日本酒は佐賀県産が美味い。濃醇甘口、貫いてます

日本酒どころとしての佐賀県が、脚光を浴びている。時代が佐賀に追いついたというわけだ。
Shigeru Hirao

日本酒どころとしての佐賀県が、脚光を浴びている。

品ぞろえに定評のある首都圏の日本酒店に行っても、「鍋島」を始め「七田」「東一」「東鶴」「天吹」といった佐賀県産の銘柄を見かけることが珍しくなくなってきた。以前に比べれば保冷技術が発達して遠方からの配送も容易になったとはいえ、東京から1000キロ以上離れた土地で造る酒が、福岡だけでなく首都圏でも存在感を示すのは並大抵のことではない。

有明海に面した肥沃で広大な佐賀平野は、吉野ケ里遺跡に象徴されるように、古代から日本有数の米どころとして発展してきた。背後に控える脊振山や太良山系の豊富な伏流水にも恵まれ、江戸時代末期には鍋島藩の政策もあいまって酒造りも盛んになった。

佐賀県の日本酒が一躍その名を高めたのは2011年、世界最大級のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」で、「鍋島・大吟醸」が日本酒部門のチャンピオンに選ばれた。

消費量の減少傾向や蔵元の高齢化、廃業の増加など、日本酒を取り巻く状況が危機的な中で、佐賀県でも1990年代後半から2000年代にかけて、いくつかの蔵元が代替わりし、新しい感覚で若い世代のニーズを抑えた酒造りや販売戦略を進めてきた。その成果が実りつつある。

佐賀県も国内で初めて、日本酒で乾杯を推進する条例を2013年に制定するなど、後押しに一役買っている。

鍋島(富久千代酒造)

佐賀の日本酒 写真集(「佐賀酒ものがたり」より)

県内の代表的な23の酒蔵を巡って紹介した「佐賀酒ものがたり」(西日本新聞社刊)を2014年初頭に出版する佐賀市の平尾茂さんによれば、佐賀県の日本酒の特徴は「濃醇甘口」な酒が多いことだ。

外海の玄界灘、内海の有明海といった性質の違う2つの海に挟まれ、白身魚も赤身魚も質の高いものが豊富に手に入る。一方、食肉生産も盛んで「佐賀牛」「みつせ鶏」などのブランドもある。こうした豊かな食文化が、刺し身に合う淡麗辛口な味だけでなく、肉料理や野菜にも負けない濃醇な味わいを育んできた。2013年度の国税庁の調査によれば、都道府県別の甘辛度・濃淡度を分布図にしたグラフで、佐賀県は最も右上、つまり濃醇甘口に寄っている。

また、1980年代からの東北・新潟の日本酒に代表される「淡麗辛口」ブームにも、「このトレンドに乗ろうとしなかったのか、乗れなかったのかわかりませんが、酒質がぶれることなく濃醇甘口を変えなかったのです」(「佐賀酒ものがたり」)。

酒造場の衛生環境も向上し、微生物が減って酸が出なくなったことも、全国的に酒の甘口化を後押ししているという。「日本酒の酒質が安定してきた1976年から最近までの日本酒鑑評会に出品された吟醸酒は、明らかに濃醇甘口になってきています」(同)。時代が佐賀に追いついたというわけだ。

2014年の初め、そんなぶれない日本酒を片手に、新たな年への決意を新たにするのも、いいかもしれない。

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