け外国人経営者の意見も聞くことを考えている。海外キャンペーンも検討。取り組みを加速させ、年前半には、国家戦略特区の指定も2月、3月で行うことになる。グローバル化に向けてさらなる取り組みを年前半の一つの成長戦略の柱として考えていきたい」

──特区の具体化では、法人税のゼロ特区は検討課題になるか。

「法人税全体の引き下げの話と特区で法人税を下げる、この両方は6月の成長戦略に向けて議論していきたい。欧州では、課税ベースを拡大することなどで法人税を下げても税収は増えている。欧州の事例を分析し、成長戦略に盛り込み、税調で議論してもらえるように、われわれとしては是非方向性を出したいと思っている」

[東京 27日 ロイター]

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